ソニーPXW-X180〜光学25倍ズームレンズ搭載のXDCAMハンディカムコーダー


 

 XDCAM HD422ハンディカメラの入門機に最適であったPMW-160の後継機として、PXW-X180およびPXW-X160が8月より発売されている。

 最近のハンディカメラ事情では、20倍ズームは珍しくなく、より小型化が図られていたり、あるいは超解像度で倍率を延ばすなど、新しい傾向が出始めている。PXW-X180とPXW-X160は、25倍ズームレンズを搭載し、MPEG HD422/HD420、XAVC Intra422/Long422、そしてAVCHDを記録できるマルチフォーマットハンディカメラだ(写真1、2)。PXW-X160は、PXW-X180からWiFi機能やPROXY(プロキシ)記録機能を割愛した姉妹機で、NXR-NX5Jの後継機でもある。

 本稿ではPXW-X180について、新機能中心に試してみたい。

ハンディカメラとしては比較的大きなサイズ

 PXW-X180は、ハンディカメラとしては比較的大きいという印象を受ける。記録メディアを挿入するボディ後部全体が幅広くなったことから感じられるものだろうか。
 そこには、SxSメモリーカード×2、ユーティリティ用SDメモリーカード×1、PROXY映像記録用SDメモリーカード×1のスロットのほか、各種入出力端子が配置されている(写真3)

 

 実際に持ってみると、やはり外観の印象どおりズッシリと重い。PXW-X180は基本的な撮影時のセット(本体2.7kg、レンズフード、アイキャップ、バッテリーパックBP-U30、SxSメモリカード1枚)で3.2kgとなる。
 たしかにPMW-300Kよりはかなり軽いが、PMW-160に比べると500gほど重く、縦横とも20mmほど大きくなって、長時間ハンディで撮影するには、少し覚悟が必要かもしれない。

広角26mm/光学25倍の新開発ズームレンズ

 PXW-X180のカメラ部は、撮影素子に1/3型フルHD Exmor 3CMOSを採用しており、感度F9、SN比60dBとクラストップだ。
 また、新開発されたGレンズは、35mm換算26.0〜650mmという広角寄りの25倍ズームレンズとなっている。マクロ機能ON時のフォーカス範囲は、広角側で10mm、望遠側で800mmと、とても使いやすい(写真4〜6)

 フォーカス、ズーム、アイリスのレンズリングは独立しており、フォーカスリングを本体側(後方)にスライドするとFull MFモード(オレンジのラインが出る)、逆に前方にスライドするとMF/AFモードになる。

 Full MFのとき、フォーカスリングはショルダーカメラと同じように、回転範囲の終わりで回転が止まる「フルマニアルリング」となり、ピント位置を感覚的につかむ使い方もできる。マニュアルフォーカスをベースに、オートフォーカス機能も使用したい方は、MF/AFモードを選択するとよいだろう。

記録フォーマットと対応メディアについて

 PXW-X180が対応している記録フォーマットは、XAVC-Intra422、XAVC-Long422、MPEG HD422、MPEG HD420、AVCHD、DVCAMと多岐にわたる。
 また記録メディアは、SxSメモリーカードのほか、カードアダプターを利用することで、SDメモリーカード、MS(メモリースティック)、XQDメモリーカードを使用することが可能だ(SDカードアダプターMEAD-SD02は、PXW-X180に1つ同梱されている。写真7)。

 

 しかし、それぞれの記録メディアによって、対応する記録フォーマットが異なるので確認が必要だ。一部の撮影機能についても記録メディアによっては制限が出てくる場合がある(表1)

 SxSメモリーカードには、XAVC-Intra422を初め、XAVC-Long422、MPEG HD422/HD420が記録可能。64Gバイト使用した場合、XAVC-Intraモードの1920×1080/60iならば60分記録できる。また、カードアダプター+SDXCメモリーカード(Class 10)なら、XAVC-Long422、MPEG HD422/HD420、そしてAVCHDの記録が可能だ。

 メモリーカードスロットはAとBの2基。それぞれに挿入し、同時・個別・リレー記録ができる。さらに、PROXY映像記録用のSDメモリーカードスロットが別に用意されており、PROXY映像(MP4)をSDHCメモリーカードに記録することができる。

 これはとても便利な機能である。PROXY映像についても、1280×720(9Mbps)、640×360(3Mbps)、480×270(1Mbps)、480×270(0.5Mbps)から解像度を選択できるので、転送して確認するなど使用用途は広い。

 

