ファイルベース時代に学ぶ ビデオ技術(基礎編)第4回:タイムコードの概要と使用法 | ビデオ α

ファイルベース時代に学ぶ ビデオ技術(基礎編)第4回:タイムコードの概要と使用法


 本連載では、新しいデジタル放送時代にマッチした映像理論・技術を、業界に仲間入りされた方に向けて発信していきます。

 すでに経験をお持ちで、より深い知識をお求めの方は、兼六館出版株式会社より発刊されている月刊「放送技術」に掲載の、本連載をさらにプロ向けの内容にした「ファイルベース時代に学ぶビデオ技術(プロ編)」をご覧ください。
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タイムコードの必要性

■映像はタイムコードで位置を指定する

 ビデオカメラやビデオレコーダーは、映像と音声を記録することはもちろんですが、業務用の機器ではもう1つ、時間情報の「タイムコード」を記録可能です。民生用でもDVDプレーヤーやYouTube映像など、多くの映像表示システムでは、再生中に時分秒のタイムカウンター表示が行われ、いま見ている映像が頭から何分何秒の位置にあるかがわかります。

 そのため、その場に居合わせない二者間でも、「○○映像の□分△△秒付近に映っている犬が走るシーン」などという具合に、電話やメールなどで映像の位置を特定し合うことができて便利です(図1)

図1 もしもTCがなかったら:TCがないと対象となる映像のカットを正確に特定できないため、何度もやり直しが発生してしまう。映像制作業務では編集は制作会社とは別の会社(ポストプロダクション)が行うことが多いため、こうしたトラブルは責任問題に発展しかねない。また1時間当たり数万円かかるポスプロの編集料金を抑えるために、編集の指示はTCベースのリストで行われる

図1 もしもTCがなかったら:TCがないと対象となる映像のカットを正確に特定できないため、何度もやり直しが発生してしまう。映像制作業務では編集は制作会社とは別の会社(ポストプロダクション)が行うことが多いため、こうしたトラブルは責任問題に発展しかねない。また1時間当たり数万円かかるポスプロの編集料金を抑えるために、編集の指示はTCベースのリストで行われる

 このタイムカウンター機能を、業務でも使えるように進化発展させたものがタイムコード(TC)です。民生用機器のタイムカウンターとの主な違いは、

・0分0秒からスタートするのではなく、開始時刻の設定が可能(プリセット機能)
・1メディアに複数のタイトル(映像)が収録されていても、一貫した時刻を表示できる
・TC値を信号として受け渡せるため、同時に収録している機器間でTCをそろえることが可能(スレーブロック機能)
・フレーム番号まで表示されるため、映像を1コマ単位の精度で扱える

などにあり、撮影後に行う素材の整理や編集作業を効率的に進めるために使われます。

タイムコードの種類

■国内の映像制作ではSMPTEタイムコードを使用する

 映像業界で使われる業務用のタイムコードには、ヨーロッパなど、1秒間に25フレーム表示の50iシステム圏で使われるEBU規格のタイムコードと、日本やアメリカなど、1秒間に30フレーム表示の60iシステム圏で使用されるSMPTE規格のタイムコードがあります。私たちが通常扱うのは、SMPTEタイムコードです。このタイムコードには、秒間24フレームの場合も定義されています。

 また、音声を扱う音楽業界には、サンプリング周波数ベースのワードクロックやMIDIシーケンサーに使用するMIDIタイムコードなどがあり、映像機器と音声機器が混在するMAの現場では、各規格のTCを変換するインターフェースが使用されます。

 時間情報を示すものではありませんが、タイムコードと並んで使用されるものに「ユーザーズビット」(UB)があります。録画中は常に歩進し続けるTCに対して、UBは基本的にユーザーが任意に指定した8桁の動かない数値を記録し続けます。この数値は16進数であるため、0〜9のほかに、A〜Fのアルファベットが使用できます。

 UBの使い方は自由で、「20150420」(2015年4月20日)のように年月日として記録することもできますし、「00000005」(5本目のロール)や「04200B03」(4月20日にBカメラで撮影した3本目の素材)のように、自分たちでルールを決めてメディアの整理に使用することも可能です。また最近のカメラでは、機器に内蔵された時計が刻む実時刻を記録できる機種もあり、複数台の機器で撮影した素材の時刻合わせに活用できます。

