オタク 手塚 一佳の2014 NAB Show速報 ・第1回


 NAB Showは、全米放送事業者協会NAB(National Association of Broadcasters)が年に1度開催する世界最大の放送機器展だ。2014年4月7日から始まった2014 NAB Showは、例年同様、ネバダ州ラスベガスにて開催された。

 事前の予想では、今年のNAB Showは一眼レフカメラの4K搭載や4K対応編集ソフトの低価格化など、地味なショーになるものと考えられていた。ところが実際に開幕されてみるとその予想は見事に覆され、まったく予想だにしなかったメーカーからの新型カメラや既存発表開発中カメラの新機能発表、既存とはまったく違う使い方の三脚関連などなど、ここ数年来ないほどに驚きの新製品発表ばかりが続く開催回となった。シネマとブロードキャスト、そしてネット配信の境目が消えつつあることが参入障壁を下げ、こうしたまったく新しい新製品の生まれる土壌なっているともいわれており、映像というジャンル全体が大きな変革時期に突入したことを感じさせる。

 これから数日間にご紹介する2014 NAB Show関連のブース紹介や、ニュースを是非ともご覧になり、この強烈な変化の波を感じ取って頂ければ幸いである。

AJA Video Systems、同社初のシネマカメラ「CION」を発表

 2014 NAB Showにおいて最も大きな驚きをさらったのが、AJA Video Systems(以下AJA)の発表した新シネマカメラ「CION(サイオン)」だろう。AJAブースでは、同カメラを一目見ようとする映像関係者たちで黒山の人だかりであった。同社がカメラ機材を開発・販売するのは初めてのこととなる。

 AJA「 CION」は、12 StopsグローバルシャッターのAPS-CサイズCMOSセンサーを搭載したフル4Kカメラで、DCI 4Kサイズ(4096×2160)で毎秒120pの外部収録まで対応している。カメラ本体に装着する専用のSSDにもProRes 4444の場合には30p、422の場合には60pまで収録可能。もちろん、2KやフルHDの収録にも対応する。SSDはKi Pro Quad同様AJA Pak SSDメディアを使用となっており、256Gバイトで695ドル、512Gバイトで1295ドルと、高速大容量の割にはリーズナブルだ。

 レンズマウントには映画定番のPLマウントを採用。センサーには、ローパスフィルターと赤外線除去の2つのセンサーフィルターを搭載。さらに、バックフォーカスアジャストメントを搭載して、レンズとセンサー間の距離を調整することができるようになっている。

 本体内の収録だけではなく出力系も充実しており、4本の4K収録向け3G-SDI/HD-SDI、2本のサポートモニター向け3G/HD-SDI、1本のHDMI 1.4、1本のHDMI 1.3、さらにはThunderbolt端子も搭載している。4K向けの4本の3G-SDI端子を接続することで、Corvid Ultraに接続し、そこでフル4K(4096×2160)120pのAJA RAW映像を収録することができる。

 RIGもオプションでメーカー準備しており、トップハンドルやロゼッタハンドルにはウッドを使用、ショルダー部分には裏皮を使用して、使用感を高めてもいる。こうした天然素材を使っての使用感の向上は高級シネマカメラ特有の文化だが、それを敢えて安価な「CION」で装備することで、このカメラがシネマカメラであるということを鮮明に打ち出しているといえるだろう。しかも重量は6ポンドと極めて軽量だ。

 「CION」は2014年夏ごろ発売予定で、値段は8995ドル。性能を考えると驚くべき定価価格であるといえるだろう。

ソニー、一眼ミラーレスカメラα7Sに、4K動画を搭載

 ソニーは、同社製新型一眼ミラーレスカメラ「α7S」に、4K動画出力機能を搭載すると発表し、その展示を行った。同カメラは既存の同社製一眼ミラーレスカメラ「α7」の改良型で、フルサイズセンサーを利用した美麗な写真が特徴だが、HDMI端子からQFHD(3840×2160)の映像を出力することができる。また、4K動画にドットバイドット対応するため、ピクセル数を減らして画素あたりの受光面積を大きくしたため暗所にも極めて強く、ISO感度は最大409600まで上げることが可能となっている。

 「α7S」のHDMIには最大30pのQFHD映像を送ることができ、この映像には8ビットのS-Log2のガンマカーブ収録を行うことができる。「α7S」本体ではQFHD映像収録ができないため、収録にはATOMOS製「SHOGUN」などが想定されている。

 また、同社ブースでは、IPソリューションによる遠隔地からのカメラ操作や、その際に4K、8Kなどの高解像度映像を使うことによる受信地側での疑似カメラワークなど、2020年東京オリンピックやその先を見据えての新しい映像手法の展示も積極的に行っていた。

[第2回につづく] 

※本稿は、速報という観点から、即時性を重視して情報をお届けしております。その性質上、後日、記述内容に修正が入る可能性がありますこと、あらかじめご承知おきいただけますと幸いです(編集部)


手塚 一佳

About 手塚 一佳

 1973年3月生まれ。クリエイター集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。東京農業大学農学部卒、日本大学大学院中退、小沢一郎政治塾8期卒、RYAショアベースヨットマスター、MENSA会員。学生時代からシナリオライター兼CG作家としてゲームやアニメ等でアルバイトを始め、1999年2月に仲間と共に法人化。アニメは育ってきたスタッフに任せ、企画・シナリオの他、映画エフェクトや合成などを主な業務としている。副業で鍛冶作刀修行中!

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