Avid Media Composer|Software最新バージョン・その4 (最終回):最新MCの便利な新機能あれこれ


 これまで3回に渡って、Avid Media Composer|Software(以下、MC)の4K編集機能についてレビューしてきた。連載最後の今回は、MCの4K編集機能について過去の連載で取りこぼした話題と、最新MCの便利な新機能を紹介しようと思う。

MCのタイムコード表示

 4K編集対応になって、MCはさまざまなフレームレートの編集が可能になった。それに伴い、MCのタイムコード表示まわりにいくつか変更が加えられている。

■タイムコード表示フォーマットの選択
 編集フレームレートが60p(59.94p)、48pのように、高フレームレートの編集プロジェクトでは、タイムコードの表示を標準(30fps/24fps)または(60fps/48fps)に切り替えられる。タイムコード表示フォーマットの切り替えは “General” 設定ダイアログで行う(図1)

図1 "General" 設定に付け加えられたTC表示フォーマット切り替え。オーバー30fpsの編集作業では、編集時のタイムコード歩進、タイムコードの表示を、フォーマットタブの編集タイムベース、"General" 設定のTC表示フォーマットで設定することができる。"General" 設定のTC表示フォーマットに "60fps" を選択すれば、1秒間のTCフレーム表示が1〜59表示に切り替わる。30fpsを選択するとTCフレーム表示は1〜29表示となり、60fps時の奇数フレームは、秒とフレームの間にあるセパレータが ".(ピリオド)" に切り替わって表示される。編集タイムベースを59.94fpsに設定すると、ポジションインジケーターは1フレームごと、すべてのフレームで歩進する。29.97fpsに設定すると、ポジションインジケーターは2フレームごとの歩進(奇数フレームには止まらない)となる

図1 ”General” 設定に付け加えられたTC表示フォーマット切り替え

 ”General” 設定のTC表示フォーマットに “60fps” を選択すれば、1秒間のTCフレーム表示が1〜59表示に切り替わる。30fpsを選択するとTCフレーム表示は1〜29表示となり、60fps時の奇数フレームは、秒とフレームの間にあるセパレータが “.(ピリオド)” に切り替わって表示される。

 編集タイムベースを59.94fpsに設定すると、ポジションインジケーターは1フレームごと、すべてのフレームで歩進する。29.97fpsに設定すると、ポジションインジケーターは2フレームごとの歩進(奇数フレームには止まらない)となる。

■エディットタイムベースの切り替え
 4K60pプロジェクトで編集したシーケンスを、HD59.94iシーケンスに変換する場合、フレームのプログレッシブ-インターレース変換によって、編集点に不整合(フレーム内でカットチェンジが発生)が起こる場合がある。

 エディットタイムベース切り替えは、この不整合の発生を防止する機能だ。タイムベースを30fpsベースに設定すると、タイムラインのポジションインジケーターは2フレームごとに歩進し、シーケンスは偶数フレームでしか編集できなくなる。エディットタイムベースの選択は、プロジェクトウィンドウのフォーマットタブから行う(図2)

図2 プロジェクトウィンドウ|フォーマットタブの "Edit Timebase" 設定

図2 プロジェクトウィンドウ|フォーマットタブの “Edit Timebase” 設定

カラースペースのマネジメント

 4K映像ではカラースペースも大きく広がった。たとえば、UHDTVのカラースペースはHDTV時のrec.902から、はるかに広いカラースペースをもつrec.2020によって規定されている(図3)

図3 HDTVのカラースペース(Rec.709)と、4K/UHDTVのカラースペース(Rec.2020)、DCI(DCI-P3)のカラースペース。4K編集では大幅にカラースペースが拡張された。HD、4K編集が混在する編集環境では、常にカラースペースを意識した編集が必要だ。同時に、広大なカラースペース下で忠実にカラーを再現するモニターが重要となるだろう