テレビ放送に適したDF方式

■アナログ時代の亡霊がHD映像のカウントを遅らせている

 SMPTE TCでは秒以下の位にフレーム数が表示されるため、数値は「01:21:38:12」(1時21分38秒12フレーム)のように8桁となります。慣例的にはこれを「01h 21m 38s 12F」とか「01°21’ 38’’ 12」と表記しますが、フレームの桁は00〜29までを刻み、30になるときに秒の位が1つ歩進してフレーム数は00に戻りますから、同じ2桁でも、ストップウォッチに表示される1/100秒桁の数値とは異なります。

 ところで60iシステム圏のフレームレートは、30Fpsと表記されることが多いものの、正確には29.97Fpsで運用されています。これはアナログのNTSC放送時代に、音声信号と色副搬送波の干渉を避けるために取られた措置が起源で、このNTSC信号とは直接互換性がないHD映像信号に移行した現在でも、素材の互換性の面から「NTSC時間」として引き継がれているのです。

 そのため1フレーム=1/29.97秒(=1.001/30秒)のNTSC時間でカウントすると、映像機器に表示されるTC値と、映像の実尺との間に0.1%ほどの時間差が生じます。わずかな差ではありますが、1時間経つと3.6秒の長さ(TC表示値が実尺時間より小さい)となり、テレビ番組の制作では無視できない値となります。TCの数値を元に1時間の番組をつくると、実際の放送時間では1時間3.6秒必要となり、1時間枠ではエンディングの3.6秒が未放送となってしまいます。

 そこでTC値と実映像時間が一致するカウント方式が必要となり、DF(ドロップフレーム)方式が考案されました。このようにSMPTEタイムコードには、1秒=30フレームとしてカウントするNDF(ノンドロップフレーム)方式と、実尺時間とTC値が一致するように1.001秒=30フレームとしてカウントするDF方式があり、使い分けが必要となります(図2)

図2 DF方式のカウント:ドロップフレーム(DF)方式では、定期的に数値を飛ばしてカウントすることにより、表示されるTC値と実時間のズレが少なくなるように配慮している

図2 DF方式のカウント:ドロップフレーム(DF)方式では、定期的に数値を飛ばしてカウントすることにより、表示されるTC値と実時間のズレが少なくなるように配慮している

DF方式の歩進方法

■カレンダーには「うるう年」、映像業界には「うるう秒」が存在する

 ここではDF方式のカウント方法を解説します。私たちが日常使用している年月日の日付は、「年」は地球が太陽の周囲を1回転する公転を元に歩進し、「日」は地球が1回転する自転によって歩進しますが、公転と自転は同期しているわけではないため、ずれが生じます。そこで4年に一度、うるう年を設けて1年を366日としてカウントすることで、公転開始の位置がずれないよう調整しています。

 DF方式のTCのカウントも、これと同じ考え方を導入します。基本的に、DF方式では60秒に1回、「分」の位が歩進する(=秒の2桁が「00」になる時刻)ごとに、フレーム数の「00」と「01」を省きます。カウントする数値が2フレームぶん飛びますが、撮影した映像が2フレーム消失する(ドロップアウトする)という意味ではありませんので注意してください。

 ただしこれだと数値を省きすぎてしまうため、「00分」「10分」「20分」「30分」「40分」「50分」の10分置きに発生する「分」の歩進時には、「00」フレームと「01」フレームは省かないようにしています。この歩進の仕方を図3にまとめておきます。

 DF方式で運用しているときは、たとえば「00:21:00:00」の位置を探そうとしても、「00:20:59:29」のつぎが「00:21:00:02」と表示されてしまいますが、機器の故障や記録のエラーではありません。もともとそのような数値は存在しないのです。

図3 DF方式のカウント:TCにおけるドロップフレーム(DF)方式のカウントでは、青で示された毎分ごとに「00」「01」フレームを飛ばし、黄色で示された毎10分ごとに「00」「01」フレームを飛ばさずにカウントすることで、実時間の表示に近づけている

図3 DF方式のカウント:TCにおけるドロップフレーム(DF)方式のカウントでは、青で示された毎分ごとに「00」「01」フレームを飛ばし、黄色で示された毎10分ごとに「00」「01」フレームを飛ばさずにカウントすることで、実時間の表示に近づけている

