EIZO ColorEdge CG318-4K〜4K映像制作のために必要な信頼できる色管理を実現・後編


 後編では、実際のノンリニア編集アプリケーションを使用してColorEdge CG318-4K(以下、CG318-4K)の使い勝手を検証してみよう。

 検証にはAvid Media Composer|Software(以下、MC)を使用した。このノンリニアアプリケーションは、昨年末のバージョンアップによって4K編集対応を果たしている(写真1)。4K編集対応のMCは、エディターがカラースペースを意識しながら編集できる機能をもつ。

写真1 レビューに使用した Avid MediaComposer|Software(バージョン8.3)。ディスプレーが4Kサイズともなると、編集ワークスペースがとても広大だ

写真1 レビューに使用した Avid MediaComposer|Software(バージョン8.3)。ディスプレーが4Kサイズともなると、編集ワークスペースがとても広大だ

ソース&レコードモニターのカラースペース切り替え

 ソース&レコードモニターとは、MCのコンポジションウィンドウの左右に並ぶ、2つのビューワーだ。左側のビューワーがソースモニターで素材映像の視聴、そして右側のビューワーがレコードモニターで、こちらはタイムラインで編集中のシーケンスの視聴に使われる。
 4K対応のMCでは、このソース&レコードモニターの表示カラースペースを個別に切り替えて表示できるようになっている。

 表示カラースペースの切り替えは、それぞれのモニター上で表示されるコンテクストメニューの “Display Color Space” コマンドから目的のカラースペースを選択する。

 ”Display Color Space” コマンドのカラースペースリスト中に含まれる “プロジェクト” とは、編集プロジェクト作成時に設定したプロジェクト全体のカラースペースを指す。特別な理由がないかぎり、編集プロジェクトがUltra HDならRec.2020、HDならRec.709、DCI 4KならDCI-P3を選択するはずだ(写真2)

写真2 コンポーザーウィンドウのソース&レコードモニターは、コンテクストメニューからモニターのカラースペースが切り替えられる(写真ではプロジェクトカラースペースをRec.2020に設定しているのでRec.2020は表示されていない)

写真2 コンポーザーウィンドウのソース&レコードモニターは、コンテクストメニューからモニターのカラースペースが切り替えられる(写真ではプロジェクトカラースペースをRec.2020に設定している状態なのでRec.2020は表示されていない)

 コマンドによって、ソースモニターのカラースペースをプロジェクトカラースペース(Rec.2020)、レコードモニターのカラースペースをRec.709に切り替えてみたのが写真3〜5だ。

 この写真3〜5を一見してわかるように、カラースペースをRec.709に設定したレコードモニター(右側)のほうが、赤みが強く表示されてしまっている。これは、Rec.2020色域で撮影された映像素材に含まれるRec.709色域外色がクリップ表示されているためだ。

写真3〜5 ソースモニターの表示カラースペースをRec.2020(左)、レコードモニターの表示カラースペースをRec.709(右)にして同じクリップを表示した。右側のモニターは、色域外色のクリップによって、表示色がかなり変わってしまう

写真3〜5 ソースモニターの表示カラースペースをRec.2020(左)、レコードモニターの表示カラースペースをRec.709(右)にして同じクリップを表示した。右側のモニターは、色域外色のクリップによって、表示色がかなり変わってしまう

 実はCG318-4KのRec.709色域外警告機能にも、同様に色域外色をクリップして表示するモードがある。
 こちらの警告機能も警告モードを “クリップ” に切り替えると、Rec.709色域外の色が、Rec.709域内に収まるよう変換され、結果モニターの色みが濃くなったように表示される。

 ちなみにCG318-4KのRec.709色域外警告機能は、EIZOとIMAGICAによって共同開発されたものだ。4KコンテンツとHDコンテンツの混在が常態化する将来、この警告機能はマスターモニターの必須機能になるだろう。

 ところで、Rec.2020色域で撮影された素材を、Rec.709基準をクリアーするために色変換する場合、上のRec.709域外色のクリップや、前回紹介したカラースペースのリマップでは、変換後とオリジナル素材とではコンテンツの色みが大きく変わってしまう。

 Rec.2020→Rec.709色域変換を行うには、LUT(LookUpTable:色変換用参照テーブル)を用いる方法が一般的だ。MCにも、同様の処理を行うLUTエフェクトが備わっている。だが、LUTで機械的に変換できるほどカラースペース変換は単純な作業ではない、というのが筆者の実感だ。

