Inter BEE 2014レポート〜キヤノンはCINEMA EOS SYSTEMや放送用レンズの新製品と最新4Kワークフローをアピール


 キヤノンは、Inter BEE 2014において「映像表現の領域は新たなステージへ」のブースコンセプトで出展し、CINEMA EOS SYSTEMシリーズや放送用レンズなどを中心に展示を行った。ブース中央には、同社の光学技術やセンサー技術を紹介する「イメージングテクノロジーミュージアム」が設置された。

Inter BEE 2014_CANON

ブース正面にはEFレンズを初めとしたキヤノンレンズのラインナップが展示され、EFシネマレンズと放送用レンズの新製品を中央に配した。裏手に位置する段上のスペースには新製品のズームレンズがずらりと並んでいる

 

Inter BEE 2014_CANON

ブース中央にある円形状の「イメージングテクノロジーミュージアム」では、製品に使用されている技術のほかにも、国立天文台のすばる望遠鏡を支える光学技術などを展示して、メーカーとしての開発力をアピールした

 

Inter BEE 2014_CANON

ミュージアムの裏手を囲むように設置されたカメラスタジオでは、新製品のEOS C100 Mark IIや焦点距離50-1000mmのCINE-SERVOレンズCN20×50 IAS Hなどが展示され、実機を体験しようとする来場者が多く訪れていた

 そのほか、ライブ中継や制作プロダクションにおける4Kワークフローをテーマにした展示や、ファームウェアアップグレードでさらに強化されたDP-V3010の機能などを紹介。昨年同様にブース内でミニセミナーも開催して注目を集めた。

 また、国際会議場では「4Kスペシャルセミナー」と銘打って、4K映画撮影の事例紹介や次世代放送規格ITU-R BT.2020をベースにした4K放送に関するトークセッションなども開催された。

EOSシリーズの新ラインナップが登場

 カメラスタジオでは、今回初登場となった「EOS C100 Mark II」や「EOS 7D Mark II」など好評機種の後継機を中心に、CINEMA EOS SYSTEMシリーズのラインナップが勢揃いする充実した展示となった。

 EOS C100 Mark IIは、前モデルで有償対応であったデュアルピクセルCMOS AFを標準搭載するほか、新たに顔検出AF機能を装備。大型化された0.45型ビューファインダーを覗く来場者が多くみられた。記録形式はAVCHDに加えてMP4も対応。MP4は35〜3Mbpsと広い範囲で設定できるため、高品質な映像制作だけでなく、より手軽な運用のニーズにも対応する。モノラルではあるが本体内蔵マイクも搭載している。

Inter BEE 2014_CANON

EOS C100 Mark IIと超望遠ズームレンズEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM。同レンズはロングセラー製品の16年ぶりの後継機で、色収差を抑える蛍石レンズ1枚と特殊低分散ガラスを採用したスーパーUDレンズ1枚を含む、16群21枚からなる最新の光学設計により高画質を実現。ズーム方式を直進式から回転式へと変更したことで、バランスのよいホールディングが可能となっている。2014年12月下旬より発売

 

Inter BEE 2014_CANON

EOS C100 Mark IIは、ISO102400まで設定可能な高感度対応も特長。ブース内の別の場所では、照度を0.02〜0.03 lxに抑えた小箱型の暗室内にEOS C100 Mark IIを設置して、実際にISO102400/F2.0/シャッタースピード1/30で収録するデモも行っていた。暗室の中に置かれた人形や造花などが映っているのがかかる

 APS-CサイズのCMOSセンサーを搭載したEOS 7D Mark IIは、映像エンジンにEOSシリーズで初搭載となるDIGIC6を2基搭載し、常用ISOl感度16000を実現。ALL-IとIPBの2つの圧縮方式を選択でき、MOVおよびMP4によるフルハイビジョン60p撮影が行える。

Inter BEE 2014_CANON

EOS 7D Mark IIは「動画サーボAFカスタム設定」を備えており、表現手法としてフォーカスのスピードを遅くすることができる。HDMI出力による非圧縮422/8ビット/24fpsでの外部モニタリングや記録にも対応

最大/最長/世界初が並ぶ新製品のズームレンズ

 EFシネマレンズの新製品としては、高倍率ズームレンズ「CN20×50 IAS H」が登場。スーパー35mm相当サイズのセンサーに対応したドライブユニット付きズームレンズで、世界初の1.5倍のエクステンダーを内蔵している。EF/PLマウントともに50-1000mmで、エクステンダーを利用することで世界最長の1500mmの焦点距離、ズーム倍率も世界最高の20倍を実現する。

Inter BEE 2014_CANON

新製品の高倍率ズームレンズCN20×50 IAS H。内蔵エクステンダー使用時も4K光学性能を維持するほか、標準装備しているドライブユニットは着脱が可能。2015年4月下旬に発売予定