図3 HDTVのカラースペース(Rec.709)と、4K/UHDTVのカラースペース(Rec.2020)、DCI(DCI-P3)のカラースペース。4K編集では大幅にカラースペースが拡張された。HD、4K編集が混在する編集環境では、常にカラースペースを意識した編集が必要だ。同時に、広大なカラースペース下で忠実にカラーを再現するモニターが重要となるだろう

 高性能な4Kカメラはこの広大な色域の映像を、映像に独自のフィルター処理を行いながらメディアに収録する。そのため撮影映像をもともとのダイナミックレンジをもつオリジナル映像に復元するには、撮影映像に適切なカラー補正を行う必要がある。

 MCにおいては、このカラー補正は、カラーコレクションツールを使ったマニュアル補正のほか、LUT(ルックアップテーブル)によるプリセット補正が用意されている。
 LUTによるカラー補正は、つぎの2つの方法で行える。

■ソースセッティングダイアログによるLUTカラー補正
 1つ目の方法は、ビンウィンドウで補正したいクリップを選択し、コンテクストメニューから、”ソース設定” ダイアログを開いて補正する方法だ(図4)

 ソース設定ダイアログの “Color Encoding” タブの “Color transformations:” リストへ必要なプリセットを追加して補正する。

図4 "Source Setting"によるLUTカラー補正。LUTリストからターゲットのプリセットデータを選択して補正する。独自のLUTデータを読み込んで補正することもできる

図4 ”Source Setting”によるLUTカラー補正。LUTリストからターゲットのプリセットデータを選択して補正する。独自のLUTデータを読み込んで補正することもできる

■エフェクトによるLUTカラー補正
 もう1つの方法は、タイムラインで編集したクリップをエフェクトライクにカラー補正する方法だ。

 補正を行うには、エフェクトパレットの “Image” カテゴリーにある “Color LUT” エフェクトを使用する。このエフェクトをタイムライン上のクリップにドラッグ&ドロップする。

 ”Color LUT” のエフェクト編集モードに入ると、前述のソースセッティングダイアログで表示されるLUTプリセットがリスト表示されるので、リストの中から目的のプリセットを選択して補正する(図5、6)

図5、6 エフェクトパレットから "Color LUT" エフェクト(Imageカテゴリーにある)をタイムラインのクリップにドロップすると、エフェクトエディタのLUTリストからプリセットを選択できるようになる

図5、6 エフェクトパレットから “Color LUT” エフェクト(Imageカテゴリーにある)をタイムラインのクリップにドロップすると、エフェクトエディタのLUTリストからプリセットを選択できるようになる

4KシーケンスのAMAエクスポート

 AMAエクスポートは、MCで編集した4Kシーケンスを、外部にファイルベースで出力する方法だ。[ファイル|AMAエクスポート]コマンドを実行すると、AMAファイルエクスポートダイアログが表れる(図7)

図7 AMAファイルエクスポートダイアログ。シーケンスを選択し、[ファイル|AMAファイルエクスポート]コマンドを実行すると、AMAファイルエクスポートダイアログがオープンする。現在のところ、出力できるフォーマットはDPXとXAVCだ

図7 AMAファイルエクスポートダイアログ。シーケンスを選択し、[ファイル|AMAファイルエクスポート]コマンドを実行すると、AMAファイルエクスポートダイアログがオープンする。現在のところ、出力できるフォーマットはDPXとXAVCだ

 出力に選択可能なファイルフォーマットは、現在のところ、DPX、XAVCが選択できる。ただしXAVCを利用するには、最新のAMAプラグインのインストールが必要だ(ダウンロードは、http://avid.force.com/pkb/articles/en_US/Download/en394827から、ソニーのダウンロードページへ)。

 エクスポート時間は、テストマシーンのz820(Windows7/CPU:2.7GHz 2プロセッサー/メモリー:48Gバイト)で1分のシーケンスが約5分ほどかかった。z840ならさらに短い時間でエクスポートが可能だろう。

