爺の遺言〜惚れて使えばアバタもエクボ ・第1回


アリ16STの外観と持ち方

 マットボックスやレンズを装着してバッテリーを繋ぎ、撮影状態にするとこんな具合です(写真4)。横から見ると、なんとなく「カタツムリ」のようなボディで可愛い姿をしています。重さはボディ本体が、3.3kg。フィルムとレンズを足しても5kg未満で、手持ちで振り回せる快適な重さです。エルゴノミクスデザインの典型で、手にしっくりなじみます。

 右手の親指をカメラの出っ張りに引っ掛けると、人差し指と薬指が自然にレンズの蝶型のツマミに触ります(写真5)。ツマミを下へ下げると近距離、上へ上げると無限遠方向にピントが合います。左手で下からボディを支えるように持つと、人差し指が自然にシャッターレバーに触ります。薬指はシャッターレバーを開放して回転を止めるレバーに触るようにできています(写真6)。この複雑な形のボディを薄いアルミ鋳物で成型していますから、開発当時のドイツの技術には脱帽です。カメラを扱う両手と指の位置で、経験者か、そうでないかを、瞬時に見分けることができますから、ご用心。

アリ16STのシステム構成

 ボディをパーツに分けると、ボディ本体、ファンイダーを兼ねた蓋、モーター、ファインダーアイピースが簡単に外れます(写真7)。マットボックス、400フィートマガジン、ピストルグリップ、ショルダーストック、アイピースエクステンション、ゼラチンフィルターホルダーなど、便利なアクセサリーが揃っていて、撮影の状況に応じて使い分けます(写真8)。1つずつ見て行きましょう。

 

ボディ本体

 正面から見ると、回転するターレット上に、レンズマウントが3個付いています(写真9)。1個はステンレスで強化された「バヨネットマウント」(NEW ARRI MOUNT)で、上下に2本の爪の付いたレンズを時計回りにひねって取り付けます。残りの2個は通常のスタンダードマウントのレンズ用で、マウントの上下にあるレバーをつまんで、レンズを真直ぐ差し込みます。もちろん、バヨネットマウントにもスタンダードマウントのレンズを取り付けることができます(写真10)。


荒木 泰晴

About 荒木 泰晴

 1948年9月30日生まれ。株式会社バンリ代表取締役を務める映像制作プロデューサー。16mmフィルム トライアル ルーム代表ほか、日本映画テレビ技術協会評議員も務める。東京綜合写真専門学校報道写真科卒。つくば国際科学技術博覧会「EXPO’85」を初め、数多くの博覧会、科学館、展示館などの大型映像を手掛ける。近年では自主制作「オーロラ4K 3D取材」において、カメラ間隔30mでのオーロラ3D撮影実証テストなども行う。

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