Inter BEE 2014レポート〜Avidは、4K対応のMedia Composerと新コーデックDNxHRをアピール


 Avidは、Inter BEE 2014において、昨年に引きつづき「Avid Everywhere」のコンセプトで出展。さらに、4K編集サポート&レゾリューションインデペンデントを掲げて、4K対応のMedia Composerと新コーデックDNxHRをアピールした。

Inter BEE 2014_Avid

 ブースは、メインステージと展示エリアに大きく分かれ、メインステージでは、4K対応Media Composerについて詳細が解説されたほか、ビデオ製品、オーディオ製品ともに、作業効率化を主要目的とした導入事例を発表。

 展示エリアでは、「Avid Connectivityパートナー・パビリオン」として、同社製品を取り扱うパートナーごとにコーナーを分けてデモが行われ、ビデオ製品のパートナーにおいては、池上通信機、伊藤忠ケーブルシステム、フォトロン、報映産業が出展した。

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展示エリアでは、Avid製品を取り扱うパートナーごとにコーナーを分けてデモ

 またオーディオ関連では、Pro ToolsのVer.11とEUCONベースのコントロールサーフェース「Pro Tools | S3」、Avid統合型コントロールサーフェースの「S6」などを展示。コンパクトサイズのライブサウンド用ミキシングシステム「VENUE | S3L-X」も国内初登場ということで、来場者の注目を集めた。

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ライブサウンド用ミキシングシステム「VENUE | S3L-X」は国内初登場

4K対応のMedia Composer

 Avidはビデオ製品における方針として、ツールとメディアとストレージがすべて1つのプラットフォームで扱える「Media Platform」の概念を示し、マーケットプレイスでデータのやりとりや販売が行える点を紹介。また、今回披露されたデモにおいては、解像度に依存しない「レゾリューションインデペンデント/Resolution Independence」と4Kを快適に編集するための新コーデック「DNxHR」の2つをキーワードに挙げている。

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解像度に依存しない「Resolution Independence」と新コーデック「DNxHR」の2つがキーワード

 2014年内にリリース予定のMedia Composer Ver.8.3は4Kに対応し、新規プロジェクトでUltra HDや2K、4Kという設定を選択することができる。

 デモで使用されたPCの構成は、OS:Windows 7 Professional/メモリー:16Gバイト/AJA KONA 4ボード。I/Oハードウェアは、AJA KONA4のほかにも、AJA IO 4K、BlackMagicDesignのDeckLink 4K ExtreamおよびUltraStudio 4K、BlueFish444のEpochで4Kが利用できることが紹介された。Matroxのボードも検証中とのことである。

 59.94pのプロジェクトを使用し、まずはAMAでファイルをリンクしてXAVCの4K再生が快適に行える点を紹介。ARRIのALEXA、ProResの4Kなど、いままでAMAでサポートしていたファイルはこれまでどおりサポートしている。ただし、4Kの場合はそのままAMAで編集するとパフォーマンスが稼げないため、Ver.8.3と同時にリリースされる新しいコーデック「DNxHR」を利用する。

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2Kおよび4Kに関してはAcademy、Flat、Full、Scopeという細かいサイズ設定から選ぶことができ、フレームレートは23.976から60まで対応

 DNxHRは基本的に解像度にしばられることのない、「レゾリューションインディペンデンス」に則った編集用コーデックという位置づけである。DNxHDのアルゴリズムをそのまま継承し、Windows/Mac両方で使用できる。

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DNxHDでは数字で表現していたビットレートが、DNxHRでは「SQ」や「HQ」などのクオリティで表現されている。SQがDNxHD145、HQがDNxHD220、HQXがDNxHD 220Xに相当。LBが約1/20圧縮のプロキシで、DNxHD 36に相当する

 画質に関するデモでは、HQとLBを1画面上に分割表示して画質的に遜色がない点をアピールした。また、LBを使用すると編集時のスクラブや再生が快適になり、4K60pの4レイヤー映像がリアルタイムに再生できていた。

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REDのオリジナルファイルとDNxHR LBを画面上でワイプで分割して表示。DNxHRでは、画質のクオリティを保ったまま編集できる点をアピールした

