Avid Media Composer|Software最新バージョン・その3:4K映像のモニタリング


 前回のレビューでは、4K収録したメディアをDNxHRコーデックにトランスコードすれば、意外なほど軽快に4K編集が行えることを紹介した。

 ところで、Avidのメディア共有ストレージ 「ISIS」は、このDNxHRコーデックメディアにも対応している。

 いまや放送局やポスプロの編集環境にとって、共有ストレージは欠かすことのできないインフラだ。Avidにしてみれば、ISISのDNxHR対応は最優先の実現事項だったことは想像に難くない。今回はISISのDNxHRコーデックの対応状況の紹介から始めよう。

ISISのDNxHRコーデック対応

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 DNxHR対応のISISのソフトウェアバージョンは、v4.7.4だ。ISISから、DNxHRコーデックのメディアを流す場合、ISISとクライアントマシーン間は10ギガビットEthernetで接続する。

 さて、UHD(3840×2160)59.94pのDNxHR HQのメディアを流す場合、1ストリーム当たり約1700Mbpsの通信量が必要だ。資料によると、ISIS v4.7.4では、フルクォリティのメディアなら1ストリーム、ドラフトクォリティなら2ストリームまで流すことができる(オフライン画質のDNxHR LBフォーマットは最高4ストリーム)。

 ちなみに、現在のISIS 1筐体の平均的な通信量の上限は約300Mbpsなので、現状ISISでDNxHRメディアをDNxHD並みに流すことは、正直なところかなり高いハードルだ。だが、このハードルは単なるマシーンスペックの問題だ。本格的な4K時代が到来する前に解決されているだろう。

 またいうまでもなく、ネットワークを流れるデータ量は、小さければ小さいほうが良い。

 たとえば、XAVCフォーマットのUHD 59.94pの通信容量は、1ストリームあたりわずか600Mbpsしかない。このXAVCのような高圧縮メディアなら、ISISの配信に負荷をかげずマルチストリーム配信が行える。Media Composer(以下、MC)のXAVCネイティブ対応は、ISISによるメディア共有の面からも期待したい。

4K映像のモニタリング

 フィニッシングスタジオのような4K映像の編集環境を構築する場合、やはり4K映像のモニタリングは外すことができない。

 Avidの「Avid open I/O」規格は、規格に準拠するサードパーティー製ビデオカードを外部モニタープレビュー用ハードウェアとして使えるようにする。

 筆者のMCマシーンにも、数年前に購入したBlackmagic DesignのIntensity Proなるビデオカードがインストールされている。もともとこのカードは、Adobe Premiere Pro用に購入したものだが、Avid open I/O規格の発表以来、MCのプレビュー用として使い続けている。HDMIで接続した家庭用テレビにMCのフルHD映像が表示されたとき、たかだか1万円のカードでこんなことができるなんて…と、古いAvidユーザーである筆者は大変感動した。

 話が横道にそれてしまったが、MCの4Kモニタリングは、現在、このAvid open I/Oに対応するサードパーティー製カードで構築できる。

 4Kコンテンツの規格を考慮すると、モニタリングに求められる機能は、少なくとも、テレビ放送用編集システムならUHD(3820×2160)/59.94p、映画用編集システムならDCI(4096×2160)/60pの映像を視聴できるようにしたい。

 現時点(2015年2月末)において、4K/60p映像のモニタリングが可能なカードは下記のとおりだ(写真1〜5)
KONA4(AJA)
Io 4K(AJA)
DeckLink 4K Extreme 12G(Blackmagic Design)
UltraStudio 4K(Blackmagic Design)
Epoch|4K Neutron Turbo(BlueFish444)

KONA4。AJAのKONA4は、I/FがPCIe2.0のビデオカード。SDからHD、2K、4Kのすべての解像度でフル10ビット4:2:2 / 4:4:4で処理、フレームレートは60pまでをサポートする。4Kインターフェースは、Quad 3G SDI(UHD4:4:4/60p、DCI4:2:2/60p)、HDMI2.0b(UHD4:2:0/60p)を備える。KONAシリーズには、4K画像に対応するKONA3Gカードもあるが、こちらはフレームレート25pまでだ

写真1 KONA4。AJAのKONA4は、I/FがPCIe2.0のビデオカード。SDからHD、2K、4Kのすべての解像度でフル10ビット4:2:2 / 4:4:4で処理、フレームレートは60pまでをサポートする。4Kインターフェースは、Quad 3G SDI(UHD4:4:4/60p、DCI4:2:2/60p)、HDMI2.0b(UHD4:2:0/60p)を備える。KONAシリーズには、4K画像に対応するKONA3Gカードもあるが、こちらはフレームレート25pまでだ

lo 4K。KONA4と同じくAJAが発売するlo 4Kは、I/FがThunderbolt2のブレークアウトボックス(BOB)。こちらも4K映像は60pまでをサポートする。4Kインターフェースは、Quad 3G SDI(UHD4:4:4/60p)、HDMI2.0b (UHD4:2:0/60p)を備える