 写真6は、色域変換後のRec.709表示のモニター映像の色みと、オリジナル映像が映し出されたRec.2020表示のモニター映像の色みの間に、視覚的な違和感が起こらないようMCのカラーコレクション機能で色補正を行ってみたものだ。

写真6 モニターの表示カラースペースはそのまま(左:Rec.2020、右:Rec.709)に、MCのカラーコレクションによって、視覚的に違和感がないように色変換を行ってみた

写真6 モニターの表示カラースペースはネイティブのまま(左:Rec.2020、右:Rec.709)に、MCのカラーコレクションによって、視覚的に違和感がないように色変換を行ってみた

 MCのカラーコレクションモードでは、モニターはレコードモニターの表示カラースペースを継承する。そこでこのカラーコレクションは、ソースモニターの映像とカラーコレクションモードのコレクション結果を見比べながら行った(写真7、8)

 4K放送したコンテンツをHDコンテンツに変換したり、Rec.2020色域で撮影した映像素材をHD放送で使用するような場合、このサンプルのように、コンテンツの色域を威嚇的に違和感がないように変換する作業が必要だと思う。

写真7、8 MCのスポットカラーコレクションによって、赤みが著しく異なる箇所の色を補正してみた。中央モニターが修正中のカット(上が修正前、下が修正後)

写真7、8 MCのスポットカラーコレクションによって、赤みが著しく異なる箇所の色を補正してみた。中央モニターが修正中のカット(上が修正前、下が修正後)

 このような細やかなカラーコレクション作業では、このMCのソース&レコードモニターのように、異なるカラースペース表示の映像を比較表示できる環境はとても作業がやりやすいと感じた。

 そもそもMCではPCモニターの色みだけでカラコレを行うことは絶対NGだ。それはPCモニターの表示色がまったく信用できないからに他ならない。
 それがPCモニターをCG318-4Kのようなカラーマネジメントされたモニターに替えるだけで、上のような大変パワフルな作業環境が実現できる。実際に作業を行ってみて、その便利さをあらためて再認識させられた。

CG318-4Kによる4K/60pフルスクリーン再生

 そしてもう一つ、MCにはフルスクリーン再生という大変便利な機能がある。これは、ソースあるいはレコードモニターにロードしたシーケンスやクリップを、PCモニターの画面いっぱい(=フルスクリーン)に再生表示する機能だ。オフライン編集において、システムにプレビュー用外部モニターがない場合に、このフルスクリーン再生によって大画面プレビューが行える。

 フルスクリーン映像は、表示サイズやリフレッシュレートを映像を映すPCモニターの性能に合わせ、アプリケーションが自動調整して表示する。

 Avid Technologyによると、フルスクリーン再生時のパフォーマンスは編集マシーンのハードウェア性能にのみ依存するという。つまり、今回のレビューで使用したNvidia Quadro K6000/K5200+CG318-4Kのように、4K/60pの再生能力をもつシステムなら、フルスクリーンの4K/60p映像のプレビュー再生が行える。

 フルスクリーン映像の画質は、タイムラインウィンドウ左下部の “ビデオクォリティメニュー” から、フルクォリティ/ドラフトクォリティ/ベストパフォーマンスの3段階で切り替えられ、さらにフルクォリティ表示では10ビット出力にも対応する。しかも4K対応のMCでは、フルスクリーン再生においてもモニターの表示カラースペースが選択できるようになった。

 と、こうなればCG318-4KによるMCのフルスクリーン再生は、もはやプレビューのレベルを超え、4K/60pマスターモニタリングとして充分に機能するはずだ。

 実際にCG318-4Kでフルスクリーン再生を併用しながら編集作業を行ってみた。

 シングルモニター(=PCモニターが1つ)のシステムでは、頻繁にフルスクリーン再生に切り替えるより最終的なプレビューでフルスクリーン再生に切り替えるほうが、編集作業の流れは良い。
 しかも通常表示でもソース/レコードモニター、カラーコレクションモニターが設定したカラースペースで表示されるので、映像の表示色に関してストレスは感じられなかった。オフライン編集ならまったく問題ない使い勝手だ。

 だがオンライン編集の場合、従来のシステム構成(マスターモニター+編集モニター)と同じほうが使い勝手がよい。そこでオンライン編集システムでは、CG318-4Kあるいは系列のCG248-4Kをデュアルモニター構成にして、一方のモニターをフルスクリーン再生専用にすると良いだろう。

