Avid Media Composer〜Ver.8.4は編集フレームサイズがフリーに、タイムライン機能強化やXAVC-Iネイティブ対応など


 2015年6月、Avid Media Composerソフトウェアの新バージョン8.4がリリースされた。今回のバージョンアップは、前回と同じように小数点以下の数字が増えるマイナーバージョンアップの体裁を取ってはいるものの、その実、数多くの新機能が追加されている(図1)

図1 バージョン8.4に対する筆者の印象は、8.3リリースに間に合わなかった新機能が追加され、新生Media Composerが明らかに進化したな、という感じだ

プロジェクトフレームサイズのカスタム化

 Media ComposerソフトウェアVer.8.4(以下、MC8.4)では、ユーザーがプロジェクトで編集するシーケンスのフレームサイズを自由に設定することが可能になった。これはかなり画期的だ。

 これまでのMCは、SD(720×486ピクセル)、HD(1920×1080ピクセル)、Ultra HD(3840×2160ピクセル)というように、プロジェクトで編集できるシーケンスのフレームサイズはテレビ放送・映画で使われるフレームサイズに固定されて変更できなかった。
 今回のバージョンから新規プロジェクトを作成するとき、フォーマット選択プルダウンメニューから “custom” 項目を選択して、プロジェクトのRaster Dimensionサイズを任意に設定できるようになった(図2、3)

図2、3 カスタムフレームサイズの編集プロジェクトを作成するには、新規作成プロジェクトダイアログのフォーマット選択メニューから "Custom" を選択する。そしてフレームサイズ("Raster Dimension")、フレームレートを設定してカスタムプロジェクトを作成する。よく使用するカスタムフォーマットはプリセットに保存可能だ。設定可能なフレームサイズは、最小:横256×縦120ピクセルから最大:8192×8192ピクセル。フレームレートは、23.976〜60fpsから選択する

図2、3 カスタムフレームサイズの編集プロジェクトを作成するには、新規作成プロジェクトダイアログのフォーマット選択メニューから “Custom” を選択する。そしてフレームサイズ(”Raster Dimension”)、フレームレートを設定してカスタムプロジェクトを作成する。よく使用するカスタムフォーマットはプリセットに保存可能だ。設定可能なフレームサイズは、最小:横256×縦120ピクセルから最大:8192×8192ピクセル。フレームレートは、23.976〜60fpsから選択する

 プロジェクトが開くと、設定したフレームサイズをもつコンポーザーウィンドウがオープンする。図4のように、デスクトップはMC史上かつて見たことがないような光景が広がる。しかしながら、モニターのアスペクト比が見慣れないだけで編集方法は従来とまったく変わらない。そのまま編集することができる…ん?  そのまま?

 もちろん、こんなアスペクト比のフレームで撮影できるカメラはないし、素材はどうなるのだろうか?
 以上のギモンを含め、MC8.4をいろいろ調べてみると、この新機能に関係する設定や機能、制限にはつぎのようなモノがあることがわかった。

図4 カスタムフレームサイズの編集プロジェクトが開くと、フレームサイズのアスペクト比に等しいモニターをもつコンポーザーウィンドウがオープンする。図は1080×2560ピクセルサイズのプロジェクト

図4 カスタムフレームサイズの編集プロジェクトが開くと、フレームサイズのアスペクト比に等しいモニターをもつコンポーザーウィンドウがオープンする。図は1080×2560ピクセルサイズのプロジェクト

■Reformatによるクリップ表示方法の設定
 図4のように、イメージサイズの異なるクリップをソースモニターにロードすると、ソース画像はモニターサイズにリサイズされて表示される。これはクリップごと個別設定できる “Reformat” オプションがデフォルトで “ストレッチ” に設定されているためだ。
 ”Reformat” オプションの設定を変更すれば、モニターに映されたクリップの表示方法が切り替えられる(図5)

図5 フレームサイズの異なるクリップの表示方法は、"Reformat" オプションによって設定する。デフォルトは "ストレッチ" で、映像はモニターサイズいっぱいにリサイズされて表示される

図5 フレームサイズの異なるクリップの表示方法は、”Reformat” オプションによって設定する。デフォルトは “ストレッチ” で、映像はモニターサイズいっぱいにリサイズされて表示される

■FrameFlexによるクリップのフレーミング
 モニターにロードしたクリップのフレーミング(=クリップの表示箇所の設定)は、FrameFlex機能を使って行う。クリップのフレーミングを固定的に設定するには、ビンウィンドウでクリップを選択しコンテクストメニューの “ソース設定” を実行する。そしてダイアログがオープンしたらFrameFlexを使ってサイズや表示位置を設定すればよい(図6)

