爺の遺言〜惚れて使えばアバタもエクボ ・第1回


 ファインダーアイピースを外したところには、ピントグラスがあります(写真22)。デジタルのEVFとは違って、ピントグラスに映る像そのものを見ているので、絞り開放で精密なピント合わせができます。ピントグラス上にはなにも表示は無く、摺りガラスのザラザラが見えるだけです。最後期型のピントグラスには「テレビ安全フレーム」が表示されていますが、ごく少数です(写真23)。

 映画のレフレックスカメラは、フィルム面の像とファインダー像が100%一致していなければなりません。この調整ができていないカメラは、必要な部分が欠けたり、必要でない部分が写りこんでしまいます。 ボディの底部には大小の三脚穴があり、太ネジと細ネジに対応していますが、細ネジは使ったことがありません(写真24)。太ネジの内部にはマイクロスイッチが仕込まれていて、ピストルグリップのピンで押し上げると、カメラをスタートさせることができます(写真25)。

 蓋を取ってボディ内部を見ると、上下に2本の棒が立っています。上に撮影前のフィルムスプールを嵌め、下に巻き取り用の空スプールをはめます(写真26)。中心に5個の丸いパーツが見えますが、フィルムが通過する経路をつくっています(写真27)。その左のツマミを押し下げると、フィルムゲートが開きます。フィルムを露光するゲートが開いている右下に、露光中のフィルムを確実に固定する「レジストレーションピン」(通称レジピン)と、その下にフィルムを送る「掻き落しピン」があります(写真28)。

 バリアブルスピードモーターの場合、毎秒50コマ程度まで回転が上がります。メカニズムは毎秒80コマ程度までは耐えられる余裕のある設計になっています。その他に、フィルムが咬みこんだ時に停止させる「バックルスイッチ」と復帰させるレバー、シャッターレバーがあります(写真29)。フィルムゲートの横には、プリズムが裸で設置されています(写真30)。ここを触らないようにフィルムを装填しなければなりません。

次回 アリフレックス16ST その2へ続く


荒木 泰晴

About 荒木 泰晴

 1948年9月30日生まれ。株式会社バンリ代表取締役を務める映像制作プロデューサー。16mmフィルム トライアル ルーム代表ほか、日本映画テレビ技術協会評議員も務める。東京綜合写真専門学校報道写真科卒。つくば国際科学技術博覧会「EXPO’85」を初め、数多くの博覧会、科学館、展示館などの大型映像を手掛ける。近年では自主制作「オーロラ4K 3D取材」において、カメラ間隔30mでのオーロラ3D撮影実証テストなども行う。

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