3つの動作を手に入れた、新スタイル三脚システム平和精機工業 Libec ALLEX


 こんにちはっ! 月刊 HD Usersでコメンテーターを務めている有限会社マキシメディアの井上です。この度、ビデオαさんとご縁ができまして、記事を執筆させていただけることとなりました。これからさまざまな製品を月刊 HD Usersだけでなく、ここビデオα Webでも紹介したいと思いますので、今後ともよろしくお願いします!

 さて、初めての記事は、Libecブランドで知られる平和精機工業が、この7月から出荷を開始した「3つの動作を手に入れた、新スタイル三脚システム」『Libec ALLEX』をご紹介しましょう。

 Libec ALLEXは今年4月のNAB Show 2014で発表されるやいなや話題となった、ヘッド、トライポッドといった従来からある三脚セットに、三脚メーカーが自ら開発したスライダーを組み合わせ、文字通りパン、ティルト、スライドといった3つの動作を手に入れた新スタイルの三脚システムです。

 このスライダーという機材は映像にジワっとしたアクセントを手軽に与えることができるため、DSLR撮影の盛り上がりとともに流行しはじめた特機機材ですが、これまでは、GLIDETRACK、VARAVON、edelkroneなどのメーカーが特徴のある機材を発表してきました。

 ただこれらのメーカーさんはどこも三脚メーカーではなく、そのスライダーを「どのように固定して」「どのようにカメラを乗せるのか」ということが悩みの種となる場合がありました。スライダーもそのままでは単なるレールでしか過ぎません。使用したい高さにセットしたいとか、ある程度のカメラワークをするためにヘッドを搭載したいとか、理想的な撮影スタイルを実現するためには新たなアクセサリーを購入しなければならないケースもあるなど一筋縄ではいかない場合もあります。

  これを一気に。そしてスマートに解決しようというのがこのLibec ALLEXという新スタイルの三脚システムなのです。

 Libec ALLEXはこれまでの三脚セットである、ヘッドとトライポッドの組み合わせに、スライダーまで標準のセットとして組み合わせることによって、文字通りパン、ティルト、スライドといった3つの動作を有機的に結びつけました。しかも撮影シーンに応じてヘッド、トライポッド、スライダーを自在に組み合わせることで、柔軟で自由な撮影スタイルを構築できるなど圧倒的な利便性を実現した三脚システムなのです。

フラットベースの超軽量ヘッド『ALLEX H』

 さて、ではALLEXを構築する3つの要素をそれぞれ見ていきましょう。まずはヘッドの『ALLEX H』。ALLEX Hは75mmボールヘッドを持ちながら、フラットベースヘッドとしても使えるデュアルヘッド構造が大きな特徴のヘッドです。

 ALLEXシステム自体は2年前の発表以来人気機種となった同社のRSシリーズより少し下のポジションに位置付けられており、RSシリーズのアルミダイカストボディから強化プラスチック製の外装となり、またRSシリーズからの売り物であった無段階カウンターバランスは固定バランス、そしてトルク切り替えも固定と省略されています。ですがその分従来モデル(LS-22DV)から約20%も軽量化され、その質量は約1.3kgを実現しました(パン棒含む)。その重量はまさに軽く、手に取ると「おっ」という声が出るほどです。この軽量なヘッドであるにも関わらず、動作は実にスムーズでガタツキは皆無といってよいでしょう。

 そのほかにも使い勝手を良くする装備は多く、水準器はLED照明を装備して暗所での作業性を向上させたほか、RSシリーズと共通のスライドプレートはワンタッチでサイドから着脱できるうえに、その着脱ノブはチルトロック、パンロックがある左側面にまとめられており、操作性への配慮も抜かりありません。

 そしてALLEX Hの最も特徴的なのがボールヘッド部分。従来型のヘッドはボールヘッド部分にヘッドを止めるネジが埋め込まれていたためフラットな底部になりようがありませんでしたが、発想を逆転してネジを締め付けハンドルの方に持たせることによってフラットな底面を実現しました。こうすることによってボールベースタイプのトライポッド、フラットベースタイプのトライポッドのいずれにも簡単に装着ができるデュアルヘッド仕様となりました。トライポッドだけでなくスライダーやドリーなどへも簡単に取り付けが可能な構造となったのです。

 そのALLEX Hの最大搭載重量は3kgまで。ソニーHXR-NX5Jなどに代表される重量3kg前後のハンドヘルドカメラよりも、もう少し一回り小さいキヤノンXA20/25、XF205といった重量2kg以内程度の小型ハンドヘルドカメラにこそ『ALLEX H』は相応しいといえるでしょう。

 ヘッド単体『ALLEX H』の標準価格は¥2万8000(税別)となっています。

75mmボールベーストライポッド『ALLEX T』

 重さ約2.5kgとこれまた軽量でありながら、脚を束ねるボールベース部分の形状をより剛性の高い物に変更することによって、従来型の小型三脚を上回る捻り剛性を獲得したトライポッドが『ALLEX T』。