編集に便利な新機能

 最後に、最近のMCがもつ便利な新機能をいくつか紹介しよう。

■ソース/レコード切り替えボタン
 ソース/レコードモニターウィンドウをリサイズしてシングルモニターに切り替えると、モニターウィンドウの左上部にソース/レコード切り替えボタンが表れる。このボタンをクリックすると、モニターの表示内容をソース/レコード間でトグルで切り替えることができる(図8)

図8 ソースレコードモニターのソース/レコード切り替えボタン。ソースレコードモニターをリサイズしてシングルモニターに切り替えると、モニターの左上部にソース/レコード切り替えボタンが表示される。このボタンをクリックするとモニター内容がソース〜レコードにトグルで切り替わる

図8 ソースレコードモニターのソース/レコード切り替えボタン。ソースレコードモニターをリサイズしてシングルモニターに切り替えると、モニターの左上部にソース/レコード切り替えボタンが表示される。このボタンをクリックするとモニター内容がソース〜レコードにトグルで切り替わる

 この機能を上手く使えば、デスクトップの狭いラップトップPCで編集する場合、モニターサイズを大きく確保することができる。トグル切り替えボタンはキーボードにもアサインできる。

■”Add Bin to Favorites”〜お気に入りビンの登録
 カラーバーや番組タイトルCG、あるいはよく使うエフェクトなどを保存したビンを「Favorites(お気に入り)」登録しておくと、編集プロジェクトを新規作成したり、他のプロジェクトに切り替えても、登録したビンが自動的にプロジェクトに読み込まれるようになる(図9、10)

図9、10 プロジェクトからビンを選択して、[ビン|Add bin to Favorites]コマンドを実行すると(左図)、以降プロジェクトウィンドウのビンタブに "Favoirte Bin" として常に表示されるようになる(右図)。新規に作成したプロジェクトに対しても同様だ

図9、10 プロジェクトからビンを選択して、[ビン|Add bin to Favorites]コマンドを実行すると(左図)、以降プロジェクトウィンドウのビンタブに “Favoirte Bin” として常に表示されるようになる(右図)。新規に作成したプロジェクトに対しても同様だ

 これは、お気に入り登録したビンの「在処」をユーザー設定に記録し、プロジェクトが開くたびに登録したビンを呼びだしてオープンするという仕組みだ。

 とても便利な機能だが、お気に入り登録したビンを別の場所に移動したり、消去してしまうとビンが開かなくなってしまう。お気に入り登録するビンのプロジェクトは、パブリックドキュメントフォルダなどに作成するとよいだろう。

■フレーム表示時のクリップボーダーのカラー表示
 ビンウィンドウがフレーム表示のとき、クリップ、シーケンス、エフェクトなどのアイコンがボーダーカラーで色分けできるようになった。設定を変更すれば、ボーダーカラーは各クリップに設定したクリップカラーを表示させることもできる(図11)

図11 ビンフレーム表示時のボーダーカラー表示。ビン設定からボーダーカラー表示をオンにすると、シーケンス、クリップ、エフェクトなどをカラーで色分け表示できる。地味だがかなり役に立つ機能だ

図11 ビンフレーム表示時のボーダーカラー表示。ビン設定からボーダーカラー表示をオンにすると、シーケンス、クリップ、エフェクトなどをカラーで色分け表示できる。地味だがかなり役に立つ機能だ

■プロジェクト内の検索あれこれ
・クイックフィルター
 プロジェクトウィンドウとビンウィンドウにクイックフィルターがついた。このフィールドに検索キーワードを入力すると、キーワードにマッチするアイテムがフィルタリング表示される(図12,13)