 SxSメモリーカードは、記録最中に電源トラブルなどでカード内のデータに異常が生じた場合でもサルベージ機能により、カードを修復することができるのだが(一部復元できない部分あり)、少し高額である。

 これまでもSDカードアダプターなどが使え、コスト面での選択肢はあったが、記録フォーマットに制限があった。今回、SDカードアダプターを使っての記録がXAVC-Intra以外すべて記録できる仕様になっており(SDXCメモリーカードの場合のみ)、大変喜ばしいことである。

 だだし、SxSメモリーカードとSDカードアダプター+SDメモリーカードを混合して使用することはできないので注意が必要だ。ABスロットには、同種類の(SxSメモリーカード×2あるいはSDカードアダプター+SDメモリーカード×2のように)カードを入れないとRECできない仕様となっている。

LCD/VFの高精細化とフォーカスアシスト

 PXW-X180をスタンバイ状態にしてすぐに目につくのは、LCDモニターがさらに高精細になった点である。3.5型156万ドットになり、これまでとは明らかに見え方が違っている(写真8)。モニター表示の文字がクリアーになったのを初め、遠景のピンやディテールまで、鮮明に見える。小さな文字もよく見えるので、つい沢山の情報を画面に出してしまいがちである。

 グリップ部分に配置されているアサインボタン7には、画面中央が2倍に拡大されてフォーカス合わせが楽になるFOCUS MAGNIFIER機能がデフォルトで割り当てられているのだが(写真9)、使わなくてもフォーカスは充分に合わせやすくなっている。

 また、VF(ビューファインダー)も0.5型236万ドットの有機ELになり、屋外での撮影も安心して覗けるのはもちろんのこと、手持ち撮影時にもVFを多様したくなるほどよく見える。サイズも大きくなって全体として使用電力が上がったためか、アイキャップから目を離すとVFがOFFになるセンサーが付いていて、省エネにも配慮されている。

 フォーカス補助の機能としては、前述のFOCUS MAGNIFIERのほか、押している間だけオートになるワンプッシュAFも踏襲。そのほかにも、オートフォーカス時に、一時的にリングを回して手動でピンを合わせることができるAFアシストという機能が加わった。オートフォーカス時、急にピント追従がはずれたときなどに役に立つだろう。

 また、フォーカス補助としてのピーキングも見やすくなっており、新しくフォーカスアシストバーの表示機能も追加されいる。

バリアブルNDフィルター

 晴天時の屋外撮影で欠かせないNDフィルターに、これまでの3つのプリセット(1/4、1/81、1/16、1/32、1/64、1/128から任意選択できる)に加えて、リニア可変機構が加わった。本体側部のダイヤルで1/4〜1/128の間を可変できるものである(写真10、11)。被写界深度をそのままにアイリスの感覚で、 明るさの調整ができるのは、本当に素晴らしい。

 技術は必要だが、極端に明るさの違う被写体間のアップぎみでのパンなど、リニア可変なのでさまざまな状況で活用できそうである。

WiFi機能とMIシューの搭載

 PXW-X180では、ようやくWiFi機能が内蔵となった。これまで別売だったWiFiモジュールを格納部のUSB部に挿すことによって、AP(アクセスポイント)モードとステーションモードに対応(写真12、13)。ライブビューをスマートフォンなどでモニターしながらのリモート(画角/ホワイトバランス/アイリス調整)ができたり、PROXYデータやメタデータの送受信ができる(写真14)

 Content Browser Mobile(Google PlayやApple App Storeより無料ダウンロード)を使うと比較的簡単にセットアップ可能だ。NFC(近距離無線通信)に対応しているので、ワンタッチでモバイル端末と接続することもできる。

 また、マルチシューインターフェース(MIシュー/フロントのみ)が装備され、対応アクセサリーLEDライト(HVL-LBPC)やワイヤレス受信機などを、カメラのON、OFFやRECのスタート、ストップに連動させることができる(写真15)

 ちなみにPXW-X180と同時に発売されたHVL-LBPCは、HVL-LBPBの後継機で明るさ調光+色温度の調光(3200〜5600K)ができるようになっている。

 通常この手のLEDライトでは、色温度別のLEDを使うため同等数のランプを有するLEDライトよりは最大輝度が損なわれるのだが、HVL-LBPCにはBOOSTERモードが搭載されており、集光レンズ使用時で2100 lx(距離1m、照度最大)をキープしている(ただしBOOSTERモード時は色温度調節は不可となり、約4800Kに固定される)。

 照射角度も広く (約3m離れて横約4mほど)、カメラバッテリーU/Lシリーズ(BP-U60/U60T/U30、NP-F970/F770)が使え、カメラマウント以外でも使いたくなるLEDライトである(写真16〜18)

