Avid ISIS|1000〜インプレッション:4Kにも対応するエントリーレベルの共有ストレージ、他社編集アプリにも対応


 アビッドテクノロジーから、2015年9月より、共有ストレージISISシリーズのエントリーモデルとして「ISIS|1000」の発売がスタートした(写真1)

写真1 ISISシリーズのエントリーモデルとなるISIS|1000。他社製の編集アプリケーションもサポートしており、柔軟な協調制作環境を構築できる

写真1 ISISシリーズのエントリーモデルとなるISIS|1000。他社製の編集アプリケーションもサポートしており、柔軟な協調制作環境を構築できる

 アビッドテクノロジーのアプリケーションスペシャリスト西岡氏によると、このISIS|1000は、国内外の中小規模クラスの制作プロダクション/ポストプロダクションから寄せられたリクエストがきっかけで開発されたモデルだという。

 ノンリニア編集アプリケーションのAvid Media Composerが安価で利用できるようになったいま、制作プロダクション/ポストプロダクションで数台のMedia Composerが稼働するのも珍しい光景ではない。たしかに、このようなビデオ制作現場なら、手ごろな共有ストレージは垂涎のハードウェアかもしれない。

20Tバイト単位で最大80Tバイトまでの拡張が可能なストレージエンジン

 さて、写真2がISIS|1000のストレージエンジンだ。このストレージエンジン1筐体あたりのメディア容量は20Tバイト、これは2Tバイトの磁気HDD 12基のRAID6(メディア用HDD 10基+パリティ用HDD 2基)で構成され、データ転送幅300Mbpsを叩き出す。

写真2 ISIS|1000のストレージエンジン。1ストレージエンジンあたりの容量は20Tバイト。12基のHDDを搭載し、そのうち10台がメディア用HDD、2台がパリティ保存用。HDD構成はRAID6、最高2台までのHDD故障耐性がある

写真2 ISIS|1000のストレージエンジン。1ストレージエンジンあたりの容量は20Tバイト。12基のHDDを搭載し、そのうち10台がメディア用HDD、2台がパリティ保存用。HDD構成はRAID6、最高2台までのHDD故障耐性がある

 データ転送幅300Mbpsと言われても、それがどのくらいの能力なのか中々ピンとこない。実際のビデオのデータ量に換算すると、AvidのHDコーデックDNxHD145のデータレートは1ストリームあたり約18Mbpsだから、データ転送幅300MbpsはDNxHD145約15ストリーム分に相当する。
 またオーバーHDコーデックDNxHR SQによるUHD(3840×2160ピクセル)/59.94pのデータレートは1ストリームあたり145Mbpsだから、計算上転送幅300Mbpsは4K(UHD)映像が2ストリーム流せることになる。

 そしてISIS|1000は、1システムあたり最高4基までストレージエンジンの拡張ができる。ストレージエンジンの拡張によって、40Tバイト、60Tバイト、80Tバイトと、20Tバイトずつ容量を拡張可能だ。と同時にデータ転送幅も最高1.2Gbpsまで増大させることが可能で、上述の同時配信ストリーム数も倍々に増えることになる。

 なお、ISIS|1000のパーティションやユーザー管理は、ISISシリーズ共通の管理ソフトウェアであるManagingConsoleで行う(写真3)

写真3 ISIS|1000の管理アプリケーションManagement Consoleの画面。Management ConsoleはISISシリーズ共通の管理アプリケーションだ。ユーザーの登録、パーティションの設定などが簡単なマウス操作で行える

写真3 ISIS|1000の管理アプリケーションManagement Consoleの画面。Management ConsoleはISISシリーズ共通の管理アプリケーションだ。ユーザーの登録、パーティションの設定などが簡単なマウス操作で行える

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最大24クライアントまでを同時接続、他社製アプリケーションにも対応

 ISIS|1000に同時接続可能なクライアント数は最大24クライアントだ。クライアントマシーンとISIS|1000のネットワーク接続には、10G/1GビットEthernetスイッチを使用する(写真4、5)