 NDF方式とDF方式の使い分けですが、映像尺に厳密なテレビ番組の制作や納品は、DF方式と決められています。一方DVDなどパッケージメディア制作用のマスター映像には、単純明快なNDFが使われます。テレビ用でも映像尺が1分に満たないCM制作では、納品物も含めて慣例的にNDFが使われています。映像制作に慣れていない方だと、DF方式のTCは扱いにくく感じられるかもしれません。

 しかし1996年に家庭用のDVカメラが登場した際、DV規格ではDF方式のTCを採用することとしたため、その後登場するHDV方式やAVCHD方式のカメラ、Blu-ray DiscやHDDレコーダーなど、民生用機器のフレームカウンターにも知らず知らずのうちにDF方式が浸透しています(図4)

図4 DF方式とNDF方式の切り替え:DF設定の例。業務用ビデオ機器の多くは、TCのDF方式もしくはNDF方式をユーザーが選んで設定できるようになっている。カメラ機材ではメニューで設定でき、編集ソフトでは編集モードで29.97Fpsや23.98Fpsを選択すると、自動的に設定されるものもある

図4 DF方式とNDF方式の切り替え:DF設定の例。業務用ビデオ機器の多くは、TCのDF方式もしくはNDF方式をユーザーが選んで設定できるようになっている。カメラ機材ではメニューで設定でき、編集ソフトでは編集モードで29.97Fpsや23.98Fpsを選択すると、自動的に設定されるものもある

TCの表記方法

■ドロップだからドットが1つ落ちた?

 前々節で、TCの数値は「01h 21m 38s 12F」や「01°21’ 38’’ 12」と表記される旨を書きましたが、これは紙に手書きで書き出す場合の慣例です。SMPTEによると、編集リスト(EDL)のデータ書き出しでは、時分秒の各桁を記号「p」で区切り、秒とフレームの間には、図5に示す「:」「.」「;」「,」の4種類の区切り記号を用い、DF/NDFとフィールドを区別するように規定されています。 

図5 SMPTE規格、NLE編集ソフト、業務用映像機器におけるTCの表示例:SMPTE規格では時-分-秒間は“punctuation mark”で区切り、秒-フレーム間に「.」「:」や「,」「;」を用いてNDF/DFおよびフィールドを区別する。AvidのNLEソフトではフィールド情報には▲マークを用い、桁間は「:」または「;」で区切ってNDF/DFを区別する。VTRなどの機器類では「;」は用いずに「:」か「.」でNDF/DFを区別し、「.」の位置により、リーダーとジェネレーターの動作を識別できるようになっている。またフィールドフラグをもつVITC使用時には、「*」を表示して第2フィールドを識別できるようにしている

図5 SMPTE規格、NLE編集ソフト、業務用映像機器におけるTCの表示例:SMPTE規格では時-分-秒間は“punctuation mark”で区切り、秒-フレーム間に「.」「:」や「,」「;」を用いてNDF/DFおよびフィールドを区別する。AvidのNLEソフトではフィールド情報には▲マークを用い、桁間は「:」または「;」で区切ってNDF/DFを区別する。VTRなどの機器類では「;」は用いずに「:」か「.」でNDF/DFを区別し、「.」の位置により、リーダーとジェネレーターの動作を識別できるようになっている。またフィールドフラグをもつVITC使用時には、「*」を表示して第2フィールドを識別できるようにしている

 一方、編集ソフトのTC表示には、NDFかDFを「:」(コロン)か「;」(セミコロン)で区別するものがあります。図6はAvid Media Composerのモニター画面にTC表示をしたものです。DFのTCを使用しているため、時分秒がセミコロンで区切られていることがわかります。フレームの右側に表示されている三角形の印は、第1フィールドか第2フィールドかを表しています。

図6 AvidのDF表示:Avid Media ComposerのTC表示。タイムラインをDFモードに設定しているため、時分秒フレームの各桁が「;」で区切られて表示されている

図6 AvidのDF表示:Avid Media ComposerのTC表示。タイムラインをDFモードに設定しているため、時分秒フレームの各桁が「;」で区切られて表示されている

 しかし、「;」という表現ができないVTRなどの機器では、図7のように「:」と「.」を使用するものが多いです。またVITCの読み取り時には「*」マークのあるなしでフィールドを表示します。LTCと違い、VITCにはどちらのフィールドかを識別するフラグがあるためです。

図7 VTRのDF表示:VTRの発光液晶パネルに表示されるDFモードのTC数値。EXT(LTC)/REGENモードに設定しているため、TCリーダー、TCジェネレーターの動作モードを示す、分-秒、秒-フレーム間が、DFモードのカウントを示す「.」で区切られている

