爺の遺言〜惚れて使えばアバタもエクボ ・第2回


 24コマで安定して回したい要求に応えて、24コマ単一スピードの「ガバナーモーター」も製造され「なんとなく24コマ」が出せるようになりました。これもクオーツ制御ではなく、大きなトランジスターが外部に付いています(写真10)。ガバナーモーターは12V駆動できるので、爺は水中ハウジングに入れるアリ16STに装着して使い重宝しました。サードパーティ製の「クオーツ制御モーター」も少数ですが製造されていますが、アリ16STはノイズレスカメラではないので、精密に24コマ制御ができるモーターの必要性を感じたことはありません。

アイピース

 視度調整機構が付いています(写真11)。レンズを取り外し、ミラーをファインダー方向に固定して明るい方向にカメラを向けます。固定リングを緩め、視度調整リングを回して、ピントグラスの摺り面のザラザラがシャープに見えるように調整します。この調整をしないと、すべてのカットがピンボケになります。デジタルでも同じです。もう1つ重要なことは、撮影中のアイピースから目を離すと、アイピースから逆に光が侵入して、フィルムを白くカブラせることです。カメラを停止させるまで決してアイピースから目を離してはいけません。

 また、アイピースの中心から正確に覗かないと、画面の周辺が見えません。これらは欠点ではなく「このような作法を守らないと正確な画面が撮影できない」とカメラが主張しているのです。左目が「効き目」のカメラマンや、ファインダーを覗く位置を自由にするために、アイピースエクステンションが用意されています。

マットボックス

 蛇腹で長さが調整できるフードです。レンズの焦点距離に応じて画面の四隅が暗くならないギリギリの長さで使います(写真12)。蛇腹の利点は内面反射が極端に少ないことで、余計な光をカットする機能に優れています。前面にはレンズの焦点距離別に長方形の開口部があるプレートが取り付く溝があり、各焦点距離の専用プレートも新品カメラの付属品ですが、ドキュメンタリー撮影では、いちいち交換して使う暇が無かったのも事実です(写真13)。

 後部にはフィルタースロットが2ヶ所あります。最後部には58mm径のネジが切ってあり、丸型フィルターが使えます(写真14)。フィルターは画質に影響を与えないゼラチンフィルターを使います(写真15)。雨天などやむを得ない場合の他は、ガラスフィルターは使いませんでした。また、映画の撮影では「ハレーションは切るのが絶対の原則」で、逆光に強いレンズコーティングができたからといって、ハレーションを切らずに使うことはありません。そうして使うことが、レンズの性能を最高に引き出す唯一の方法で、マットボックスやフードは必須のアイテムです。


荒木 泰晴

About 荒木 泰晴

 1948年9月30日生まれ。株式会社バンリ代表取締役を務める映像制作プロデューサー。16mmフィルム トライアル ルーム代表ほか、日本映画テレビ技術協会評議員も務める。東京綜合写真専門学校報道写真科卒。つくば国際科学技術博覧会「EXPO’85」を初め、数多くの博覧会、科学館、展示館などの大型映像を手掛ける。近年では自主制作「オーロラ4K 3D取材」において、カメラ間隔30mでのオーロラ3D撮影実証テストなども行う。

同カテゴリーの最新記事