改善/踏襲されたもの、残って欲しかったもの

 改善されたものというには微妙だが、リモート端子がミニミニジャック(φ2.5㎜)のLANCになったのは、LANCのリモート愛用者にはうれしいことである(PMW-160用に丸形8ピンリモートを購入された方には残念なのだが…)。

 ズームレバーの位置が左手でも操作しやすい位置に変更になった点は評価できる。ATW(自動追尾ホワイトバランス)は反応が良くなり、デフォルトではホワイトバランスメモリーのBにセットされている。

 また、通常ではRECを押す度に生成されるクリップを、1つのまとまったクリップとして収録できるクリップコンティニアンスRECのほか、ライブ系のステージ(社長講談なども含む)でスポットが当たって白飛びが激しくなるときや、逆光でも(アイリスオートモードで)撮らなくてはならないときなどに、白飛びや黒の沈み込みを軽減してくれるスポットライトモード、バックライトモードが踏襲されているのはうれしい。

 そのほか、手振れ防止も使いやすくなっている。最近は、極端に補正するものもあるが、アクティブモードも含めとても柔らかく効く味付けになっており、望遠側で震えるブルブルを適当に軽減する使い方ができる。三脚のグレードにもよるが、三脚に載せたら手ぶれは切るというセオリーは、過去のことかもしれない。

 割愛された部分は、細かいところだが、最高15秒前からRECしてくれるキャシュレック、同ポジセットが簡単に再現できたフリーズミックス、インターバルレックなどで、企業映像分野としては少し残念である。

 同じくオーディオの4ch記録もなくなり、たしかに使用頻度は少ないかもしれなかったが、外部マイク2本を1ch、2chにインナーカメラマイクで環境音を3ch、4chにという使い方はできなくなった。

 また、LCDに表示している項目について設定値を変更したい場合など、メニュー画面に戻らなくても、ダイヤルセレクトボタンを押すことで、ダイレクトメニューとなる機能もなくなっている。

ピクチャープロファイルについて

 これまでのピクチャープロファイルは、Paintメニューとして通常のMenuの一覧になった。マトリックス、ホワイト、ディテール、スキントーンディテール、アパチャー、ホワイトクリップ、ガンマ、ブラックガンマ、ローキーサーキュレーションなど、沢山の設定項目はあるが、分かりやすさは踏襲されている。

 また、これまでのピクチャープロファイルは、カメラ内に6タイプ登録できたが、PXW-X180ではSDメモリーカードにカメラの設定値をすべて登録する仕様となっている。

 プロの現場では必須のピクチャープロファイルだが、ノンカメラマンの方は、少しずつマスターされることをお勧めしたい。ソニーWebサイトのカメラ機能活用集に設定サンプル値が掲載されているので、参考にしてはいかがだろうか(http://www.sony.jp/products/Professional/c_c/creative_shooting/)。

 PXW-X180は、コンパクトと呼ぶには少し重いのかもしれないが、XAVCに対応したマルチフォーマットカメラの定番になりそうなカメラである。1人制作が増えている現場で、このモニター(LCD/VF)の解像度は、とてもありがたい。映像フォーマットの統合ではなく、ビデオカメラの統合の可能性を感じるさせる。

 モニター、レンズ、記録部の進化とデジタル高機能部の取捨選択を巧みに組み合わせ、少しプロ向けに映像表現の幅を拡充させたカメラとして、PXW-X180は企業映像の分野でも重宝される1台となるのではないだろうか。

 アマチュアの方と使用機材が混在する業務用というカテゴリーでも、プロとしての技術が問われる瞬間がある。さらなる高みのステージへ楽しみながら精進したい。

価格:¥60万(税別)
発売:2014年8月21日
問い合わせ先:ソニー 業務用商品相談窓口 TEL 0120-788-333
URLhttp://www.sony.jp/xdcam/


About 井上尋夫

国際企業映像協会(ITVA-日本)第11代会長(1982年設立の国際企業映像協会は、企業内映像担当者を中心に組織される団体)。(有)毎企画 制作プロデューサー。1995年設立の(有)毎企画で、企業用映像中心に映像社内報から教育・製品PR・リクルート・会社案内等の映像制作、HP制作、コンサルティング、育成セミナーまで幅広く活動中。 ■主な制作先: 横浜銀行、千葉銀行、三井住友信託銀行、オリエントコーポレーション、IHI、三井生命、全薬工業、相鉄フォールディングス、日本クレジット協会、SMBCコンシューマーファイナンスほか

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