Adobe Creative Cloud映像制作ツール次期バージョンについて聞く


 先頃、東京・秋葉原のUDXにおいて開催されたAfter NAB Show Tokyo 2014では、各種最新映像機器の展示が行われるとともに、それぞれのメーカーの最新動向を解説するセッションも数多く行われた。

 今回、同セッションでAdobe Creative Cloud 映像制作ツール次期バージョンを解説するために来日していたPremiere Pro担当の編集部門シニアプロダクトマネージャーAl Mooney氏、After Effects担当のビジュアルエフェクト部門シニアプロダクトマネージャーSteve Forde氏、SpeedGrade担当のAdobe SpeedGrade & Adobe Media Encoder部門シニアプロダクトマネージャーPatrick J.Palmer氏のお三方に、個別に同社の映像制作ツールの新機能についてお話を伺うことができたので、その様子をお届けしたい。

・まず、今回発表されたAdobe Creative Cloud 映像制作ツールのアップデートの概要をお伺いできますか

Al Mooney氏:まずPremiere Proの次期バージョンにおける代表的な新機能として、対象物に正確なマスキングを行って人物の顔やロゴにぼかしを入れる放送局での編集に不可欠なマスク&トラック機能、After Effectsで作成されたテキストアニメーションをPremiere Proから直接編集できるLive Textテンプレート機能が挙げられます。

 マスク&トラック機能では、エフェクトを指定した形状変更が可能な丸もしくは、四角のマスクを対象物に指定し、その対象物の動きをマスクがトレースしていくという機能です。従来のAfter Effectsにも同様の機能がありましたが、今回Premiere Proに搭載されたものは、より編集者の目線で必要となる機能を厳選し、より効率的に処理を施せるシンプルなものとなっています。1つのレイヤーに対し複数のマスクを設定することも可能ですので、人物と車のナンバープレートなど、複数の対象物にボカシを入れなければならない場合など、非常に短時間での処理を実現します。

 つぎに、Live Textテンプレート機能ですが、After Effectsで作成したLive TextテンプレートをPremiere Proで読み込み、そのテキストをPremiere Pro上で変更できる機能です。従来ですとAfter Effectsで作成した企業名や人物名、コメントなどで構成されたグラフィックスに変更が生じた場合、一度After Effectsに戻って修正を行わなければなりませんでしたが、今回搭載されたこの機能により、Premiere Pro上で迅速にテキストの修正を行うことが可能となります。

 我が社では、どの製品に関してもですが、お客様の声を製品に反映していくことに対しとても力を入れております。また、同時に新しいリッチな機能を取り込むことによってさまざまな革新を行っていくということも常に行っており、この両者のバランスをうまくとっていくことが非常に重要であると考えております。そういった意味でも、先ほどご説明しました機能以外にも、地味ながらお客様のご要望に応える形の新機能も今回搭載しております。その1つが逆方向へのトラック選択ツールです。ごくごく地味なこの機能ですが、長年お客様からのご要望が多かった機能で、機能自体は非常にシンプルながらも、1日に何十回も行う作業を楽にすることで、結果的に作業の効率化に大きく寄与するものであると考えております。また、使用している素材からその素材がタイムライン上のどこで使用されているのかが分かる逆マッチフレーム機能の搭載や、タイムライン上のオーディオトラックに追加されたアフレコ用の新しいボタンをワンクリックするだけで、その場でアフレコが可能となったことなども、同様のコンセプトで搭載されたものです。

 最後に大幅強化した部分として、1万クリップを越えるような大規模プロジェクトも容易に取り扱えるようになったことが挙げられます。たとえば、読み込みや書き出しの時間も大幅に短縮されましたし、プロジェクトパネル上で検索したりソートをかけたりするのも、より簡単に高速で行えるようになりました。また、今回新たにソニーのSStPやCanon RAW、Blackmagic Pocket Cameraロスレス圧縮Cinema DNGなどにネイティブに対応いたしました。これからもお分かりいただけるように、世の中に存在するすべてのフォーマットにネイティブで対応するという我が社の姿勢は、誇るべきものであると自負しております。

Steve Forde氏:Premiere Proでは、編集者の方々が高品位なグラフィックスの処理を行うことができるようになりますが、もう一歩踏み込み、さらに洗練された処理を行いたい場合にAfter Effectsを使用していただくこととなります。

 一例として、もともとAfter Effectsに搭載され、今回次期バージョンのPremiere Proにも搭載されるマスク&トラック機能は、After Effectsの機能をすべてそのまま搭載したというわけではありません。あくまで編集者の視点から、日々の業務で必要とされる処理を効率的に行っていくということを主眼にPremiere Proに必要と思われる部分を抽出したものとなっています。ですので、さらに高度な処理が必要とされる場合にはAfter Effectsで処理を行う形となります。たとえばPremiere Pro上では1つのレイヤーに複数のマスクを作成することができますが、1つのマスクに対しては1つのエフェクトしかかけることはできません。これがAfter Effectsになりますと、複数のエフェクトを特定のマスクに適用するということが可能となっています。
 また、Premiere Proで施したマスク&トラック処理をAfter Effectsに取り込み、そこに手を加えて、またPremiere Proに戻すということもスムーズに行えるようになります。これが従来ですと、一からAfter Effectsで作成しなければならなかったので、両ツールの連動によりさらに作業効率が上がるという良い例だといえるでしょう。