 3段伸縮式で脚の最下段と中段にはシングルパイプ、最上段にはツインパイプを配置し、ヘッドのALLEX H込みの伸縮長は最小74.5cm〜最大164.5cmとなります。また、従来より伸縮長が大きいミッドスプレッダーが標準装備され、大きく開脚した時の安定性も向上しており、スパイクと一体型で大きめのフットパッドもガッチリと地面を捉え安定性の向上に寄与しています(ただ残念ながらグランドスプレッダーの設定はない)。

 ちなみにALLEX HとALLEX Tを組み合わせたのが、『ALLEX KIT』。専用ケースRC-20が付属しての標準価格は¥5万(税別)となっています。

トルクをもったスライダー『ALLEX S』

 おそらく三脚メーカーとしては、世界初のスライダー製品化となる『ALLEX S』。また本機は三脚まで込みでシステムアップを考慮されたスライダーとしても、世界初といえるでしょう。708mmの動作長を持つスライダーALLEX Sには三脚メーカーとしてのさまざまな工夫が込められています。

 まずは、特徴的な粘りとトルクをもったスライダープラットフォーム。高精度ボールベアリングが合計8個装着され、さらにベアリング内部に特殊グリースを充填。滑らかで粘りのある動作がコントロール性を高め、素晴らしいスライディングショットを可能にしました。レール上面と背面斜めの角度からベアリングで挟み込む構造で、経年劣化によるガタツキも最小限に抑えられるとのことです。スプリングが内蔵されたフリクションつまみによってスライダープラットフォームを動かすトルクの微調整も可能であり、スライダーを縦方向にセットして上下方向のスライディグショットも安心して可能です。

 また特筆すべきは、そのレールの剛性。700mm前後くらいの動作長を持つスライダーの場合、中央部分において捻り剛性の不足、つまりカメラの横揺れを抑えきれない場合が多々あるのですが、ALLEX Sはそんな剛性不足を微塵も感じさせない剛性を誇っています。

 水準器も装備されており、レベリングを調整可能な脚と共に置いた状態でのセットも手早いですが、レール下面には三脚取り付けアダプターがセットされており、簡単にALLEX Tの上にセットが可能です。ここが並みのスライダーと違う所で、置き設置、三脚上設置がスムーズにこなせるところが、三脚メーカー製のシステム三脚の一部であることの証明といえるでしょう。

 脚は約180°開閉が可能なため、取り外さずにそのまま専用キャリングケースへ収納することが可能です。

 『ALLEX S』の標準価格は¥6万(税別)。そしてALLEX H、ALLEX TにALLEX Sを組み合わせたALLEXフルキットといえる『ALLEX S KIT』は標準価格¥10万5000円(税別)となります。

3つの動きでALLEX

 やはり、最後はすべてを組み合わせた状態でのインプレッションを語らずには終われないですよね。これはもう絶妙といってよいでしょう。まずスライダーの操作性。どうしてもスライダーはスムーズにスライディグさせるには、かなり熟練を要しましたが、ALLEX Sにそんなものは必要ありません。買ってすぐスムーズで思い通りのスライディグが可能です。このトルクがあるスライディング感覚は驚きといっていいでしょう。

 またALLEXがスライダーまで込み込みのシステム三脚だということがよく分かるのが、スライダーとパン、ティルトの動作を組み合わせたときです。パン、ティルトの動作感覚とスライダーの動作感覚の一致感は素晴らしく、まるでその3つの動作が最初から当たり前であったような自然な操作感。これはまさに新感覚スタイルの三脚システムといえるでしょう。

動画1 実際にALLEX S KITを使用して筆者が撮影した映像

 ALLEXは実はトータルの重量もとても軽く、気軽にどこへでも持っていけます。また近年機種が増えつつある1〜2kgのビデオカメラやDSLRにもベストパートナーといえますね。トータルの機材重量の削減にも大いに役立つことでしょう。

 このALLEXが日本のメーカー平和精機工業製であることも大きなメリットといえます。日本国内に生産工場があると修理対応の素早さであるとか、保守部品の送付が早いとか、よい面がたくさんあります。ALLEXはそのメイドインジャパンのこだわりをたくさん持って生まれてきました。日本のビデオ用システム三脚といえば、『Libec ALLEX』そういわれる日も遠くないんじゃないかな…などと思えてしまうほどに。

  • 価格:ALLEX H;¥2万8000(税別)、ALLEX S;¥6万(税別)、ALLEX T;¥2万8000(税別)、ALLEX KIT;¥5万(税別)、ALLEX S KIT;¥10万5000(税別)
  • 発売:2014年7月22日
  • 問い合わせ先:平和精機工業 TEL 048-995-1301
  • URL:http://www.libec-global.com/products/allex/overview.html

平和精機工業 Libec ALLEX PV


About 井上 晃

有限会社 マキシメディア 代表取締役

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