図7 VTRのDF表示:VTRの発光液晶パネルに表示されるDFモードのTC数値。EXT(LTC)/REGENモードに設定しているため、TCリーダー、TCジェネレーターの動作モードを示す、分-秒、秒-フレーム間が、DFモードのカウントを示す「.」で区切られている

 このようにTCの表示方法は統一されていないため、表示された数値から機器のTC動作の状態を判断できるよう、包括的な知識が必要となります。LTCとVITCの違いについては、放送技術誌2015年6月号(VOL.68 No.6)に詳説しておきます。

画面に表示されるTC値

■正確でゆるくない画面のTCキャラ

 一般的にTC値は図7のように機材の操作パネル部の発光液晶などに表示されますが、そこばかりを見て作業するわけにはいかないため、図8のようにテレビモニターの映像に、一時的に合成して表示できるようにもなっています。この画面に表示されたTC値のことを「キャラクター」とか単に「キャラ」と呼んでいます。

図8 TCのキャラ表示:VTRの3番端子(機器によっては2番もある)から出力される映像に乗っているTCキャラクター。3番端子は通常、モニター接続用に使用するが、この映像を録画してオフライン編集用のキャラ入り映像をつくることも可能。機器のメニューやスイッチでキャラのON/OFFの設定が可能だが、間違いを防ぐためにオンライン用の素材はかならずキャラ乗せ機能がない1番端子を用いてコピーを行うのが常識

図8 TCのキャラ表示:VTRの3番端子(機器によっては2番もある)から出力される映像に乗っているTCキャラクター。3番端子は通常、モニター接続用に使用するが、この映像を録画してオフライン編集用のキャラ入り映像をつくることも可能。機器のメニューやスイッチでキャラのON/OFFの設定が可能だが、間違いを防ぐためにオンライン用の素材はかならずキャラ乗せ機能がない1番端子を用いてコピーを行うのが常識

 オリジナルの撮影素材を再生している場合には、設定により、画面にキャラを乗せるかどうかを選択できます。ところがうっかりキャラの乗った映像を録画(またはダビング)してしまうと、以降そのTCキャラは映像中に「絵」として焼き込まれた状態となり、消すことはできなくなります。

 再生機器で合成表示されているキャラと、映像に焼きこまれたキャラは、モニターを見ているだけでは区別がつきませんから、一体型カメラ以外のレコーダーで記録する場合など、うっかりキャラを焼きこんでしまい、素材が台無しになるという悲劇が起きかねません。録画機の設定を変えて画面からキャラを消せる状態なら、オリジナルの映像にキャラは乗っていませんから安心できます(図9)

図9 録画時のキャラ設定:図下例のように、映像を出す側のキャラ設定がONになっていると、キャラが焼きこまれた映像を録画してしまい、素材としては使えなくなってしまう。再生機器がビデオデッキなら端子を選ぶことで焼きこみミスを防げるが、カメラからSDI入力のレコーダーに記録する場合に間違いが起こりやすい。モニターの表示だけでは区別がつかないので、カメラ側のキャラ載せ機能がOFFになっていることを厳重にチェックする体制が不可欠

図9 録画時のキャラ設定:図下例のように、映像を出す側のキャラ設定がONになっていると、キャラが焼きこまれた映像を録画してしまい、素材としては使えなくなってしまう。再生機器がビデオデッキなら端子を選ぶことで焼きこみミスを防げるが、カメラからSDI入力のレコーダーに記録する場合に間違いが起こりやすい。モニターの表示だけでは区別がつかないので、カメラ側のキャラ載せ機能がOFFになっていることを厳重にチェックする体制が不可欠

TCの動作と設定項目

■レックランは万歩計、フリーランは腕時計

 業務用カメラにはTCに関して、NDF/DFのほかに、図4に見られるように「TC動作」「TCメイク」「TCプリセット」などの設定項目があります。またENGクラスのカメラでは、TCの外部入力も可能になります。TCを効率的に運用するためには、これらの設定も必要となるのです。

 まずTC動作ですが、この項目では録画中のみTC値が歩進するREC RUNモードと、録画を停止してもTC値が歩進し続けるFREE RUNモードを設定します。REC RUNにするとメディア上のTCがほぼ連続するので、通常はREC RUNで使用します。