写真4 ISIS|1000とスイッチングハブ(右奥)。ISIS|1000とクライアントマシーンは高速スイッチングハブを介してのみ接続可能。同時接続クライアント数は最高24クライアントとなる。使用可能なスイッチングハブの指定があるので注意が必要だ(写真はNetgear製)。ISIS|1000のサイズはIECラック互換、奥行きが630mmもあるので、ビデオ業界標準のラックだと奥行きが多少厳しくなる

写真4 ISIS|1000とスイッチングハブ(右奥)。ISIS|1000とクライアントマシーンは高速スイッチングハブを介してのみ接続可能。同時接続クライアント数は最高24クライアントとなる。使用可能なスイッチングハブの指定があるので注意が必要だ(写真はNetgear製)。ISIS|1000のサイズはIECラック互換、奥行きが630mmもあるので、ビデオ業界標準のラックだと奥行きが多少厳しくなる

写真5 ISIS|1000の背面。ISIS|1000とクライアントマシーンの直接接続機能は搭載されていない。指定の高速スイッチングハブと10GBASE-T接続される

写真5 ISIS|1000の背面。ISIS|1000とクライアントマシーンの直接接続機能は搭載されていない。指定の高速スイッチングハブと10GBASE-T接続される

 なお、ISIS|1000はエントリーモデルという性能上、使用可能なEthernetスイッチはNetgearもしくはDell Nシリーズに限定されているので注意が必要だ。

 ところで、これは筆者の感覚だが、たとえば30分の全ENG取材番組(1カメ収録)の場合、取材総量はDNxHDベースでおよそ500Gバイト〜1Tバイト、1時間モノだと1〜2.5Tバイトくらいになる。
 この収録素材をすべてISIS|1000にアップしてオフライン編集作業を行う場合、ストレージ容量20Tバイトなら同時制作可能な番組数は、DNxHD圧縮を使うとだいたい5〜15番組くらいになるだろうか。

 さらに収録から納品・番組OAまで1〜2カ月のタイムスパンがあり、その期間内は素材を消去できない…となると、ISIS|1000内のメディア更新効率はもっと低くなってしまう。
 こうなると制作プロダクションにおいて、ISIS|1000をDNxHD圧縮ベースのオフライン編集サーバーとして運用するのに容量20Tバイトは少々窮屈に感じてしまうかもしれない。

 したがって、ISIS|1000をオフライン編集サーバーとして運用するなら、Media Composerがネイティブ対応する、AVCHDやXDCAMフォーマットなど高圧縮なファイルベースフォーマットを使用するべきだ。

 たとえば、1時間のHD番組を収録する場合、DNxHD145圧縮ではファイルサイズが約70Gバイトになる。それに対し、AVCHDフォーマットならファイルサイズは約12Gバイト、これはDNxHD145圧縮の1/6だ。またXDCAM EXならファイルサイズは約18Gバイト、DNxHD145圧縮の1/4にしかならない。

 これらのファイルフォーマットを使用すればサーバー容量を節約できるだけでなく、おまけにデータ転送量も少なくて済む。ISIS|1000は上のような高圧縮/低データレートのフォーマットメディアによって充分なパフォーマンスを発揮するだろう。

 ISIS|1000はクライアントアプリケーションとして、同社製のMedia ComposerやProToolsのほか、Apple Final Cut Pro X、Adobe Premiere Pro、Grass Valley EDIUS Proなどのサードパーティー製アプリケーションにも対応する。プロダクション内のビデオフォーマットをAppleのProResなどにしておけば、これらのノンリニアアプリケーションで収録メディアを共通化でき大変便利といえる。

 ISIS|1000のような共有サーバーのもうひとつのメリットは、ハードディスク故障によるメディア消失を回避するという隠れた機能だ。ISIS|1000のメディア消失保護は、10台のメディアHDD中2台の故障に対応する。この保護機能によって、オンエアー前、ハードディスク故障によるメディアの読み取り不良というリスクは大幅に軽減されるはずだ。このメリットはかなり大きいだろう。

価格:¥224万〜(税別)
発売:2015年9月
URLhttp://www.avid.com/JP/products/ISIS1000(メーカー製品情報サイト)
http://blog.avid-jp.com/avid_japan_video_blog/files/Avid_TurnkeySystem_flyer_JP_wEDIUS_20151009_VideoAlpha.pdf


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