 次に、Premiere Proで直接操作可能なテキストアニメーションテンプレートを作成するLive Textテンプレート機能ですが、これはグラフィックスアーティストの方々と編集者の方々がどのような形で業務を行っているかに注視して開発した技術となっています。Premiere Proでこの機能がどのような働きをするかは、先ほどAl Mooneyのほうからお話しましたので、ここではLive TextテンプレートをAfter Effectsで作成する際に行えることをご説明します。

 一番大きな部分としましては、テンプレート作成時に作成者が、Premiere Pro上で変更を行えるテキストおよびレイヤーなどの指定が行えることが挙げられます。つまり、変更を加えられては困る部分にロックをかけられるようになるのです。これにより、クライアント名やロケ場所などの情報は固定のまま、出演者の名前のみ編集時に差し替えるといったことをミス無く安全に行えます。一見地味に見えるこの機能ですが、どの部分を変更してよいのかなどを、編集者がいちいちグラフィックス担当者に問い合わせる必要がなくなるなど、諸処煩雑になりがちな制作現場の状況に即した機能であると考えています。

 最後に、高品質なキーを生成するキークリーナー機能をご紹介したいと思います。これはいままでにない画期的な機能と自負しています。たとえば、高圧縮でノイズが多くキーイングに適さないグリーンバック映像があったとします。従来ですと、合成素材として用いるには多大な労力が必要となったのですが、今回のキークリーナー機能では、ノイズ除去およびキーの作成を手間なく行うことができるようになります。バックがブルーであろうとグリーンであろうと、特に細かな設定を必要とせず、人物の髪の毛まできれいにキーイングすることができます。従来この手の素材では髪の毛などバックの色がかぶってしまい、自動的に抽出することなどほぼ不可能だったのですが、それを可能としており、いままであきらめていた映像素材の再活用なども実現することができます。

Patrick J.Palmer氏:SpeedGradeに関してですが、今回新たに、Premiere ProのタイムラインをシームレスにSpeedGradeでカラーグレーディングできるDirect Linkのワークフローがさらに充実したものとなりました。具体的には、SpeedGradeでグレーディングを行う代わりに、SpeedGradeのルックスをもとに作成されたPremiere Pro上のプリセットを用いてグレーディング始めることが可能となりました。つまりSpeedGradルックメニューをPremiere Proの調整レイヤーに移行することができるようになったともいえます。これにより、あらかじめSpeedGradeで作成したルックを用意しておけば、Premiere Pro上だけですべてのクリップにこのルックを適用することが可能になります。

 このほか、SpeedGradeのレイヤースタックに、Lumetri FXスイッチが追加され、クリップ単位もしくはトラック全体に対してグレーディングのオン・オフが容易に行えるようになりました。また、従来のRAWスコープに加え、放送対応のEnhanced Scopesが搭載されています。


・2014 NAB Showでアップデートが発表されたAdobe Anywhereについてもお伺いできますか

Steve Forde氏:まず最初にお伝えしたいのは、Adobe Anywhereの採用が劇的に増えたということです。たとえばCNNやノルウェーの国営放送局NRKなどが採用してくださり、報道やスポーツ番組などでAnywhereを活用していただいております。またこの過去1年間に80の放送局様がPremiere Proを主な編集ツールとして使っていただくこととなりました。

 その大きな理由の1つとしてノンリニア編集ソフトウェアとしてのPremiere Proのパワーが挙げられると思いますが、もう1つの理由としてはAnywhereが提供するさまざまな機能、そしてAnywhereの将来的な工程表というものがあると思います。これはAnywhereによってファイルベースのワークフローからファイルレスのワークフローへの移行というものが見えてきているからです。ファイルレスのワークフローにおいてAnywhereは新たな協調ワークフローの標準となりつつあります。

 Anywhereはこれからも新たなプラットフォームとして常に進化し続けていきますので、ご期待いただきたいと思います。

 
・近年の貴社における4Kおよび8Kへの取り組みについてうかがえますか

Steve Forde氏:Adobeでは長年にわたり複数の解像度に対応して参りました。われわれのソフトウェアは、ほぼそのすべてがレゾリューションインディペンデントという解像度に依存しない設計となっております。ですので、4K、6Kはもちろんんこと、使用するマシーンのスペックによっては8Kやそれこそ10Kといった大きなものも扱えるようになると思います。また、私どもはUltla HDと呼ばれる超解像度の将来的な推進に向けた研究開発にも積極的に携わっています。たとえばRec.2020のカラースペースなどに関する取り組みにも積極的に参加して、またHDとUltla HDの相互のやり取りをスームーズに行うためのワークフローの構築にも力を入れております。

Al Mooney氏:私の担当しているPremiere Proでは技術的には9.5Kまで対応しているのですが、いまのところお客様のどなたもそれをお望みになっていないので、少々残念ではあります…笑。

・日本では4K関連が盛り上がっておりますが、放送という観点では、そのことについてどう思われますか

Steve Forde氏:単にテレビメーカーの方々にとって新しい商材が生まれてくるということだけでなく、その高いダイナミックレンジや幅広いカラースペースによってコンテンツ自体の概念が変わってくるということもあるのではないかと…その点をエキサイティングに感じています。

 ご質問の答えからは少々外れるかもしれませんが、さまざまな変化がこれから先々に渡って押し寄せてくるのではないかと思います。まだその一部しか見えていませんが、最初の1つが高解像度の実現、そして2つめが高フレームレートの実現、3つめがさらなるダイナミックレンジの拡大と、現在見えている取り組みだけでも、この業界が近年にない発展を遂げていることがわかり、今後の展開が非常に楽しみです。

・本日はありがとうございました。


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