 さらに負荷を低減したい場合には「Proxy Timeline」の機能を用いて、タイムライン再生時のパフォーマンスをアップさせることができる。このProxy Timelineを使うと、プロキシサイズでレンダリングされるため、エフェクトのトライアンドエラーを行う際に無駄なディスク容量を使わずに済むメリットもある。

 また「EditTimeBase」というプルダウンメニューも搭載された。これは編集時のフレームを29.97か59.94のどちらでベースを設定するか選択するもので、60pで収録した素材であってもどこでフレームを切るのかを設定することができる。

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編集時のタイムベースを設定する「EditTimeBase」を搭載

制作・報道におけるAvidのリモート編集

 遠隔地にある素材サーバーを利用したリモート編集のニーズに応える製品として、Webベースアプリケーションの「MediaCentral | UX」とMedia Composerとほぼ同等の作業が行える「Media Composer | Cloud」が紹介された。

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Avidではワークフロー図の赤い部分で表されているとおり、完パケ時に使われたコメントや権利情報などを「レポート」として発行することで、素材再利用時の権利問題などのリスクを軽減する


 メインステージのデモでは、リモート編集の仕組みについて細かく説明が行われた。MediaCentral | UXやMedia Composer | Cloudは「コメント」や「権利情報に関する警告」などの情報を入れることができる。

 従来、送出サーバーに送られた映像は一本化されているため、この時点で素材に付加されるコメントや権利情報は失われていたが、Avidでは完パケ時に使われたコメントや権利情報などを「レポート」として発行している。そのため、メーカーで言うところの出荷前検査のようなことが可能になる。リモート編集におけるメタデータ運用の信頼性の高さを示していた。

Interplay | Productionでファイルベースワークフローを実現

 ビデオ製品に関するユーザー事例では、関西テレビ 制作技術局 制作技術部主任の堀田秀治氏が登場。テープベースで1時間収録しているトークバラエティ番組「快傑えみちゃんねる」において、膨大なインジェスト処理時間を削減するため、Avidシステムへの入れ替えを行った事例を紹介した。

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関西テレビに導入された、Interplay | Productionを中心としたシステム図


 Interplay | Productionを活用することで時間と手間が削減されただけでなく、映像にアクセスする権限を担当者によって変更することで、セキュリティ面の向上も図られたという。今後は東京のスタジオとの連携や4K番組への対応を検討しているとのことである。

オーディオ製品の新製品/新機能デモ

 オーディオ製品に関する方針としては、業界のダイナミクスに即した形でユーザーのニーズに合った製品を提案していくと述べている。この方針の一貫として、Pro Tools | Softwareは11月からMedia Composerと同じく、1年間のアップグレードが保証されるスタンダードAvidサポート付きの販売形態に変更となった。

 なお、このリリースに合わせた期間限定プロモーションとして、Pro Tools LE8/MP/Express/Ver.9/Ver.10からPro Tools11へのアップグレードが21,300円、Pro Tools HDはVer.9/Ver.10からVer.11へのアップグレードが¥6万4100で提供されている。

 デモでは、ProTools | S3およびS6の機能を中心に紹介され、コンソールのレイアウトを自由に設定できる点やエルゴノミクスデザインのコンパクト設計をアピールした。

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ProTools Ver.11.2では、コンソールとProToolsがリンクして、自分の好きなようにフェーダーをアサインできる点を実演

 また、先般のAESでリリースされたPro Series AAXプラグイン「Sub Harmonic」と「Mutliband Dynamics」も紹介。Sub Harmonicは低周波数の倍音を足してくれるたけでなく、MIDIキーボードから送られたMIDI信号に追従してピッチを変えるサブオシレーター的な使い方もできる。

 Mutliband Dynamicsは、オーディオ素材を周波数ごとに最大4つのバンドに分けて、それぞれにダイナミック処理を加えられる。処理の種類としてはコンプレッサーとエクスパンダーのほかにゲインを上げるエクスパッションの機能もある。各帯域ごとにトラックに流して異なるプラグインを追加することもできるため、複雑な効果を加えることも可能だ。


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六本企画

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