Blackmagic URSA Mini 4K EF & Video Assist〜URSAの魅力を凝縮した次世代カメラとモニター/ビデオレコーダー


 Blackmagic Designは、Pocket Cinema Cameraなどの小型カメラを発売して以降、本格的な制作に適したURSAやURSA Mini、さらにはStudio Cameraも発売し、毎年カメラのラインナップを広げている。
 また、コンバーターのTeranex Miniシリーズを初め、スイッチャーやフィルムスキャナーの分野へも進出して急速に製品の数を増やしており、現在最も勢いのあるメーカーではないだろうか。

 今回は、デジタルフィルムカメラBlackmagic URSA Mini 4Kとモニター/ビデオレコーダーVideo Assistをテストする機会を得られたのでレポートしたい(写真1)

URSA Mini〜コンパクト・軽量の4Kデジタルフィルムカメラ

 URSA Miniには2種類のセンサータイプのモデルがラインナップされている。1つは15ストップのダイナミックレンジを有した4.6Kセンサーモデル、もう1つは12ストップ ダイナミックレンジの4Kセンサーモデルである。いずれのセンサーを選択した場合でもEFまたはPLレンズマウントを選択することができる(写真2)


 4Kセンサーモデルは昨年11月4日、4.6Kセンサーモデルは今年の3月17日に出荷が開始されている。今回試用したのは、4KセンサーのEFマウントモデルのURSA Mini 4K EF(試用時のファームウェアは2.8.1)である。

 URSA Miniは、同社URSAの性能や操作性をそのままに小型化したカメラである(写真3)。URSAと比較してサイズは2/3ほどになっており、質量は半分以下に軽量化している。また、消費電力も大幅にカットされ、非常に扱いやすい設計となった。


 カメラ本体のデザインやサイズ、操作性については、4Kセンサーモデルと4.6Kセンサーモデルに違いはない。

 URSA Miniの外観はボタンが少なく、凹凸があまりないシンプルなデザインなので非常にスマートである。また、取り外し可能なトップグリップはがっちり固定することができるので、全体的に堅牢で安心感を与えるつくりだ。オプションのBlackmagic URSA ViewfinderやShoulder Kitと組み合わせればフィールドを選ばない幅の広い活躍が期待できる。

 しかし、本体側面のディスプレーを開くと、入力オーディオの調整ボリュームがむき出しであったり、メディアスロットにカバーがないなど、細部の気配りに物足りない部分もある(写真4)


 URSA Mini 4Kの収録コーデックは、Cinema DNG RAW、ProRes444、ProRes422 HQ、ProRes422、ProRes422 LT、ProRes422 Proxyとなっており、将来的にはProRes444 XQにも対応する(ProRes444については、2016年3月23日に公開されたファームウェア3.1からサポート開始)。
 収録解像度については、RAW収録の場合4000×2160に固定されるが、ProRes収録の場合は3840×2160もしくは1920×1080から選択できる。

 記録メディアは、CFast2.0カードが採用され、メディアスロットは2基が装備されている。これは、4.6Kセンサーモデルも同様だ。

Video Assist〜フルHDのモニターとレコーダーを一体化

 Video Assistは、画面サイズ5型の高輝度フルHDモニターにレコーダーが搭載されており、SDメモリーカードにProResおよびDNxHDコーデックで映像を収録することができる、モニター一体型のレコーダーだ。

 入力端子にHD SDIおよびHDMIを採用しているので、あらゆるカメラと組み合わせての運用が可能である(写真5)。本体の上下面に合わせて6カ所マウント用にネジ穴が空いているので、使用用途や設置場所に合わせて融通の効いた運用ができるだろう(写真6)


 Video Assistは本体側面には電源スイッチしかないため、本体を動かす際に起こりやすい誤操作を極端に少なくできそうだ。各機能へのアクセスも容易で、カメラ情報の表示、設定の変更、オーディオ/ビデオレベルの確認などの操作も画面のスワイプで行えるようになっている。また、AUTO RECにも対応しているので、RECボタンを押し忘れる心配もない。

 バッテリー取り付けスペースが2つあり、ホットスワップ方式なので予備のバッテリーを常に確保した状態で継続的な撮影が可能である(写真7)

URSA Mini 4kのMENUを覗いてみる

 Blackmagic 製のカメラを使用するのが初めてだったこともあり、URSA Mini 4KのMENU項目の少なさに驚いた。撮影するために必要最低限の項目しかないという印象だ。

 設定が可能な感度(ISO)は200、400、800の3種類しかない。標準感度は400とされている(ちなみにURSA Mini 4.6KはISO1600まで設定可能だ)。色温度は2500から8000までの18段階から選択できる。

 URSA Miniの収録映像の根幹を担う設定にコーデックを「RAW」もしくは「ProRes」から選ぶ選択肢と、ダイナミックレンジを「FILM」もしくは「VIDEO」から選択する項目がある。

