キヤノンXF205〜20倍ズーム&回転グリップ搭載 業務用デジタルビデオカメラ


 MXF4:2:2/50Mbpsで収録できる業務用ハンディビデオカメラのXF105の上位機種として、20倍ズームレンズを搭載し、高画質と機動性を両立させたXF205が発売される。その新機能を中心に試用してみた。

必要最小限のコンパクト

 まず感じるのは、本体のコンパクトさとキヤノン独特の高質感を感じる本機表面の仕上げだ。コンパクトといっても、もちろん家庭用ハンディタイプと同サイズのXA25や、XF105に比べれば約8.5cmほど大きくなっている。上位機種のXF305よりは、約9.5cmほど小さい。しかしそこには、フォーカス、ズーム、アイリス3本の独立レンズリングが搭載され、操作上でのダイレクト感向上が図られている。

 奥行353mm、質量1960g(レンズフード・マイクフォルダーユニット・アイキャップ・グリップベルト・BP-955・CFカード1枚・SDカード1枚を含む)の本体が数字より、軽量に感じるのは、新しく搭載された回転式のグリップの形状が妙に手にフィットするからかもしれない。ダイレクト感を始め、求められる機能を必要際最小限に詰め込んだ感じだ。搭載されている20倍ズームレンズは、35mm換算で26.8mm(F1.8)〜576mm(F2.8)と、他の業務用ハンディと同様に、かなり広角側に振ったズームレンズである(防振Dモードの場合や、ワイド画角設定OFF時は28.8mm)。他社と比較してもかなりコンパクトなカメラとなっている。

今回は、3枚挿し同時録画

 記録フォーマットは、CFカードにMXF形式として4:2:2/50Mbpsを始め、4:2:0/35Mbps、4:2:0/25Mbpsのビットレートと1920/1280/1440の解像度、59.94i/59.94p/29.97P/23.98pのフレームレートの全16種類と、SDカードにMP4形式として35Mbps/24Mbps/17Mbps/9Mbps/3Mbpsのビットレートと1920/1280/640の解像度、59.94p/29.97p/23.98pのビットレート、256kbps/128kbpsの音声のビットレートの全8種類である。

 今回なんとCFカード2枚による連続記録/同時記録はもちろん、CFカード2枚(MXF動画)とSDカード1枚(MP4動画)による3枚同時記録も可能である。CFカードとSDカードの同時記録の場合、MP4の記録方式は、MXFのフォーマットに合わせ自動的に変わるものと、FTP転送用3Mbps/640×360/29.97Pが選べる。また連動させないでSDカードを独立させれば、アサインボタンに登録することにより簡単に常時録画のバックアップとして作動させることもできる。

今回、CFカードにMXF(4:2:2/50Mbps)と同時にSDカードにMP4(3Mbps/640×360)を収録したが、転送確認用とされる3MbpsのMP4は、確認用には充分に奇麗な画質である

基本性能

 XF205の基本性能としては、まず有効画素291万画素1/2.84型のHD CMOS PROセンサーと、映像処理プラットフォームのDIGIC DV4エンジンの組み合わせにより、最低被写体照度0.095lxの高感度を実現(マニュアル時、フレームレート60i、ゲイン33dB、シャッタースピード1/4秒時)していることが挙げられる。

 光学20倍ズームレンズは、ズーミングに伴う移動レンズ群の1つが光学式手振れ補正機構を兼ねる3次元リアルタイムレンズと呼ばれる機構を採用しており、防振性・小型化・高倍率化・ズーム速度などの向上を高めている。ゲインは、−6〜27dB、33dB(メニューによって3dBステップと0.5ステップに切り替えあり)、NDフィルターはオート時に1/2、1/4、1/8が自動で挿入されるグラデーションND。ゼブラ表示については、設定を<ゼブラ1>70%±5%/75%±5%/80%±5%/85%±5%/90%±5%/95%±5%(6種)と<ゼブラ2>70%以上/75%以上/80%以上/85%以上/90%以上/95%以上/100%以上(7種)の中から選べ、同時表示も可能となっている。

 また、フォーカスリミットをONにすることにより、テレ側〜ワイド側まで最短撮影距離が60cm。OFFにするとワイド側で最短撮影距離が1cmまでとなり、狭い場所や接写時の画づくりや望遠によるボケなど多彩な画づくりに対応している。さらに、EFレンズで培った技術を展開した円形8枚絞りは、夜景のイルミネーションなどの点光源や、ボケ味を美しくするのに貢献している。Hi-UD(異常低分散ガラス)などの高性能硝材を用いるこにより、各種収差を抑え、全ズーム域で高解像度、高コントラストな映像撮影を可能にしている。