写真2 lo 4K。KONA4と同じくAJAが発売するlo 4Kは、I/FがThunderbolt2のブレークアウトボックス(BOB)。こちらも4K映像は60pまでをサポートする。4Kインターフェースは、Quad 3G SDI(UHD4:4:4/60p)、HDMI2.0b (UHD4:2:0/60p)を備える

DeckLink 4K Extreme 12G。このBlackmagic Designのカードは、I/FがPCIe2.0のビデオカード。DCI 4Kを2系統、フレームレート60pをサポートする。4Kインターフェースは、1本の12G-SDIケーブルで、4K(YUV4:2:2/60p、 RGB 4:4:4/60p)、HDMIは1.4b(YUV4:2:0/30p)だ。同シリーズのDeckLink 4K Extremeは4Kのフレームレートは29.97fpsにまで対応する

写真3 DeckLink 4K Extreme 12G。このBlackmagic Designのカードは、I/FがPCIe2.0のビデオカード。DCI 4Kを2系統、フレームレート60pをサポートする。4Kインターフェースは、1本の12G-SDIケーブルで、4K(YUV4:2:2/60p、 RGB 4:4:4/60p)、HDMIは1.4b(YUV4:2:0/30p)だ。同シリーズのDeckLink 4K Extremeは4Kのフレームレートは29.97fpsにまで対応する

UltraStudio 4K。Blackmagic DesignのUltraStudio 4Kは、I/FがThunderboltのBOB。10ビット処理、UHD、DCIそれぞれ60pをサポートする。4Kインターフェースは、Dual 6G SDI(4:2:2/60p、4:4:4/60p)、HDMI1.4b(YUV4:2:0/24p)だ

写真4 UltraStudio 4K。Blackmagic DesignのUltraStudio 4Kは、I/FがThunderboltのBOB。10ビット処理、UHD、DCIそれぞれ60pをサポートする。4Kインターフェースは、Dual 6G SDI(4:2:2/60p、4:4:4/60p)、HDMI1.4b(YUV4:2:0/24p)だ

写真5 Epoch|4K Neutron Turbo。BlueFish444のEpoch|4K Neutron Turboは、I/FがPCIe2.0のビデオカード。12ビット、UHD/DCI 4K、フレームレート60pをサポートする。4Kインターフェースは、Quad SDI SDI(YUVA4:2:2:4/60p、RGBA4:4:4:4/60p)、HDMI 1.4aだ

写真5 Epoch|4K Neutron Turbo。BlueFish444のEpoch|4K Neutron Turboは、I/FがPCIe2.0のビデオカード。12ビット、UHD/DCI 4K、フレームレート60pをサポートする。4Kインターフェースは、Quad SDI SDI(YUVA4:2:2:4/60p、RGBA4:4:4:4/60p)、HDMI 1.4aだ

 4K映像はカラースペースが拡張されており、編集作業において、より一層カラーコレクションが重要なポジションを占めるようになる。したがって、オンラインフィニッシング編集では、画像解像度・フレームレートに加え、カラーの再現性についても考慮しなくてはならない。モニターは注意深くチョイスする必要がある。

 また、これは筆者の希望だが、たとえばSDIのI/O、RS-422などのVTRコントロール、VideoSync、AudioI/Oなどは潔く省き、代わりにDisplayPortとHDMI(AudioはUSB I/F)の「ノンリニア編集の4Kモニタリング」という用途に特化したビデオカードが欲しいとも思う。

 ところで、HDMIを使うと、4Kモニタリング環境がケーブル1本で実現できる。これは、スタンドアローンタイプのMCマシーンに4Kモニタリング機能を追加する最も手軽な手段だ。ただし、HDMIモニターで60p再生を実現するには、HDMI規格は2.0以上でなくてはならない。

貧者の4K映像プレビュー

 上記で紹介した4K対応ビデオカードの価格は20〜100数万円ほど。一昔前のビデオカードに比べれば随分安くなった、とも言えるが、もっと安価に4K映像をプレビューする方法がある。最後に非常に簡易的に4K映像をプレビューする方法をお教えしよう。

 と、威張るほどのことでもないが、必要な機材はUHD(3840×2160)ピクセルサイズが表示可能な4KサイズのPC用ディスプレーモニター1台だけ(写真6)

 このディスプレーモニターをMCマシーンの接続し、MCをフルスクリーンプレーバック表示に切り替える。これだけで、簡易4Kプレビュー環境が完成してしまう。

UHDモニターに表示したMedia Composerのデスクトップ。3840×2160の非常に広大なデスクトップ。表示される文字が小さすぎるのが難点だが、ツールの置き場に困るような狭さはまったく感じられない