図12 プロジェクトウィンドウに追加されたクイックフィルター。フィールドに "UHD" と入力するとビン名に "UHD" という文字を含むビンのみが残る

図12 プロジェクトウィンドウに追加されたクイックフィルター。フィールドに “UHD” と入力するとビン名に “UHD” という文字を含むビンのみが残る

図13 ビンウィンドウに追加されたクイックフィルター。フィールドに "001" という文字を入力すると、名前に "001" を含むクリップが残る

図13 ビンウィンドウに追加されたクイックフィルター。フィールドに “001” という文字を入力すると、名前に “001” を含むクリップが残る

・プロジェクト内検索
 これは新機能というわけではないのだが、最近のMCはプロジェクト内の検索機能が統合されている。

 この検索機能では、クリップやシーケンス、タイムライン上のシーケンスに含まれるクリップ名やマーカーのコメント、そしてプロジェクトで付けられた全マーカーのコメントなどが検索できる(図14)

 筆者のように古いMCユーザーにとって、プロジェクト内のシーケンスが検索できるのは待望の機能だ。また全マーカー検索は、オフライン編集などクリップに大量にマーカーをつけた編集で強力なツールとなる。

図14 MCの統合された検索ウィンドウ。数バージョン前のMCから検索機能の統合化が図られている。この検索ウィンドウを使えば、プロジェクト内のシーケンス、マーカーのコメント、シーケンスのコメントなどあらゆるテキスト情報が検索できる

図14 MCの統合された検索ウィンドウ。数バージョン前のMCから検索機能の統合化が図られている。この検索ウィンドウを使えば、プロジェクト内のシーケンス、マーカーのコメント、シーケンスのコメントなどあらゆるテキスト情報が検索できる

■リストツール
 リストツールとは以前のバージョンで別アプリケーションだった、EDLマネージャーと同様のツールだ。今回のバージョンからMC本体に統合された。

 リストツールではEDLマネージャーと同じように、EDLの出力ができるほか、フィルム編集用カットリストやシーケンスのチェンジリストが作成・編集できる(図15)

図15 リストツール。リストツールは[アウトプット|リストツール]コマンドからオープンする。EDLを生成をした後、リスト内容の修正も行える

図15 リストツール。リストツールは[アウトプット|リストツール]コマンドからオープンする。EDLを生成をした後、リスト内容の修正も行える

最後に

 以上、数回にわたり4K編集機能の紹介を中心に最新MCを紹介してきた。レビューしながらMCを使ってみて、4K編集は意外なほどレスポンスが良く、スムーズに編集できることに驚かされた。

 いまや、いろいろなカメラによって撮影された映像フォーマットが混在するようになった。今回MCで編集しながら、さまざまなサイズやフレームレートの映像素材が出力フォーマットに合わせ、リアルタイムに自動変換されることが体感できた。
 フォーマット変換のような面倒な作業でユーザーを悩ませないこと、快適なレスポンスで編集作業が行えることは、やはりいつの時代でも編集アプリケーションに求められる必須の条件だ。

 これからも4Kそして8K編集環境は、ハードウェアの進化に合わせより一層進化していくだろう。今後も高解像度編集の最新情報ををお届けしていきたい。

発売:2014年12月22日
価格http://www.avid.com/JP/products/Media-Composer#licensing
・Media Composer|Software サブスクリプション年単位:¥7万300(税別)〜
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 Media Composer|Softwareの価格は、サブスクリプション(月契約/年契約)、永続ライセンス、フローティングライセンス(大規模施設向け複数パッケージ)の3種類が上記のように設定されている。
 永続ライセンスでは1年間のサポート契約が含まれており、1年間のサポートとソフトウェアアップグレードをが提供される(2年目以降のアップグレードおよびサポートは、別途¥3万(税別)にて購入)。
 サブスクリプションライセンスは、ライセンス有効期間の間、サポートおよびアップグレードが提供される。

URLhttp://www.avid.com/US/products/Media-Composer#features

Media Composer|Software 30日間トライアル ダウンロードURLhttp://apps.avid.com/media-composer-trial/JP/


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