ソニー PMW-300〜レンズ交換型セミショルダータイプのXDCAMメモリーカムコーダー


 1/2型としては、解像度も良好で誘導灯の橋梁も結構シャープに撮れる(写真15)。あえてゲインを上げて見てみると、9dBぐらいまではほとんど気にならない(12dBではかすかにノイズが確認できる)。

 せっかくなので飛行機を狙ってみた。レンズのリング系も操作しやすくピン送りも軽快である。VF付きLCDは、ステイにマウントされていて自在に動くように工夫されているが、ケーブルの取り回しが悪く三脚に乗せた状態では、電動ズームレバーが扱いにくいのが残念である。もちろん、8ピンのレンズリモートが使えるので大きな問題ではない。

 続いて場所を変え、レンズの比較を試みた。PMW-300K1付属のレンズが手ぶれ補正・オートフォーカス機能付きのPMW-EX3付属レンズと同様だとすれば、PMW-300K2付属のレンズはオートフォーカス機能付きのPMW-400Kの付属レンズと同様(2/3型と1/2型でまったく違うが)である。

 PMW-300K2付属の16倍ズームレンズはフジノン製のXA16×5.8A-XB8だ。バヨネットタイプのレンズなので、 付属のEXマウント1/2型変換アダプターを使って装着する。思ったよりも簡単に装着できるが、屋外での交換は、助手がいたほうがベストである。1人で交換するならば、落とさないよう段取りが必要だ。

 橋に近づいての最広角側でベイブリッジを撮ってみる(写真16)。曇ってはいるが、そこそこの発色と解像度の良さが伺える。付属の専用レンズを使用するときは、最適な補正データが呼び出されるように設定されている。専用以外のレンズを使用するときは、レンズファイルを使用して補正したデータを保存しておき、呼び出して使用することが可能だ(シリアル通信可能なレンズは自動呼び出し)。

 また、通常はレンズ交換したときには、フランジングバッグ(バックフォーカス)をレバーにて調整するが、PMW-300K1付属の14倍ズームレンズは専用チャートを撮影しながらフランジングバックメニューにより自動調整することになる。PMW-300K2付属の16倍ズームレンズでは、レンズの裏面にFBボタンがある。

 操作面では、14倍ズームレンズのリングなどの使用感が軽快だと前述したが、16倍ズームレンズのリングは、リングを回すときの適度なトルク感も心地よく、もっと軽快な使用感となる。全体として重量のことを考えると14倍ズームレンズでいきたいところだが、三脚使用をベースに考えて良いのであれば、16倍ズームレンズを選びたくなる。

 せっかく同ポジ撮影を助けてくれるフリーズミックスが付いているので、同じ画角で比較してみた。広角側では、遜色ない感じであったが、望遠側で見たとき、16倍ズームレンズのほうが全体として解像度が上がったように感じる(写真17〜20)。

 また今回、別売りのEXマウント2/3型変換アダプターACM-21と2/3型のSD15倍ズームレンズ(キヤノンJ15×9.5B4 IRS)をお借りできたので、試してみた(写真21)。

 装着は問題なくマウントできた。1/2型と2/3型での焦点距離の違いが、こんなに倍率に影響していることには少し驚いた(写真22、23)。もちろん専用レンズと比べてはいけないが、充分使用できる範囲だと思う。企業映像の場面では、どうしても超望遠が望まれる場合があるし、いままでの資産が有効活用できることも含め選択肢が増えることは嬉しい限りだ。

 特徴的な基本機能

 そのほかの、ブラッシュアップされている特徴的な機能を紹介する。
 任意のメニュー(制限あり)をボタン登録できるアサイナブルボタンは、クラス最多の8個搭載。左側面にはC&Qモーションダイヤルボタンも用意され、機能のON/OFFを初め、撮影フレームレートや再生フレームレートをダイヤルで簡単にセットすることができる(1280×720/59.94pで収録、再生を23.93pにすると、最大1/2.5高画質スローになる)。他の機種では、メニューに入りそれぞれを項目で選んでセットしなくてはならないことを思うと、使う予定ではなかったシーンでもちょっと試したくなる。

 また最近流行のPCやスマートフォンを使ったWiFiリモコン機能、別売りのCBK-WA100(¥19万9500/税込)を使うと、待望のライブビューを含め、さまざまなファイル転送が可能になる。RM-B170やRM-B150を使ったカメラリモートができるのも嬉しい機能である。さらにPMW-F55に搭載されて好評なXAVCフォーマットにも、2014年度に対応予定となっている(4Kは非対応)。

ますます充実していくXDCAM HD422

 PMW-300は、ハンディカムタイプの利便性とショルダーカムタイプの拡張性と安定感をミックスしたセミショルダーカムタイプとして、とてもユニークなカメラである。ショルダータイプが軽量化しているいま、ハンディカムタイプはますます軽量で高機能性を求められる気がする。個人的には、高精細なLCDは欲しいが、VFは簡易タイプでも良いから、もう少し軽量化を図って欲しいと思ってしまう。

 しかし、この価格でレンズ交換ができるのは、とてもリーズナブルだと思う。企業映像では、なんでもハンディカムタイプですませようとするのが、安価なレンズ交換式カメラの普及で、レンズのクォリティを使い分けることが、当たり前となる時代が近いかもしれない。

 今後もXDCAM HD422(1920×1080)50Mbpsシリーズの充実に期待したい。画質の違いによる映像作品の説得力の違いは、間違いなく大きい。解像度の違いで選ぶ時代は過ぎていると思うが、まだ民生用機材で企業映像を制作されている方がいれば、そろそろ見直す時期ではないだろうか。機材の進化と共にプロとしての存在感も進化させていけるよう日々精進していきたい。

  • 価格:PMW-300K1;¥90万(税別)、PMW-300K2;¥110万(税別)
  • 問い合わせ先:ソニー業務用商品相談窓口TEL0120-788-333
  • URL:http://www.sony.jp/xdcam/

About 井上尋夫

国際企業映像協会(ITVA-日本)第11代会長(1982年設立の国際企業映像協会は、企業内映像担当者を中心に組織される団体)。(有)毎企画 制作プロデューサー。1995年設立の(有)毎企画で、企業用映像中心に映像社内報から教育・製品PR・リクルート・会社案内等の映像制作、HP制作、コンサルティング、育成セミナーまで幅広く活動中。 ■主な制作先: 横浜銀行、千葉銀行、三井住友信託銀行、オリエントコーポレーション、IHI、三井生命、全薬工業、相鉄フォールディングス、日本クレジット協会、SMBCコンシューマーファイナンスほか

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