Autodesk最新ソフトウェア2015 〜 NAB Show現地インタビュー


 Autodeskは、2014 NAB Showに合わせてビデオ編集ソフトウェアの最新版Smoke 2015とVFXソフトウェアの最新版Flame 2015を発表し、製品構成の変更を行った。

 同社の取り組みについて、メディア&エンタテインメント事業部でインダストリー・ストラテジー・マーケティング担当シニアマネージャーのモーリス・パーテル(Maurice Patel)氏とマーカス・シオラー(Marcus Schioler)氏に話を聞いた。

 

レンタル提供へと変更になるSmoke 2015

──SmokeとFlameの最新版2015が発表になりましたね

パーテル氏「新バージョンの投入とともに、よりシンプルに製品を提供しようと製品構成を変更しました。これまでよりローコストに、より多くのことができるようにと考えた構成になっています。
 2009年にSmoke for Mac OS Xを提供し始めましたが、当初は従来から編集をしている人に、より多くのツールを提供できるようにと考えていました。実際に75%のユーザーはこうしたタイプの人でしたが、残りの25%のユーザーはFlameユーザーで、編集部分をSmokeで行ないたいという人でした。
 この2つのグループの方向性に対して1つの製品で提供していくのは無理があると感じてきたことから、本来目指していたデスクトップビデオエディティングを実現するSmokeと、Flameの中でSmokeを利用してもらうFlame Assistとに分けることにしました。今後のSmokeは永久ライセンスを廃止し、5月7日以降はレンタルのみの提供となります」

 

──Smokeの機能強化ポイントは?

パーテル氏「Smoke 2015は、タイムライン内でエフェクトを追加できるようにしたほか、3Dトラッキングなどの機能強化を行っています。制作スピードを上げられるように、タイムラインのパフォーマンスも大幅に向上させました。
 フィニッシング部分とは異なり、エディティングにおいては各種データの入出力が欠かせないので、XMLへの対応を拡張し、XMLエクスポート機能も追加しています。動作環境面では、新しいMac Proにも対応しました」

 

──4K解像度素材の編集についてはどうなっていますか?

パーテル氏「4K対応という意味では、プロキシワークフローを活用して低解像度でエディティングしてからレンダリングを行なうことによって、これまでも扱うことができました。
 4K解像度のモニタリングやインタラクティブな操作性など、リアルタイムに4Kを扱うのは、Flame環境で求められるものと考えています」

 

4K対応のた機能強化したFlame 2015

──Flameはどう変わったのですか?

シオラー氏「Flameがターゲットとしているユーザーは非常に高速な環境を必要としていて、クライアントが持ち込んでくる素材を使い、Flameの機能を活用して短期間に高品質な作品に仕上げてきました。クライアントは、Flameで、納期どおりに高品質な作品が仕上がることを期待しています。
 新しいFlame 2015では、Flameの強みをさらに活かすことができるように機能を強化し、4Kワークフローに対応しました。4K/60pのリアルタイム再生/モニタリングを可能にしたほか、カラーマネジメントではACESやREC-2020のカラースペースへの対応、タイムラインやバッチノードに対する最適化も行っています。
 ストレージに関しても従来の4倍の容量をもつ16Gファイバーチャネルのものに変更しています。
 4Kワークフローに対応したことでデータサイズが大きくなり、処理にかかる時間も増えるので、納期に対するパフォーマンス強化はこれまで以上に重要になってきます。
 そこで、新たにバックグラウンドリアクターを追加しました。ワークステーション上にNVIDIA Quadro K6000またはQuadro 6000のGPUを2つ搭載することができ、1つ目のGPUでインタラクティブに操作しながら、2つ目のGPUでレンダリング処理を行うことができるようになっています」

 

──具体的な機能強化面は?

シオラー氏「クリエイティブツールとして、3Dシェイプとレプリカの機能を追加し、タイムライン上でのマッチボックス効果を追加できるように強化しました。
 特に3Dシェイプは、ユーザーからの追加要望の多かったツールです。Flameアーティストが簡単に3Dモデリングをすることができ、プロジェクション マッピング、ロゴデザイン、モーション グラフィックス、リライティングなどを行なって、新たな表現を生み出すことが可能になります」

 

──製品構成を変更したのはなぜですか?