 RAWコーデックに設定すると、ダイナミックレンジは「FILM」設定しか選べなくなり、HD -SDI OUTからはLOGのような軟調な映像が出力される。
 また、ProResコーデックだとダイナミックレンジは「FILM」もしくは「VIDEO」から選択することが可能だ。「VIDEO」設定の場合、HD-SDI OUTからはREC709のLUTがあたった状態で出力される。
 さらにHD-SDI出力に関してだが、設定感度によっては映像信号が100%まで使用できずクリップしてしまうようだ。この点はRAW現像の時に回避することは可能なのだが、外部収録する場合は注意が必要だろう。
 また、「FILM」モードではLOG映像のように全体的に色が浅く軟調なので、そのままの状態でのモニタリングはお勧めできない。オンセットグレーディングが必須だろう。

グレーチャート・マクベスチャート撮影

 ここでカメラのスペックを知るためにチャート撮影を行なった。使用したチャートは、センター部分が反射率18%で上下2STOPずつ測定ができる25段のグレーチャートとマクベスチャートだ(写真8)

 ISO400・絞りT5.6をノーマル状態の基準として、絞りを+2STOP開けた映像と−2STOP、−3STOP閉めたRAW収録の素材が、デジタル現像でどこまでノーマル状態まで戻ってくるのか検証した。

 まずは+2STOPチャートから始める。写真8が基準となるチャートで写真9が基準チャートの波形モニターの画像である。そして、写真10写真11が+2STOPの画像と波形モニターの表示だ。
 すでにチャートのハイライト部分が100%まで到達してしまっている。仮にこの映像を外部収録した場合はハイライト部分の情報を失い、後処理でも対応できないケースが多々あるのだが、果たしてRAW収録の素材はデジタル現像でこれらが戻ってくるのだろうか?


 写真10および写真11の映像をデジタル現像で基準チャートに近づけた画像が写真12写真13である。波形モニターではほぼ同じ数値を示しているが、ベクター上では色の分布に若干の誤差が生じてしまった。ノーマルチャート(写真8)の明るい黄色が、+2STOPデジタル現像後(写真12)では異なった色になってしまっている。写真10で100%近辺まで到達してしまった箇所は輝度としては戻ってくるが、色も同じように戻すのはデジタル現像だけでは難しいようだ。

 つぎに−2STOPチャートをノーマルに近づけたのが写真14写真15である。若干の粒子の荒さが出てきて、波形、ベクトル表示にシャープさがなくなってはきたが、充分使用に耐えられるレベルである。

 最後に−3STOPチャートが写真16写真17である。波形、ベクターの分布こそ近いものになったが、シャープさを失くし膨張しており粒子の荒さを物語っている。できることならここまでの補正はしたくないところだ。

日中のロケに出発

 改めて実感したのがカメラの立ち上がりが早い点である。電源ボタンを押して約2秒でカメラが起動した。些細なことかもしれないが、1分1秒を争うような現場では非常にありがたいことである。

 URSA Miniを手にした時点から懸念していた内蔵NDが搭載されていない点は、やはりロケには不向きである。常に外付けフィルターとしてNDが必要なので撮影環境やスタイルによってはマイナス要素となる。

 写真18はURSA Mini 4Kで撮影した4K RAW映像のキャプチャー画像、写真19は同時にVideo Assistで収録した1920×1080 ProRes422 HQの映像のキャプチャー画像である。15型クラスのモニターで比較する分には両者にさほど違いは見受けられない。


 しかし、拡大した画像では明確な違いが見て取れるだろう(写真20、21)。やはり4K映像の高精細には感嘆してしまう。小さな被写体も形が克明に描写できてしまう。4K映像はより大きなモニターで視聴してそのすばらしさを十二分に発揮するのだと思う。


 ピント確認のために、Blackmagic Viewfinder、URSA Mini本体のディスプレー、Video Assistを見比べてみたのだが、正直優劣を見いだせなかった(写真22)。この3種類の中ではViewfinderが若干ピントを捉えやすいかなという程度の印象だ。


 Viewfinderとディスプレーはピーキング機能が搭載されているのだが、被写体のエッジにかかるピーキングレベルを細かく調整することができないため、シビアなピントを確認するのは困難である。また、Video AssistはフルHDの解像度があってもピーキング機能が搭載されていないためピントの判断は非常に難しい。

12STOPのダイナミックレンジ

 今回お借りしたカメラがURSA Mini 4Kだったためダイナミックレンジは12STOPだった。そのため、ハイコントラストな状況下では物足りない結果になってしまった。
 写真23はRAW収録した映像のキャプチャー画像で、カメラ設定はISO400、色温度5000K、絞りはあえてオーバー目の露出をきった。写真24はその映像をデジタル現像+グレーディングで加工した画像である。写真23では空の部分の大部分が白飛びしてしまっているが現像した結果半分以上が戻ってきた。4.6Kセンサーモデルの15STOPのレンジがあればもっと余裕をもって雲を表現できただろう。

