オタク 手塚一佳の自腹レポート〜EOS-1D Cを小規模撮影で使いこなす ・第2回
それに対し、1500円のVARAVON SLING FOLLOW FOCUS は常時携帯しておきたい簡易フォローフォーカスだ。
ゴムバンドでレンズに留めることによってレンズ直径を大きくしたのと同じ効果を得る仕組みで、末端を指先でそっと触れるように操作をすることでスチルレンズであってもかなり繊細なフォーカス操作が可能となる。もちろん、上記のARRI MFF-2が装着できる環境ではそれを使えばよいのだが、一眼レフ動画の宿命でどうしても軽量RIGでの撮影を強制される場面が多いEOS-1D Cには持っていた方が良い機材だ。
- 写真6 VARAVON SLING FOLLOW FOCUS を実際に装着したところ。非常にチープだが確実に役に立つ
また、いくらRetina EVFを併用しているとはいえ、本格的なARRI MFF-2によるフォローフォーカスは本来は専用のフォーカスマンを置くことを想定したものであり、ホワイトリングにフォーカスマークをサインペンで書いてもカメラマンが自分では見ることができない。いちいち手元を見るわけにはいかないワンマン撮影では本格的なフォローフォーカスだからこそ面倒なことも多々あるのだ。そんなとき、このVARAVON SLING FOLLOW FOCUSであれば、手で角度を覚えられるので極めて直感的にフォーカス操作ができる。また、絞りやズームリングにも付けておけばそれらも繊細に扱うことができるのでお勧めだ。しかも、なにしろ、このVARAVON SLING FOLLOW FOCUSはARRIのFFを使うためにレンズに取り付けるジップギアよりも安い。
EOS-1D Cの運用では両方持っておいた方がいいだろう。
■同録の必需品SENNHEISER MKE 400 & ウィンドジャマー
EOS-1D Cでの少人数撮影で忘れてはならないのが、同録の際のマイクの準備だ。内蔵マイクはカメラの駆動音やタッチ音を拾ってしまうため、当て音以外には使えない。しかもEOS-1D Cの本体マイクは一眼レフカメラのお約束で、本人が喋りながら撮ることを想定しており撮影者側を向いている(元々、一眼レフ動画は戦場カメラマン向けの実況中継撮影のための機能だから、このマイクの向きは歴史上当然なのだが)。
カメラマンが喋る場面ならともかく、カメラマンの呼吸音や衣擦れの音を撮ってもしょうがない場面も多いだろう。EOS-1D Cで撮影物の音を取ろうと思ったら外付けマイクは必需品なのだ。
筆者は、この同録用マイクにはSENNHEISER MKE 400を使用している。このマイク、実はカメラを買ったときにおまけで付いてきた物だったのだが、その音質と手軽さのバランスの良さに、気に入って愛用している。
- 写真7 SENNHEISER MKE 400 & ウィンドジャマー。かわいらしい見た目とその低価格とは裏腹に同録には充分すぎるくらいの性能を発揮する
もちろん、定番の同社製ガンマイクMHK416に比べるとあまりにチープなマイクではあるのだが、ショックマウント付きでしかも入力感度切り替え可能、ローカットも付いている、さらに同録に便利なステレオマイク、さらにはそのままEOS-1D Cに挿せる3.5mmステレオミニプラグということで、大変便利に使っている。ちょっとした環境音を撮るには充分だし、別途録音部さんがいる場合にも映像に当て音兼緊急用の音声を入れるためには必要充分な性能だ。
なお、このマイクは単4電池で動くのも魅力だ。300時間もつので、現場に出る前に電池を入れ替えておけばスイッチは入れっぱなしで大丈夫なのも頼もしい。音質は天下のSENNHEISERだけあって、あたりまえの話だが一般的な業務カメラ付属マイクよりも余程奇麗に撮れる。
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上記のような装備があることで、EOS-1D Cでも、ワンマン、もしくは少人数撮影が可能となる。もちろんこうした装備を付け加えなくても、本体機能とレンズとメモリーさえあれば、たとえばフォーカス時にいちいち拡大表示をするとかフォーカス時に根性を入れて何度もリハーサルを撮り直すなどして頑張れば画は撮れるのだが、その手間や労力は作品クオリティの方にまわした方がいいだろう。
仮にこうした装備を買ったとしても、従来のシネマカメラに比べれば格安だ。個人や零細企業でも維持できる本格シネマカメラ、それがキヤノンCINEMA EOS SYSTEM EOS-1D Cなのである。
次回はここから一步踏み込んで、実際の撮影時の注意事項やレンズ周り、LogベースのEOS-1D Cならではの撮影方法などをご紹介したい。
[アイキャッチ モデル:すずき えり]