 また、クリップのフレーミングをキーフレーマブルに設定するには、タイムラインにクリップを編集してから、エフェクト編集モードに入ってFrameFlexのパラメータを設定すればよい。

図6 モニターへの表示エリアを設定するには、ビンウィンドウのコンテストメニューから、"ソース設定" を実行し、FrameFlexをオープンして設定する。FrameFlex機能はタイムイランからエフェクトライクにも呼び出せる

図6 モニターへの表示エリアを設定するには、ビンウィンドウのコンテストメニューから、”ソース設定” を実行し、FrameFlexをオープンして設定する。FrameFlex機能はタイムイランからエフェクトライクにも呼び出せる

 ところで、モニターに表示された映像のスケールを変更するには、FrameFlexより “リサイズ” エフェクトや “ピクチャーインピクチャー” エフェクトのほうが一般的だ。しかし、これらエフェクトはプロジェクトフレームサイズ(=モニターの表示フレームサイズ)でクリッピングされた表示部分のみを拡大縮小する。

 つまり、クリップのスケールを縮小するとクリップの周囲にすき間が表れることになる。プロジェクトフレームサイズより大きなイメージサイズをもつソースクリップを縮小するとき、ユーザーとしてはモニター表示エリアの外に隠れていた部分の映像が画面に現れるのでは? と期待してしまうが、これらのエフェクトではそうはならない。ソースクリップのイメージサイズを反映した映像のスケール変更は、FrameFlex機能や “Avid Pan&Zoom” エフェクトを使用する(図7、8)

図7、8 プロジェクトフレームサイズよりも大きいクリップに対し、ピクチャーインピクチャーやリサイズエフェクトを使って映像を縮小すると、映像はプロジェクトフレームサイズにクリップされ、映像の周囲に黒みが表れる(左)。映像の縮小によって、表示エリア外の映像を表示したいときは、FrameFlexを使う(右)

図7、8 プロジェクトフレームサイズよりも大きいクリップに対し、ピクチャーインピクチャーやリサイズエフェクトを使って映像を縮小すると、映像はプロジェクトフレームサイズにクリップされ、映像の周囲に黒みが表れる(左)。映像の縮小によって、表示エリア外の映像を表示したいときは、FrameFlexを使う(右)

■クリップのインポート機能など
 クリップのインポート機能の動作は従来どおり。したがってインポートコマンドで静止画像やムービーをインポートすると、これらはプロジェクトのフレームサイズにリサイズされて読み込まれる(図9)

図9 インポートコマンドによって外部メディアを読み込むと、生成されたクリップはプロジェクトのフレームサイズと同じイメージサイズをもつ(イメージ読み込みのオプションは、インポート時の設定に従う)。オリジナルイメージサイズの外部メディアにリンクしたクリップを作成するには、"メディアにリンク" コマンドを使う

図9 インポートコマンドによって外部メディアを読み込むと、生成されたクリップはプロジェクトのフレームサイズと同じイメージサイズをもつ(イメージ読み込みのオプションは、インポート時の設定に従う)。オリジナルイメージサイズの外部メディアにリンクしたクリップを作成するには、”メディアにリンク” コマンドを使う


 つまり、プロジェクトフレームサイズが1080×2160ピクセルのプロジェクトに読み込まれたクリップのイメージサイズは、オリジナルのイメージサイズに関わらず全て1080×2160ピクセルとなる。もちろん、画像のリフレーミング方法も従来どおりインポートオプションに依存する。

 このインポートコマンドの挙動は理屈としては理解できるものの、「せっかくMCがフレームサイズフリーになったのだから、インポートコマンドもメディアのオリジナルイメージサイズを保って読みこめるようにして欲しい」と考えるユーザーも多いのではないだろうか。

 筆者もそう考える1人だ。この問題には代替的な回避方法がある。1つは “メディアへリンク” コマンド(旧AMAリンク)を使う方法だ。
 ”メディアへリンク” コマンドを使うと、ムービーや静止画像はオリジナルイメージサイズのままMCのビンウィンドウに展開される。コマンドによって生成されるクリップの再生パフォーマンスも、MCがバージョンアップを重ねるたびに上がってきており、大変使い勝手が良くなってきた。また別の方法として、”Avid Pan&Zoom” エフェクトを使って外部メディアをクリップにリンクする方法もある。