 つぎにTCメイクですが、PRESETモードとREGEN(リジェネ)モードを選択できます。任意のTC値から記録したいときはPRESETモードを選び、TCプリセットの項目でその値を設定します。テープメディアのころはカメラ用スモールテープ1本の記録時間は40分程度でしたので、TCのHHにロール番号を設定して記録する習慣がありました。

 ファイルベースメディアだと、容易に1時間を越えて記録できるため、この手法でロール番号を残すことは難しく、UBを使うほうがよいでしょう。プリセットモードでは、メディアを変えてもTCは一貫しますから、撮影を始めたらTCプリセットはいじらないという手もあります(図10)

図10 TCの設定と記録状態

図10 TCの設定と記録状態

TC記録時の約束事

■TC値も給料も、上がる一方が喜ばしい

 TCを記録する際は、編集システムや送出システムに支障が出ないよう、いくつかのルールがあります。

 1つ目は、同一メディア内にDFのTCとNDFのTCを混在させてはならないというものです。人の目には、たかが1、2フレームぶん数値が抜けるかどうかの違いにしか見えませんが、TCデータ内には両者を区別するフラグもあり、機械の目にはまったく別物に映ります。そのため多くのシステムがDF/NDFの混在を認めておらず、無理に混在記録して使用すると思わぬエラーを生じてしまいます。もしも撮影途中でDF/NDFの設定を誤っていることに気づいたら、設定を正すと同時にメディアも交換し、混在を避けて録画します。

 2つ目は、同一メディア内には、同一TC値を2カ所以上記録してはならないというものです。たとえば00:00:00:00から撮影をスタートし、何カットか撮影して1日目の撮影を00:06:05:00で終了したとします。その後2日目の撮影を同一メディアで行うときに、TC値をまた00:00:00:00から始めてしまうと、00:00:23:00などのTC値が1日目の素材と2日目の素材で2カ所存在することになり、編集時にこれをIN点として設定すると、コントローラーが迷ってしまいます。ですので、同一メディア内でのTC値は常に歩進することとなっているのです。

 ちなみに数値はかならずしも連続している必要はなく、00s12F〜13s21F、15s00F〜28s04F、32s15F〜41s03Fなどと大きい数値にジャンプして記録することはOKです。一方、00s12F〜13s21F、13s00F〜28s04Fのように逆戻りで小さい数値にジャンプすると、13s00F〜13s21FがダブってしまいますのでNGです。

 3つ目は、TC値はかならず時間が経つほど大きな値になるように記録します。たとえば1つのメディアにロングカット1を00:30:00:00〜00:46:20:00、ロングカット2を00:00:00:00〜00:26:15:00と記録すれば、TC値のダブりはありません。しかし編集時にロングカット2内で停止している状態で、キーの打ち込みにより00:32:03:00をIN点として指定すると、コントローラはカット2の後ろにこのTC値があると判断し、早送りして探しますが見つからず、エラーとなってしまいます。ですので、TC値が小さいものに逆行することはNGとなります。

 ただし23:59:30:00などから記録を始めると、すぐに23:59:59:29を超えて、録画停止時のTCは00:00:20:00などとHHの値が0時となり、小さくなってしまいます。その点をSMPTEでは、00°は23°に連続するTCとみなすよう定義しています。しかしながらこれを極解すると、00:00:00:00は00:30:00:00よりも一巡した大きな値、という屁理屈が成り立ってしまうことになりますので、現場的には23:59:59:29を超えて記録することは避けるべきでしょう。

TC運用時の注意点

■1フレ下がって次カットのIN点を踏まず、の心得

 TCの仕組みと性質について解説してきましたが、取りこぼした事項のうち、知識として有用と思われるものを2点紹介します。

 まず、編集時に指定するOUT点の実効値は、指定された値よりも1フレーム前の値になる、という法則があります。

 たとえばIN点を01:20:10:00、OUT点を01:20:15:00と指定すると、実際の編集では01:20:10:00から01:20:14:29までの映像が使われ、01:20:15:00の位置につぎのカットのIN点がきます。この仕様はリニア編集時にいちいちレコーダー側のIN点を打ち込まなくてもよいよう、前のカットのOUT点がつぎのカットのIN点に自動的に置き換わる仕様として定着したものです。映像制作に不慣れな人にとっては違和感があるかもしれません。ノンリニア編集システムでは、この仕様を採用していないものがありますから、オフライン編集のEDLを持ち込む場合などは注意が必要です。