写真6 UHDモニターに表示したMedia Composerのデスクトップ。3840×2160の非常に広大なデスクトップ。表示される文字が小さすぎるのが難点だが、ツールの置き場に困るような狭さはまったく感じられない

 MCのフルスクリーンプレーバック機能は、レコードあるいはソースモニターにロードした映像を、ディスプレーの表示サイズにリサイズして表示する。つまり、UHDプロジェクトの映像をUHDサイズのディスプレーに表示すれば、映像はリサイズされず1:1のまま、しかもタイムラインウィンドウにある “表示クォリティ選択” をフルクォリティに切り替えれば、フルスクリーン映像がオリジナル画質のまま表示できる、という理屈だ。

 まるで夢のような話だが、この簡易4Kプレビューにはいくつか制限がある。

 まず、MCは表示ディスプレーがUHDディスプレー1枚、すなわちシングルディスプレー型でなくてはならない。デュアルディスプレー型では、MC起動時に表示トラブルが発生する可能性がある。

 つぎに、現在のPCディスプレーの多くが8ビット表示なので、10ビット表示はあきらめる(10ビット対応のPCディスプレーは非常に高価だ)。

 そして、ディスプレーカードはフルクォリティ再生が行えるほどの高パフォーマンスが必要だ。筆者の環境(HP z820:OS;Windows7/CPU;2.7GHz 2プロセッサー/メモリー;48Gバイト/ディスプレーカード;NVIDIA Quadro K4000)でDELL製のUHDディスプレーを使って4K簡易プレビューを試して見たところ、フルクォリティ再生ではコマ落ちが発生してしまった。実用するならドラフトクォリティ再生だ(写真7〜9)

フルスクリーンプレーバックによる4K簡易プレビュー。DELLの4Kディスプレー(P2815Q:購入価格7万円弱)を使ってUHD画像をフルスクリーンプレーバックしてみた。筆者の環境では残念ながらフルクォリティではコマ落ちが発生してしまったが、デスクトップ編集で1:1フルスクリーンプレビューが行えるのは意味があると思う。なお、残念なことにP2815Qはリフレッシュレートが30Hzに限定されてしまっているので、60p再生もあきらめなくてはならない。PCのディスプレーカードはNVIDIA Quadro K4000だ

写真7 フルスクリーンプレーバックによる4K簡易プレビュー。DELLの4Kディスプレー(P2815Q:購入価格7万円弱)を使ってUHD画像をフルスクリーンプレーバックしてみた。筆者の環境では残念ながらフルクォリティではコマ落ちが発生してしまったが、デスクトップ編集で1:1フルスクリーンプレビューが行えるのは意味があると思う。なお、残念なことにP2815Qはリフレッシュレートが30Hzに限定されてしまっているので、60p再生もあきらめなくてはならない。PCのディスプレーカードはNVIDIA Quadro K4000だ

Media Composerのクォリティを、ドラフトクォリティ(上)からフルクォリティ(下)に切り替えると、フルスクリーン映像の画質は明らかに向上する。ユーザーとしては、再生停止時にフルクォリティ画質、再生時にドラフトクォリティ画質に自動的に変わるようなオプションが欲しい

写真8、9 Media Composerのクォリティを、ドラフトクォリティ(上)からフルクォリティ(下)に切り替えると、フルスクリーン映像の画質は明らかに向上する。ユーザーとしては、再生停止時にフルクォリティ画質、再生時にドラフトクォリティ画質に自動的に変わるようなオプションが欲しい

 極論すれば、先に紹介したビデオカード並みのディスプレーカードなら4K簡易プレビューも実用になる、というところが本音だ。だが割り切って使えばこれもかなり便利な機能だと思う。

 いずれパソコンで4K視聴が当たり前になれば、きっと安価で高機能なグラフィックスカードと4K/10ビットPCディスプレーが発売される、と筆者は(勝手に)期待に胸を躍らせている。

発売:2014年12月22日
価格http://www.avid.com/JP/products/Media-Composer#licensing
・Media Composer|Software サブスクリプション年単位:¥7万300(税別)〜
・Media Composer|Software 永続ライセンス:¥15万2000(税別)〜
・Media Composer|Software フローティングライセンス:販売代理店に問い合わせ

 Media Composer|Softwareの価格は、サブスクリプション(月契約/年契約)、永続ライセンス、フローティングライセンス(大規模施設向け複数パッケージ)の3種類が上記のように設定されている。
 永続ライセンスでは1年間のサポート契約が含まれており、1年間のサポートとソフトウェアアップグレードをが提供される(2年目以降のアップグレードおよびサポートは、別途¥3万(税別)にて購入)。
 サブスクリプションライセンスは、ライセンス有効期間の間、サポートおよびアップグレードが提供される。

URLhttp://www.avid.com/US/products/Media-Composer#features

Media Composer|Software 30日間トライアル ダウンロードURLhttp://apps.avid.com/media-composer-trial/JP/


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