 デュアルモニター構成のノンリニア編集システムでは、左右のモニターの色が全然違っていることはまったく珍しくない。だがCG318-4Kなら複数のモニターの表示色を一元管理できるので(ColorEdgeシリーズの特長)、左右モニター映像の色の違いにウンザリすることからも開放されるはずだ。デュアルモニター構成のMCシステムについては、いずれの機会にあらためて紹介したい。

 言うまでもなく、フルスクリーン再生のパフォーマンスは、モニター性能よりもストレージの転送レートやCPUパワーのほうが強く依存する。
 今回のレビューで使用したマシーン(HP z820)では、ストレージにシングルSSD(転送レート:約260Mbps)を使用した。このストレージ構成では、残念ながらフルクォリティまたは10ビットフルクォリティで4K/60pフルスクリーンプレーバックを行うと映像にコマ落ちが発生してしまうので、今回はフルスクリーン60p再生の体感はできなかった(写真9)

写真9 MCのフルスクリーンプレーバック再生は、ハードウェア性能に強く依存する。今回のレビューでは、借り受けた映像素材をすべてDNxHR SQ/HQに変換し、それをSSDシングルストレージに保存した。Ultra HDサイズのシーケンスなら、再生クォリティをドラフトクォリティにすることで、再生に支障のないパフォーマンスで編集作業が行える

写真9 MCのフルスクリーンプレーバック再生は、ハードウェア性能に強く依存する。今回のレビューでは、借り受けた映像素材をすべてDNxHR SQ/HQに変換し、それをSSDシングルストレージに保存した。Ultra HDサイズのシーケンスなら、再生クォリティをドラフトクォリティにすることで、再生に支障のないパフォーマンスで編集作業が行える

 なお、今回のストレージ構成レベルでも、映像の再生クォリティをドラフトクォリティにすれば、映像の圧縮率がDNxHR SQのUltra HD(3840×2160)シーケンスを編集可能なレスポンスでフルスクリーン再生可能だ(写真10)

 レビューで使用しているモニターフルスクリーン映像は、すべてMCのフルスクリーンプレーバック映像を撮影したものだ。レコードモニターとフルスクリーンプレーバック再生のカラースペースを同一にしておけば、通常編集モードとフルスクリーンプレーバックモードを切り替えても色が変わることはない(写真11)。画質はマスターモニターとして充分なクォリティだ。

写真10 タイムライン左下にある、ビデオクォリティ切り替えメニュー。再生クォリティの切り替えは、映像のディテールや緻密さに影響するが、色情報については大きい差は生じない。したがって、フルクォリティの代わりにドラフトクォリティを選択しても映像のカラーコレクションはそれほど支障なく行える

写真10 タイムライン左下にある、ビデオクォリティ切り替えメニュー。再生クォリティの切り替えは、映像のディテールや緻密さに影響するが、色情報については大きい差は生じない。したがって、フルクォリティの代わりにドラフトクォリティを選択しても映像のカラーコレクションはそれほど支障なく行える

写真11 フルスクリーンプレーバック設定のカラースペース設定。フルスクリーンプレーバックでも、カラースペースを切り替えて映像が表示可能になっている

写真11 フルスクリーンプレーバック設定のカラースペース設定。フルスクリーンプレーバックでも、カラースペースを切り替えて映像が表示可能になっている

 以上、レビューではシステムのPCモニターをカラーマネジメントモニターに替えるだけで、シンプルながら大変パワフルなノンリニア編集システムが構築できることが明らかになった。今回の方法は、ノンリニア編集システムのシステム構築の際、1つの方法として活用できそうだ。

 なお、このCG318-4Kのレビューは筆者の熱烈なラブコールによって実現した。筆者の願いを聞き届けて下さった、ビデオα編集部、エルザジャパン株式会社、そしてEIZO株式会社のみなさんに、ここでお礼を申し上げます。

価格:オープン(EIZOダイレクト販売価格;¥54万/税込)
発売:2015年3月20日
問い合わせ先:EIZOコンタクトセンター TEL 0570-200-557
URLhttp://www.eizo.co.jp/products/ce/cg3184k/(製品情報)
   http://www.eizo.co.jp/support/db/products/model/CG318-4K#tab01(機種別情報)


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