 また今夏に発売されたレンズとして、EFシネマレンズで初めてドライブユニットを搭載したCINE-SERVOレンズ「CN7×17 KAS S」やHDTV放送用ポータブルズームレンズ「HJ18e×7.6B」を展示。

Inter BEE 2014_CANON

HDTV放送用ポータブルズームレンズHJ18e×7.6B。標準レンズとしてクラス最短の最至近撮影距離0.56mを保ちながら、7.6〜137mmまで18倍のズーム域を実現

 

Inter BEE 2014_CANON

2015年3月下旬に発売を予定しているHDTV放送用フィールドレンズDIGISUPER 95 TELEも展示。ズーム比95倍の高倍率を維持しながら、焦点距離はクラス最長の12.4〜1178mmとなっている

リアルタイムRAW現像で効率化する4K制作ツール

 ズームレンズコーナーの上手に位置する目立ったスペースで展示されていたのが、EOS C500を使用した4Kライブ伝送システムである。光伝送システムと組み合わせることで、4K RAW60p/リモートコントロール信号/インカム/ゲンロックなどを伝送することができる。

Inter BEE 2014_CANON

EOS C500にPROTECHの光カメラアダプターLS-750を装着(上写真)。光ケーブルでつないだ先のベースステーションLS-850を介してアストロデザインの4KリアルタイムRAW現像BOXで現像する(下写真)

 また、ブース内で行われたミニセミナーの1つとして、Cinema RAW Development v1.3を活用した4K RAW現像に関するモバイルソリューションが紹介された。EOS C500で撮影したCinema RAWクリップをカメラマンなどのクリエイター向けに開発されている「VAIO Prototype Tablet PC」で高速処理し、最高24fpsでプレビュー再生できる。

Inter BEE 2014_CANON

「Cinema RAW Development v1.3」と「VAIO Prototype Tablet PC」を組み合わせて、4K撮影現場における効率的なワークフローが提案された

 また、同じ並びのコーナーでは、4Kモニタリングの拡張機能として、ACESの広色域に対応したモニター出力対応と次世代放送規格であるITU-R BT.2020の色域に対応するファームウェアアップデートを紹介していた。

Inter BEE 2014_CANON

ITU-R BT.2020対応を強化するこのアップデートは、4KディスプレーDP-V3010とEOS C500/C300向けに10月から提供が開始されており、DP-V3010においてはRGB色度点を完全に包含するわけではないが、カメラコントロールユニットを介して、BT.2020の色域で撮影された素材の表示や確認が可能になる

イメージングの世界を伝えるテクノロジーミュージアム

 ブース中央に位置するテクノロジーミュージアムで特に興味深かったのは、人間の目の視細胞数相当の画素数をもつ「超高解像度1.2億画素CMOSセンサー」である。並列信号処理技術によりフルHDの約60倍の動画撮影を実現する。

Inter BEE 2014_CANON

超高解像度1.2億画素CMOSセンサー

 

Inter BEE 2014_CANON

1.2億画素のセンサー画面全体のうち、約1/60の任意の領域をフルHDでリアルタイムに切り出しした映像を紹介していた

 ミュージアムに隣接する照明を落としたスペースでは、業務用30型4KディスプレーDP-V3010を展示し、EOS C100Mark IIで撮影したHDコンテンツとEOS C500で撮影した4Kコンテンツを上映していた。

Inter BEE 2014_CANON

業務用30型4KディスプレーDP-V3010。4K映像が奇麗なのはさることながら、EOS C100 Mark IIで撮影されたHDのキレの良い映像が印象に残った

 

Inter BEE 2014_CANON

ブース後方に位置する業務用デジタルビデオカメラのコーナーにはXF205を展示。来場者は最大120度の範囲で回転するグリップをつかんで感触を確かめていた

 このほか、業務用デジタルビデオカメラの反対側のカウンターでは、10月に発売された話題の自撮り向け小型ムービーカメラ「iVIS mini X」が登場。動画対角160°の超広角撮影が可能で、2軸ヒンジタイプの2.7型液晶モニターを搭載しているため、映像を確認しながら自分撮りを快適に行える。

Inter BEE 2014_CANON

小型ムービーカメラ「iVIS mini X」はHF G20などの小型カメラに搭載することで、ディレクターカメラ用のバックアップ機やPV/ライブ撮影用のサブ機としても運用できる

 今年発売のX205のコーナー周りは少々落ちついた印象であったが、CINEMA EOS SYSTEMの新ラインナップが出揃った華やかなカメラスタジオの後方で、堅実な4Kワークフローを紹介しつつ、モニター環境の機能強化も着々と進めているところをアピールするなど、4K対応の柔軟性を感じるブース構成であった。


About 小川貴之

六本企画

同カテゴリーの最新記事