 つぎに、DF方式のTCでは、同じデュレーション値のカットでも、切り出す位置が違うと、長さが少し異なるという事実があります。

 たとえばカット1(10:09:10:00〜10:10:40:00)とカット2(10:10:10:00〜10:12:40:00)を比較してみます。両者の関係はちょうど分の位が1分ぶんずれているだけですので、90秒の同じ長さのカットと考えるのが自然でしょう。ところが実際にフレーム数をカウントすると、カット1のほうが2フレーム長いことがわかります。

 これはDF方式のTCでは、カット1に含まれる10:10:00:00の位置で00F、01Fが存在する一方で、カット2では10:11:00:00、01という値が存在しないことによります。DF方式はうるう秒を設けて実時間との差をなくす方式ではありますが、フレーム精度で見ると、このような偏差が存在することに注意します。

 この偏差によるものかどうかはわかりませんが、ドラマやアニメ番組のオープニング映像が終わって提供クレジットに切り替わる部分で、図11のような二重写しが一瞬現れるものを時々見かけます。番組によっては本編の開始前にCMを挟むフォーマットがありますが、このような場合は完パケ上の本編のスタートがHH;00;00;00であるのに対して、送出システム上の開始TCがHH;01;00;02などとなるために、2フレームのズレを生じます。その点を考慮せずに提供クレジットのIN点を秒単位(フレーム値を00)で指定してしまうと、オープニングが2フレーム残って食い込み、二重表示となってしまいます(図12)

図11 二重スーパーの画面:この画面は架空のものだが、実際の番組で製作クレジットがまだ残っているのに、提供クレジットが一瞬ダブって表示されてしまうことがある。ほとんどの場合、被っているのは2フレームとなる

図11 二重スーパーの画面:この画面は架空のものだが、実際の番組で製作クレジットがまだ残っているのに、提供クレジットが一瞬ダブって表示されてしまうことがある。ほとんどの場合、被っているのは2フレームとなる

図12 二重スーパーの原因:製作クレジットと提供クレジットが二重表示になる原因として、DF方式のカウントによる偏差が考えられる。たとえば21時ジャストから60秒のCMがあり、直後に90秒のオープニング映像が表示され、10秒間の提供クレジット表示、本編ストーリーへと続く放送用映像を想定する。10H SHOWの完パケなら、冒頭のCMは除いて作成され、オープニング映像は10時ジャストにスタートし提供クレジットベースまでが2698フレームとなる。一方、放送ではCMを挟み、21時01分02Fからオープニング映像がスタートするため、21時02分30秒の自動スーパーインまでは2696フレームとなり、提供スーパーが2フレームぶん、オープニング映像に食い込んでしまうことになる

図12 二重スーパーの原因:製作クレジットと提供クレジットが二重表示になる原因として、DF方式のカウントによる偏差が考えられる。たとえば21時ジャストから60秒のCMがあり、直後に90秒のオープニング映像が表示され、10秒間の提供クレジット表示、本編ストーリーへと続く放送用映像を想定する。10H SHOWの完パケなら、冒頭のCMは除いて作成され、オープニング映像は10時ジャストにスタートし提供クレジットベースまでが2698フレームとなる。一方、放送ではCMを挟み、21時01分02Fからオープニング映像がスタートするため、21時02分30秒の自動スーパーインまでは2696フレームとなり、提供スーパーが2フレームぶん、オープニング映像に食い込んでしまうことになる

 異なるシステム間を行き来して扱われる映像では、この2フレームのズレが発生することを考慮して、たとえばオープニングを2フレーム短く編集する、製作クレジットを早めに消す、提供クレジットをカットインではなくフェードインさせてダブりを目立たなくする、などの回避策を講じることが賢明といえましょう。

[ファイルベース時代に学ぶ ビデオ技術(基礎編)]連載リスト
第1回:映像が動いて見えるしくみ
第2回:映像・音声信号の種類と伝送 その1 その2 その3
第3回:ファイルベースフォーマットの概要 その1 その2 その3
・第4回:タイムコードの概要と使用法


About 水城田 志郎

 旧日本ビクター(現JVCケンウッド)にて、ハイビジョンVTRやデジタルVTRの開発に従事する。その後独立して映像制作を行う傍ら、テクニカルライターとして業界誌への執筆活動を行い、解りやすい技術解説には定評がある。一方でNHK放送研修センターや放送系専門学校などで後進の育成にも努める。

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