シオラー氏「Flameは、厳しい納期に対応できるようにしておくことが重要になります。
 たとえば、納期が厳しく、Flameアーティストが1人で作業をしきれないときに、一部のショットの作成をアシスタントに依頼することはよくあることです。そんなときにFlame Assistを使用することで、タイムラインを共有しながら、アシスタントがショットを作成したり、タイムラインの作成をしたりすることができ、作業を分担して進めることが可能になります。
 Flame Premium 2015では、FlameとカラーグレーディングソフトウェアLusterの組み合わせに、Flame Assistと、BatchとAction 3Dコンポジティング環境を提供するFlareを追加しました」

 

──製品を整理すると、エディティング製品のSmoke、Flameとの連携を強めたSmokeであるFlame Assist、VFXソフトウェアのFlame、コンプリート製品としてのFlame Premiumというラインアップという理解でいいですか?

パーテル氏「エディティング製品としてのSmokeがレンタル製品となり、Flameとの連携機能を廃止し、よりエディティングに特化した製品となります。
 Smokeがターゲットとしている市場は変化が大きく、各社が機能と価格を競っているので、より早くアグレッシブに対応できるように販売方法を変更しました。
 これまでのFlameと連携機能をもつSmokeは、Flame AssistとしてFlameユーザーに向けて販売されます。そのため、Flame Assistは単品販売はされません」

 

製品提供方法に合わせサブスクリプションの形態も変更

──サブスクリプションについての変更はありますか?

パーテル氏「サブスクリプションについて整理すると、デスクトップサブスクリプションとメンテナンスサブスクリプションの2種類となりました。
 Smokeのレンタルに適用されるものとして新たに追加されたのがデスクトップサブスクリプションで、従来からあるサブスクリプションをメンテナンスサブスクリプションと呼ぶようになります。デスクトップサブスクリプションはライセンス提供とは異なってレンタル期間に合わせた契約となり、常に最新版だけが提供されます。
 Flameについてはメンテナンスサブスクリプションとなり、最新版と過去のバージョンの両方が提供され、契約期間中のソフトウェアバージョンアップも含まれるものとなります。
 いずれのサブスクリプションも最新版が提供されることに変わりはありませんが、デスクトップサブスクリプションはレンタル契約を打ち切るとアクセスもできなくなってしまいます」

シオラー氏「Flame 2015のオプション製品であるFlare 2015とFlame Assist 2015については、メンテナンスサブスクリプションだけでなく、デスクトップサブスクリプションでの契約も可能にしています。
 従来製品のサブスクリプションバージョンアップについて補足しておくと、従来のSmoke Advanced、Flame、Infernoのサブスクリプションユーザーには、今回からFlame 2015が提供されます」

パーテル氏「Smokeのサブスクリプションユーザーは、Smoke 2015が利用可能となり、永久ライセンスが発行されます。
 FlameかFlame Premiumを利用してきたSmoke for Mac OS Xのサブスクリプションユーザーには、Smoke 2015またはFlame Assist 2015の永久ライセンスに変更できるパスを用意します。ここで、Flame Assistに移行する場合はメンテナンスサブスクリプションでの移行になりますが、あとからSmokeに変更したいという場合にはデスクトップサブスクリプションのレンタルのみとなってしまうので、その点は注意してほしいところです。
 もう1つ。Smokeで1年以内にサブスクリプション契約が切れてしまっているユーザーには、サブスクリプションの再契約により最新版の永久ライセンスが提供されるようにします。いずれの場合においても、Smoke 2015は永久ライセンスですが、次世代バージョンのSmokeはレンタルのみの提供へと移行します」


秋山 謙一

About 秋山 謙一

雑誌・書籍編集、業界新聞記者を経て、2001年11月からジャーナリスト活動を開始。映像制作ソリューション/映像制作ワークフロー/制作現場について取材している。各種媒体を初め、企業Webサイトや企業パブリシティ向けに取材ライターを務め、企業製品マニュアル&テキストの執筆およびDTP制作を行う。2014年度から女子美術大学芸術学部アートデザイン表現学科で非常勤講師を務め、「映像基礎演習」を担当している。

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