オタク 手塚一佳の自腹レポート〜EOS-1D Cを小規模撮影で使いこなす・第8回


取り込み現像編 その2

Adobe Creative Cloudを使ったカラーグレーディングのセッティング

 AJA io XTの設定と接続が終わったら、Premiere Pro CCを立ち上げよう。新規プロジェクト作成でキャプチャ設定が出る場合には「AJA MOV Capture」を選択すること。

 ソフトが立ち上がったらPremiere Pro CCから「環境設定」→「デバイスコントロール」タブを開き、「デバイス」から「AJA Serial Control」を選択する。また、同じ「環境設定」→「再生」から「ビデオデバイス」が「AJA ioXT」になっているかどうかも確認しよう。こうした標準設定だけで、Premiere Pro CC上からモニター出力が確認できるはずだ。

 デバイスのチェックは、念のために環境構築ごとにやるといいだろう。また、モニターは30分くらいしないと色が安定しないので、真っ先に電源を入れて「暖め」ておこう。

 ここまでできたら、後は通常通りPremiere CCで編集すればいい。ここまでなにも特殊なところはいじらずに、色味がフラットなことと、ときどき思い出したかのように動きが引っかかること以外はまるでHDと変わることなく編集作業が行える。こういうところからも、4Kの時代がきていることを実感できるのではないだろうか。

 さて、ここでつくり込んで早速シーンを仕上げてからSpeedGrade CCに移行してみたい気持ちとなるが、まずはその前にセッティング。とりあえずいったんシーンを保存して、Premiere Pro CCを閉じてから、SpeedGrade CCを立ち上げる準備に入ろう。

 まず必要なのは、Tangent Waveなどのカラーグレーディング操作パネルの設定だ。ここでは筆者がもっているTangent Waveの設定方法をご紹介したい。このTangent Waveというパネルは、カラーグレーディングの先駆者の1人である林和哉 氏にその存在を教えてもらったもので、それ以来2年間非常に重宝しているカラーコントロールパネルだ。

 SpeedGradeに対応しているカラーグレーディングの操作パネルはどれも非常に高価だが、その中でTangent Waveが恐らく最安値のものの内の1つであり(米国B&Hの通販で1595ドルと、個人所有可能な金額)しかも、Iridas社時代の2009年2月から長年SpeedGradeに対応してきた実績があるパネルだ。なによりUSB直結で電源不要、しかもIP設定などの面倒なものが要らないのが気に入っていた。そのため筆者は、ただ繋げれば使えるものと固く信じて購入してからこの2年愛用していたのだが…、これが実は新しいコンピュータではそのままでは動かないので要注意。

 Tangent社ホームページをよく読むと分かるのだが、そこからダウンロードできる「Tangent Hub」なるソフトウェアの説明を見ると、このTangent Hubが無いとAdobe SpeedGrade CCは動かないと明記されているのだ。ちなみに、SpeedGrade CCでは、Tangent Element、Tangent Waveの2つのパネルが対応している。Tangent Waveは元々ハードウェアとしてSpeedGradeにネイティブ対応していただけに、好みのキーアサインのマッピングはできないので注意が必要だ(http://www.tangentwave.co.uk/applications.asp)。

 まずは、Tangent社ホームページからTangent Hubをダウンロードしてインストールしよう。このソフトはSpeedGradeの場合、ただインストールさえされていればそれでいい(むしろこのソフトを開いているとSpeedGrade CCでパネルを探すことができなくなるので要注意。SpeedGradeではなんの意味も無いソフトなので、ただのデバイスドライバーだと思って、インストールされていることを意識しなくていい。そのため筆者はこの記事を書くまでこのソフトの存在を知らずにいた。先に筆者の環境を使った誰かが入れておいてくれたため、知らなかったのだ)。

 インストールが終わったら、次は最新のTangent Waveファームウェアをダウンロードして、Tangent Waveを最新版にファームアップしよう。まずは乱暴に思えるが、一度USBを引っこ抜いてから左端の「ALT」キーを押しながらケーブルを再挿入。これでファームアップ準備完了だ。この状態でダウンロードしたファームウェアソフト「WaveFirmwareUpdater」を立ち上げるとファームウェアの選択画面になる。ここで、「Browse」を押して同じパッケージに入っている「.wuf」の拡張子のファイルを選択すればファームアップが始まる。途中でUSBが切断されるとパネルが故障するのでファームアップ終了までトラブルが無いように要注意。完全にファームアップが終わったら、WaveFirmwareUpdaterを終了してからUSBを挿し直そう。これで、Tangent Waveの準備は完了となる。なお、Ver1.12でMavericksに対応しているので、このバージョンアップ作業も必須だ。

 USBにしっかりとTangent Waveが刺さって、左端の液晶がバージョンを指し示しているのを確認したら、いよいよAdobe SpeedGrade CCを立ち上げよう。

 SpeedGrade CCはAdobeグループに加わってから日が浅いため、インタフェースが他のソフトとはかなり異なる。Adobe CCでは便利に使えているメニューバーからの設定もいまだ存在せず、アイコンをクリックして操作をすることになるので要注意だ。

 左上のスパナマークが設定となる。ここで「設定(スパナマーク)」→「Display」→「Mercury Transmit」の「Enable」にチェックを入れ「Device」を「AjA ioXT」に切り替えよう。出力解像度(Resolution)はモニターに合わせフルHDにした。これで、Adobe CCの最大の特徴の1つMercury Transmitエンジンを使った軽快でフレキシブルな再生出力ができるようになる。

 SpeedGrade CCの立ち上げついでにTangent Waveパネルもチェックしてみよう。表示がSpeedGradeのそれぞれの機能名を示したモードに切り替わっていれば正常だ。

 ここまでできたら設定完了だ。いったんSpeedGrade CCを閉じよう。なお、光が綿密に調整された室内でない限り、基本的に外から光が入らないようにカーテンやブラインドを閉め、電気を消すのを忘れないように!

取り込み現像編 その3へつづく] アイキャッチモデル:すずきえり


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