機動性の追求

 握った感触が良いXF205のグリップは、水平から15°の段階付きで、120°まで回転する。光軸回転補正、縦回転補正、水平回転補正の5軸の光学式手ぶれ補正(新ダイナミックIS)と相まって、歩きながらの撮影に威力を発揮する。

グリップは、水平から15°の段階付きで、120°まで回転する。今回、回転グリップが妙に気に入り、つい手持ちばかりで撮影してみた。後から見直すと微妙に揺れていて、三脚を使えば良かったと反省

 

 目の高さから少し下ろし、胸の前で構えると、3.5型123万画素(WVGA)高精細有機EL液晶モニターと組み合わせは、非常に納まりが良い。有機ELは1:1000のコントラストで、ピーカン時以外の屋外では非常に見やすく色の再現性も良い。

 68°まで跳ね上がるファインダーは、0.45型123万ドットの高精細と広視野角28.2°を達成しており、急にファインダーを覗いても、視野による違和感は無く、明るい屋外での機動性を助けてくれる。2kgを切る軽さもあるのだろうが、長時間の手持ちでも手首を始め、どこにも余計な負荷が掛からないようだ。それでいて非常にスムーズに動ける。なぜか嬉しくなってなんでも手持ちで撮りたくなる。まさに機動性を感じる要因としては、大きい機能だと思う。

 よく見るとRECボタンが3個付いている。通常のグリップ部とハンドル部の他、前方下に付いたRECボタンは、スタート・ストップ時に力を加えても本体への影響が少なく、手持ち撮影や三脚使用時に重宝する。シーソー式のグリップズームロッカーは、もちろん可変速対応だが、デフォルトのハイスピードは他の機に比べても感度が良いのと、ズームスピードがかなり速い(もちろんハンドルズームロッカーともに、メニューにて可変/固定のスピードを選択できる)。

 このカメラの機動性を重視した使用法(ライブ取材・報道・追従撮影)などでは、威力を発揮しそうである。また、少し残念に思うのは、せっかくの機動性をメニュー変更の煩雑さが邪魔をする場面があるということ。ジョグスティクによる選択や、メニュー登録のアサインボタン14個でメニュー選びの機動性もかなりアップされている。しかし、ON/OFFはできるが、変更はメニューからという項目も少なくない。ぜひ、カメラダイレクト(ホワイト、アイリス、ゲイン、シャッタースピード)みたいに、ジョグスティクを押すだけで、モニター画面に表示されている設定値を直接変更できる項目が増えることを期待したい。

ノーマルISの手振れ補正も使い易いが、新ダイナミックISは、回転グリップと組み合わせるとステディカム風に撮れる

プロが使いこなす高機能コンパクト

 XF205は、プロが使いやすいようXA25で開発されたエンジン部分を含む高機能性に、ダイレクト感を加えて進化させたカメラのように思えた。高機能になったカメラ側が行うオート機能から余分な部分を削ぎ落とし、プロユースの機動性を最優先に組み直した感じである。

 プロの現場で求められるのは、常にベストな映像のみである。いつも機器側が自動で提供してくれれば、これに越したことはないが、ロケの数だけ環境と求められる条件が変わり、機器を使いこなす技術が求められる。機器に求められているのは、ベストな映像を撮影しようとするとき、要求をサポートしてくれる機能だと思う。

 XF205は、プロとアマチュアの使用機材の垣根が消え、双方が使いこなすジャンルを実感できるカメラだと思う。企業映像の分野では、ちょっとお進めの1台といえる。

 4Kをはじめ新しいカメラが次々に登場するなか、これからもプロがプロであるために、なにが必要であるのか筆者も精進していきたい。

後日発売予定の電子書籍版「月刊ビデオα」では、ワイドDRガンマによる表現力や業務用機としての拡張性、音声入力周りなど、XF205のさらに詳しい内容を、テストレポートとして掲載予定です。

 


About 井上尋夫

国際企業映像協会(ITVA-日本)第11代会長(1982年設立の国際企業映像協会は、企業内映像担当者を中心に組織される団体)。(有)毎企画 制作プロデューサー。1995年設立の(有)毎企画で、企業用映像中心に映像社内報から教育・製品PR・リクルート・会社案内等の映像制作、HP制作、コンサルティング、育成セミナーまで幅広く活動中。 ■主な制作先: 横浜銀行、千葉銀行、三井住友信託銀行、オリエントコーポレーション、IHI、三井生命、全薬工業、相鉄フォールディングス、日本クレジット協会、SMBCコンシューマーファイナンスほか

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