パナソニックAG-DVX200〜V-log Lを実装し、デュアルコーデック記録でHDから4Kへの過渡期に対応


 「あのカメラが帰ってくる」。ミニDVのころのAG-DVX100を愛用していたカメラマンは、この型番を見た瞬間、そう思ったに違いない。
 小型ハンディーカメラのジャンルにCINE LIKEガンマを取り入れ、ガンマにいくつかのプリセットを搭載したAG-DVX100は、質感にこだわるカメラマンの間で人気を博した。

 AG-DVX200が、あえて “DVX” の型番を前面に出している以上、開発メーカーのパナソニックは期待を裏切らない相当の自信があるということであろう、と思ってしまうのは、筆者だけではないはずだ。


 果たして、その期待に対するメーカーのつくり込みが本物であるのか、じっくりとレビューを進めていこうと思う。

AG-DVX200の基本性能

 まずは、基本的な性能を押さえておこう。

ag_dvx200_spec

デザインと操作性

 目を引く斬新な色使いは賛否両論あるだろうが、この手のカメラにパーフェクトなデザインなど存在しないと筆者は考えている。100人いたら、100人の使い方があるからだ(写真1〜4)

気になるガンマコントロール

 ハイエンドカメラVaricam35にも搭載されているV-logをAG-DVX200にもV-log Lとして搭載。12ストップのワイドダイナミックレンジで、カラーコレクションの自由度は向上している(写真5)


 logでの撮影はワークフローに時間や予算を割ける作品に限られてくる。そこでプリセットが重宝する。“DVX” の代名詞ともいえるガンマのプリセットはVIDEO系のプリセットが少なくなり、よりシネライクになってきた(写真6)


 ガンマプリセットの比較として、ISO100/F6.8/180degにて背景を飛ばしてライティングし、代表的な「HD」、「FILMLIKE3」、「CINE-LIKE D」の3つで撮影した(写真7〜9)

デュアルコーデック記録によるワークフローの簡素化

 ワークフローに関しても、現在の4K映像の立ち位置を踏まえたワークフローが提案されている。
 現状、PC環境も含めすべてを4Kで処理することは結構な負担になる。4Kで収録して4Kで完成させるにしてもオフラインはHDで行いたい。

 AG-DVX200は、そのあたりの素材管理や変換の手間などを考慮に入れ、4KとフルHDの異なったフォーマットを2枚のSDメモリーカードへ別々に収録できるデュアルコーデック記録を採用している(写真10)


 デュアルコーデック記録できるフォーマットは表2のとおり。

dvx200_dualcodecrec


 表2を見てのとおりデュアルコーデック記録を行う場合は制限が発生してしまう。メイン記録、Ultra HDは100Mbpsフレームレート29.97pまで。必然的にサブのフルHDも29.97pまでとなる。どうしてもUltra HDの59.94pを使用しなければならない作品において、この機能を利用できないのは少し残念なところだ。

 HDMIからは4K出力が可能なので他社製の外部レコーダーを利用することもできる。ただし、本体記録を同時に行う場合、出力のビット数は8ビットまで。カメラの性能をフルに使うのであれば10ビット出力に設定し、より高画質記録が可能な外部レコーダーに収録するという方法もある。

 ワークフローに関しては、DaVinci12.0で問題なく変換できた(写真11)

センサーと画角での注意点

 AG-DVX200の最大の注意点が、4KとフルHDの切り替えで画角が変わってしまうことであろう。
 ワイド端での画角の変化(35mm換算)は、下記のとおりとなる。

フルHD:28mm
DCI 4K:29.5mm
Ultra HD/29.97p 23.98p :30.6mm
Ultra HD/59.94p:37.2mm

 つまり、フルHDから4Kに上げていくと、画角がテレ側にシフトしていってしまうのだ。それぞれの収録フォーマットに応じてイメージセンサーの画素をスキャンして書き出しているのだが、各画像サイズに必要な画素数以上の画素数でスキャンしてから縮小するオーバーサンプリングの方法を採用しているため、限られた時間内でスキャンできる画素数に限界があり、フレームレートが上がるほど画素数は下がる。したがって上記のような画角の変化が起こってしまうという(オーバーサンプリングで書き出しているので、画質的にはまったく問題ない)。

 それにしてもフレームレートによっては引き尻が最大37.2mmと少し使いにくい。ワイドコンバージョンレンズが欲しいところだが、4Kにおいてはコンバージョンレンズなどの解像度などもまだこれからの問題。対応を急いでほしいところだ。