 上にあげた “FrameFlex” 機能と “Avid Pan&Zoom” エフェクト、 “リサイズ”・”ピクチャーインピクチャー” エフェクトについて、これらはどれもユーザーに類似の効果を期待させるものの、実際の結果はかなり違いがある。”インポート” コマンドと “メディアへリンク” コマンド、こちらもしかりだ。

 現在のMCの中では、新しいコマンドが旧来のコマンド体系にすんなりと収まっていないような印象だ。アビッドテクノロジー・アプリケーションスペシャリスト西岡氏によれば、これはすでにAvidのMC開発サイドにおいて課題として上がってきているという。MCの操作体系がさらに進化することを願う。

 さて、新機能である編集プロジェクトフレームサイズのフリー化に関連する話題が、実はもう1つある。それは、異なるフレームサイズのプロジェクトで編集されたシーケンスを別のフレームサイズのプロジェクトでオープンする問題だ。

 しかし、もうプロジェクトフレームサイズについてかなり字数を使ってしまったし、MC8.4にはまだまだ紹介したい新機能がある。そこで、この異なるプロジェクトフレームサイズとシーケンスの関係は、読者のみなさんのお楽しみに取っておこう。

タイムラインウィンドウのインターフェース強化

■検索フィールドの追加
 タイムラインウィンドウの下部に検索フィールドが追加された。この検索フィールドに文字を入力すると、タイムラインで編集中のシーケンスから、入力したキーワードに合致するクリップを検索することができるようになった(図10、11)

図10、11 タイムラインウィンドウ下部に設けられた検索フィールド。こちらのフィールドにクリップ名やマーカーorコメント項目に入力したテキストや解像度などを入力すれば、クリップに記述されたほとんどのテキストが検索できる。検索クリップが見つかるとクリップ先頭にポジションインジケーターが移動する

図10、11 タイムラインウィンドウ下部に設けられた検索フィールド。こちらのフィールドにクリップ名やマーカーorコメント項目に入力したテキストや解像度などを入力すれば、クリップに記述されたほとんどのテキストが検索できる。検索クリップが見つかるとクリップ先頭にポジションインジケーターが移動する

 検索可能なテキストは、Resolution(解像度)、クリップ名、コメント、マーカーなどから検索を行う。この検索は、シーケンス上のクリップにまったくクリップテキストを表示していなくても機能するのが便利だ。検索対象のフィルタリングはフィールド右端のポップアップメニューで指定する。

■クリップに適応されたソースアダプターの表示
 MC8.4から、フレームレートやフレームサイズ、カラースペースの異なるクリップをタイムラインに編集すると、図12のように適用されているアダプターがクリップ上に表示されるようになった。

図12 タイムラインに編集されたビデオクリップ中央に表示されるようになったアダプターマーク。現在クリップにどんなアダプターが適用されているかがわかるようになった。"T" はフレームレート(時間)、"S" はフレーム表示サイズ・エリア、"C" はカラースペース変更アダプターを表している

図12 タイムラインに編集されたビデオクリップ中央に表示されるようになったアダプターマーク。現在クリップにどんなアダプターが適用されているかがわかるようになった。”T” はフレームレート(時間)、”S” はフレーム表示サイズ・エリア、”C” はカラースペース変更アダプターを表している

 もう少し詳しく説明しよう。MC8.4はフレームレートやサイズ、カラースペースが異なる様々なクリップを同一シーケンスに混在編集できる。これは、これら編集プロジェクトのパラメータと異なるクリップにアダプターを適用し、プロジェクトのパラメータに自動的にそろえてしまう仕組みになっているからだ。

 以前のバージョンでは、アダプターが適用されたクリップには単なる緑のドットが付いていただけだったが、MC8.4から適用アダプター情報を詳細に表示するようになったわけだ。インジケーターの文字は、”T” がフレームレート変更(モーションアダプター)、”S” が表示サイズ変更(FrameFlex)、”C” がカラースペース変更(カラーアダプター)を表している。

AMAリンクメディア、コーデック関連

 MCではバージョンアップを重ねることによって、対応フォーマットが増えるだけでなく、リンククリップの再生パフォーマンスも向上している(図13)

図13 AMAプラグインを用いて読み込んださまざまなクリップ。今回のバージョンアップによって、XAVC-IとProRes(HD以上)のリアルタイム再生が可能になっている

図13 AMAプラグインを用いて読み込んださまざまなクリップ。今回のバージョンアップによって、XAVC-IとProRes(HD以上)のリアルタイム再生が可能になっている