ナイター撮影

 URSA Mini 4Kは感度が800までしか上がらない。気になるISO800での粒状性は粒が小さいという印象だ。そのかわり、若干の色付きが確認できた。さらにIRE10%付近の映像が画面の大部分を占めていると映像がちらついている感じがした。

 写真25でのカメラの設定はISO800、色温度4000、絞りT2.8、現像はRec709をあてた。広い画像では分からないだろうが、400%ほど拡大してみると、粒子の色付きが確認できるだろう(写真26)。URSA Mini 4Kはこういった夜の風景の撮影には不向きだと思う。明るいレンズを使用してカメラのポテンシャルをカバーする必要があるだろう。

DaVinci Resolveとの相性の良さ

 Blackmagic Designの代名詞とも言えるDaVinci Resolveが、URSA Miniを購入するとMac/Windows対応のDaVinci Resolve Studioフルバージョンとして同梱されている。このDaVinci Resolveは、URSA Miniの12ビットLog RAWイメージを容易に取り扱うことができる。

 URSA Mini本体にLUTファイルを入れられないため、RAW撮影する場合はオンセットグレーディングが必須だろう。たとえば、富士フイルムのIS-Miniでオンセットグレーディングを行なった場合、DaVinci Resolve用にLUTを書き出しておけば、デジタル現像の際にRAW素材のパラメーターの微調整を行いつつ、LUTを適用させることができる。さらに、カラーグレーディングも行い素材をブラッシュアップした状態で書き出せば、完成形に近い状態でオフライン編集を行えるフローを組むことも可能である(写真27)

課題はあるが可能性を感じるカメラ

 URSA Mini 4Kは、良く言えばシンプルで分かりやすいカメラではあるが、現場であれこれいじくりたいユーザーにとっては物足りない部分もある。
 しかし、URSAから受け継がれた機能の1つに、SDI IN端子になにかしらの映像信号を入力し、PGMボタンを押すことでその映像と現在カメラが捉えている映像をディスプレーで切り替えてモニタリングすることができる。この機能は他のどのカメラにも搭載されていない大変便利な機能である。

 URSA Miniにショルダーキットを装着すれば、15φロッドが扱えてさらに手持ち補助用にグリップも取り付けられる。この装備があればハンディスタイルへスムーズに移行できるので機動力を格段に確保できる(写真28)


 Video Assistは、SDI DIN端子を搭載したことでコンパクト化に繋がっている。HDMI端子を壊れやすいmini(TYPE C)やmicro(TYPE D)にせず標準のTYPE Aを採用している点は非常に好感がもてる(写真29)


 汎用性の高いSDメモリーカードでProResやDNxHDコーデックを収録可能な点は、この手の収録機としては群を抜いてコストパフォーマンスに優れていると言える。
 SDメモリーカードに収録されたクリップの再生の際にサムネイル表示が可能ならば、なお良かったのだが、クリップの呼び出しの早さと操作性の良さで相殺といったところか。

 またモニターとしては、ブライト、コントラスト、クロマの調整が可能であるものの、色温度の調整ができないのは難点である。ピント確認用としてもピーキングの設定がないので、評価は難しい。

 

 今回のレビュー撮影で12G-SDIという規格に初めて触れることになった。URSAから出力されている4K映像をモニタリングするためには12G-SDI入力に対応したモニターが必需品となる。ケーブル1本で4K60p映像がモニタリングできる点は非常に魅力的だが、映画やドラマを主戦場にしている筆者であってもまだまだ異次元の規格だと感じてしまう。

 しかし、URSA Mini 4Kに触れて一歩一歩4K映像制作の環境が整えられてきていると実感した。昨今ではRAWやLOG撮影のハードルもだいぶ低くなってきたと思う。われわれユーザーはより良い作品を生み出すために多岐にわたる選択肢から作品に見合う最適な手法を選んでいる。URSA Miniの登場でまた新たな選択肢が増えてしまった。
 映像表現の幅が広がれば広がるほど我々は頭を悩ますのだが、それはうれしい悩みでもある。

価格
・Blackmagic URSA Mini 4K EF;¥36万5800(税別)
・Blackmagic URSA Viewfinder;¥18万2800(税別)
・Blackmagic URSA Mini Shoulder Kit;¥4万8980(税別)
・URSA VLock Battery Plate;¥1万1980(税別)
・Blackmagic Video Assist;¥5万9980(税別)
発売:Blackmagic URSA Mini 4K EF;2015年11月4日
URLhttps://www.blackmagicdesign.com/jp/


About 佐々木基成

株式会社 アップサイド 撮影技術部 所属

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