光学系のつくり込み度

 レンズはLICA DICOMAR12.8-167mm F2.8-4.5の13倍ズームレンズである。大判イメージセンサーを採用しているため、被写界深度コントロールはレンズ一体型のカメラにしては結構楽しめる。今回は光学系のコントロールに焦点を当ててレビューしてみたい。

 まずは手ブレ補正から。AG-DVX200では、光学式手ブレ補正(O.I.S)のほか、光学式と電子式を組み合わせたハイブリットO.I.Sも用意されており(4K/Ultra HD撮影時は使用できない)、ハイブリットO.I.Sでは、1:回転軸、2:左右、3:上下、4:縦回転、5:横回転の5軸に対して補正をかけるという。
 使用した感想は、補正時特有のあのイヤな揺り戻しも少なく、シチュエーションごとに細かく調整でき、完成度が高い印象だ(写真12)


 つぎにオートフォーカスに関して、筆者はいままでの撮影人生において、オートフォーカス機能を使用した記憶がほとんどない。使ってもワンプッシュ オートフォーカス(マニュアルモードでの撮影時に、一時的にオートフォーカスを作動させる機能)だ。
 筆者の気持ちとしては、カメラマンをアシストしてくれる機能の中で、オートフォーカスは信用できない機能の1つといっても過言ではない。

 そんな疑心暗鬼の筆者が、カメラにとって結構シビアな環境をつくってみた。薄暗い部屋で少なめに当てたLEDライトの直線をカメラに向かって走ってくるラジコンカーである。秒速は3.5mと結構早めに設定した。
 オートフォーカスが、カメラマンを助けてくれる機能たり得るところまできているか見てみよう。

 まずはカメラをオートモードに切り替える。オートモードによる撮影時でも、オートで使用する機能のON/OFFを選択することができる。今回はフォーカスのほか、絞り、感度をオートに設定した。

 コントラスト検出方式のオートフォーカスの限界で、暗いとどうしても自動的に増感し、絞りを入れて被写界深度を深めにしてしまう。撮影時になにを犠牲にするかとなるが、明るいシチュエーションでは問題なくフォローしていた(写真13〜16)


 問題は狙いで絞りを開放にしているようなシチュエーションだ。そこで深度の浅い状態でオートフォーカスの有効エリアを調整し、テストしてみた。

 最も暗くなるところで数フレーム、フォーカスがはずれてしまったが、探ることなく最後までフォローしてくれた。完璧にフォローするならオートフォーカスの有効エリアを限定するなどの工夫が必要だ(写真17〜21)
 今回は比較的コントラストのわかりやすい被写体によるテストであったが、コントラストのわかりにくい被写体の場合は、やはりマニュアルとの併用が必要であろう。


 フォーカスは、高精細になればなるほどフォローが大変になってくる。特に大判センサーの特長を活かして被写界深度を浅く撮影したいとなると、ますますシビアになる上に、小型カメラだと小型ファインダーでどこまでフォーカスが判別できるのか、撮影していて不安になることがある。

 頻繁に使用するフォーカスアシスト機能は、従来どおりピーキングを発展させたエッジ検出タイプ(ピーキング)と、拡大タイプ(エクスパンド)が搭載されていて問題はない。

 オートフォーカスは、全面的に信用するのはまだ先の話になるだろうが、とっさのワンプッシュ オートフォーカスや、設定をつくる時間があるときに状況を見て限定的にエリアフォーカスを使用するならば、信用してよさそうな領域まで進化している印象だ。
 今後、映像がより高精細になっていくのは確実で、オートフォーカス機能のさらなる進化に期待したい。


 今回試用してみて、いくつかの注意点はあるものの、一般的なおのおのの機能をかなり掘り下げてつくり込んでいると感じた。
 質感とガンマコントロールがハイエンドカメラに肉薄してきているところは、旧DVXユーザーも納得できるのではないだろうか。

 収録面でもメディアをSDメモリーカードのデュアルコーデック記録にすることでワークフローに対するコストパフォーマンスを上げるなど、HDから4Kへの過渡期に対する配慮にも好印象を受けた。

価格:¥58万(税別)
発売:2015年9月30日
問い合わせ先:パナソニック システムお客様御相談センター(業務機器)TEL 0120-878-410
URLhttp://panasonic.biz/sav/products/ag-dvx200/


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有限会社 極楽映像社

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