■ソニーXAVC-I
 ソニーのサイトから、MC8.4対応の最新AMAプラグインがダウンロードできる。このプラグインをダウンロードすれば、XAVC-I/XDCAMフォーマットのメディアがネイティブ再生可能だ。以前のバージョンに比べ、XAVC Long-GOPメディアの再生レスポンスも向上している。

■パナソニックP2
 パナソニックのサイトにもMC8.4対応のP2プラグインEx Ver.4.4が公開されている。プラグイン公開ページの情報によると、Ver.4.4からAVC-Intra200、AVC-Intra 2K422/444、4K422/444にも対応するという。

■そのほかの対応フォーマット
 編集部から借り受けたキヤノンXC-10で撮影した4Kコンテンツ(UHD/29.97p:XF-AVCフォーマット)もキヤノンのAMAプラグインによって読み込むことができた。ただし、原稿執筆段階で最新プラグインが公開されておらず、現段階ではビデオタイプが “AVC High 422 Intra” と認識された。
 なお、Apple ProResフォーマットのオーバーHDサイズのビデオについても、今回のバージョンからネイティブ再生に対応した。

■DNxHRコーデックのアルファチャンネルサポート
 前回のバージョンアップ時に登場したDNxHRコーデックが、今回のバージョンアップに伴いアルファチャンネル対応を果たした(図14)。実は前バージョンにおいて、Ultra HDシーケンスにテロップを編集することは、かなり大変な作業だった。今回のバージョンアップによって、HD編集と同じ方法でシーケンスにテロップが編集できるようになった。

図14 DNxHRコーデックがアルファチャンネルをサポートするようになった。これにより、外部作成した4Kテロップをインポートしてシーケンスに編集できるようになった

図14 DNxHRコーデックがアルファチャンネルをサポートするようになった。これにより、外部作成した4Kテロップをインポートしてシーケンスに編集できるようになった

HDプロジェクトにおけるメディアのトランスコード

 今回のバージョンから、HDプロジェクトにおいてトランスコードコマンドを実行すると、素材のフレームサイズやフレームレートを保ったまま、DNxHRコーデックでトランスコードできるようになった(図15、16)。このバージョンアップで、HDプロジェクトにおける4Kカメラで収録したオーバーHDサイズのメディアが、より一層使いやすくなった。

図15、16 HDプロジェクトでオープンしたコンソリデート/トランスコードツール(一部)。HDプロジェクトでトランスコードコマンドを実行するとき、"Keep source's frame rate" を選択すると、ビデオコーデックにDNxHRコーデックが選択できるようになった

図15、16 HDプロジェクトでオープンしたコンソリデート/トランスコードツール(一部)。HDプロジェクトでトランスコードコマンドを実行するとき、”Keep source’s frame rate” を選択すると、ビデオコーデックにDNxHRコーデックが選択できるようになった

 以上、MC8.4の主な新機能を紹介してきたが、MC8.4にはまだまだ便利な新機能が沢山搭載されている。MC8.4の新機能についてさらに詳しく知りたい読者は、”Avid Japan Video Blog(http://blog.avid-jp.com/avid_japan_video_blog/2015/06/media-composer8-1a0d.html)”を参照してほしい。

 今回のレビューマシーンは、HPz820(CPU:2.7GHz×2/メモリー:48Gバイト)で行った。以前、いまより1つ前のMC8.3にバージョンアップしたとき、筆者はそれまでのMCには感じられなかった編集レスポンスの高さに大変驚いた。今回のMC8.4においても、そのレスポンスの良さが保たれているようだ。

発売:2015年6月
価格http://www.avid.com/JP/products/Media-Composer#licensing
・Media Composer サブスクリプション・ライセンス(年単位):¥7万4700(税別)〜
・Media Composer 永続ライセンス:¥16万2000(税別)〜
・Media Composer フローティング・ライセンス:販売代理店に問い合わせ

 Media Composerの価格は、サブスクリプション(月契約/年契約)、永続ライセンス、フローティングライセンス(大規模施設向け複数パッケージ)の3種類が上記のように設定されている。
 永続ライセンスでは1年間のサポート契約が含まれており、1年間のサポートとソフトウェアアップグレードをが提供される(2年目以降のアップグレードおよびサポートは、別途¥3万2900(税別)にて購入)。
 サブスクリプションライセンスは、ライセンス有効期間の間、サポートおよびアップグレードが提供される。

URLhttp://www.avid.com/US/products/Media-Composer#features

Media Composer  30日間トライアル ダウンロードURLhttp://apps.avid.com/media-composer-trial/JP/


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