4K漂流記〜番外編・Mac miniで4Kや8Kを扱ってみる


DaVinci Resolve Lite 11 on Mac mini(Late 2014)

 去る10月17日、ようやくMac miniの新型が発表されました。720日間という過去最長のアップデート間隔と、1分間という短い紹介時間から本製品に対するAppleの意気込みが感じられました。

 Mac miniについて、高負荷の映像処理を目的として導入・利用される機会はあまりないと思います。しかし、今回、ものは試しとDaVinci Resolve Lite 11をインストールしてみました。

Mac miniのセットアップ

 今回のMac miniは自宅で使うために個人的に購入しました。Mac miniは、本体と電源ケーブルだけです。キーボードやモニターなどは別に調達しておく必要があります。なんとなく廃棄せずにとっておいたソニーのトリニトロンを押入れから引きずり出してVGAで接続しました。

 

 Mac mini(Late 2014)には3種類のモデルがあります。今回筆者は半日迷って、甲乙丙でいうと乙のものを購入しました。メモリーの増設などのカスタマイズはしませんでした。

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DaVinci Resolve Liteのインストールと起動

 DaVinci Resolve LiteのダウンロードはBlackmagic Designのサイトから以外にもApp Storeからも可能です。今回はApp Storeを利用しました。ついでにBlackmagic Disk Speed TestもインストールしてHDDの速度を計測しました。

 順調にインストールは完了し、起動できました。ところが、画面の解像度不足のため、UIの右側がはみ出してしまいました。

 このモニターの最大解像度は1600×1200ですので、解像度の設定を変更すれば解決するだろうと考えました。しかし、システム環境設定で表示される選択肢は「1280×1024」と「800×600」の2つだけでした。代わりのモニターも用意できません。

 どうしたものかと困りましたが、調べてみると、キーボードの「Optionキー」を押しながら解像度変更をクリックすると、コンピュータがお奨めしない設定も表示させることができるとわかりました。早速、その通りにして表示させ、「1920×1080」を選択しました。ディスプレイは4:3なので、縦横比はディスプレイの歪み調整で対応することにしました。完全に補正は無理だったので、結局ちょっと縦長での表示となりました。

映像素材〜F65RAW

 筆者の手元で用意できる4K映像ということで、F65RAWを素材にします。コーデックやフレームレートの異なる4種類の素材を用意しました。

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8K DPXの作成

 まず、8K DPXの作成を試してみます。再生や編集をするには論外の性能であるのは明らかなので、軽い気持ちで当たって砕けてみるつもりです。ソニーのRAW Viewerを使い、F65RAWから8KのDPX生成の作業を行います。アプリケーションが「予期せず終了」したりしないか、どのくらいの時間がかかるのかを調べてみたいと思います。

 設定はDPX、16ビット、8192×4320、RGB 444 です。

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 設定してコンピュータに計算させるだけですので、放置しておいたところ、エラーで途中停止してしまいました。原因はというと、HDDの空き容量不足でした。うっかりしていました。それ以外にはエラーもなく、処理ができました。

 ただ、その後、DaVinci Resolveに読ませてみたところ、メモリー不足で再生はおろか表示もできませんでした。

 

DaVinci Resolveのプロジェクト設定

 それでは以下からはDaVinci Resolveを使っての作業を試してみます。今回24.00 fpsと59.94 fpsとの2種類の素材を用意したので、それぞれのフレームレートに合わせてプロジェクトを作成しました。また、解像度についてもLite版の上限4K UHD(3840×2160)と2K DCI(2048×1080)との2種類として、計4種類のプロジェクトを設定しました。

■入力・変換
・F65RAWの再生
 まず、F65RAWをそのままタイムラインに置いて再生してみたところ、1fpsで再生できました。このまま編集作業をするには人間離れした忍耐力が必要です。
 しかし2Kのプロジェクトでは、デコード品質を1/2に下げてやると、12fps程度で再生できました。もちろん定速再生不可能というのは完全な性能不足に違いありませんが、全く歯がたたないと思っていただけに、予想外に良好な結果です。

・Apple Prores 422 HQへの変換
 F65RAWからApple Prores 422HQへの変換をしてみます。下記の表がその結果です。デコード品質1/2での成績は感動的です。この10万円しないコンピュータで、オフライン素材の生成をさせまくるギリギリ実用的なシステムが組めるかもしれません。

 素材1と2とでは、2Kプロジェクトから4K出力や4Kプロジェクトから2K出力なども試しました。同じ2Kの出力でも、2Kのプロジェクトからと4Kのプロジェクトからとでは随分と処理時間が異なっています。これは縦横比が異なるスケーリングで手間が余分にかかるためでしょう。しかし、これほど大きく影響するとは思いませんでした。変換後のファイルサイズの差は、スケーリングの結果、黒縁がつくためです。


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 F65RAWのLiteとSQとでは、同じ収録時間でファイルサイズに約1.7倍の差がありますが、変換速度にはそれほどの差が現れていません。デコード品質を1/2に下げた場合には差がつきましたが、Fullにした際にはそれらしい差は見られませんでした。これはHDDの読み書き速度の不足が要因ではないかと思います。最も軽量な素材番号1でも31秒で4.19Gバイトですので、138Mバイト/sとなります。一方、 Disk Speed Testの結果ではHDDの読み書き速度は96Mバイト/sでした。

 Mac miniの購入時には内蔵ドライブをフラッシュストレージにカスタマイズできます。「従来のドライブの最大9倍のパフォーマンスを発揮」するそうです。あるいは最大20GbpsというThunderbolt 2で高速な外部ストレージを接続すれば読み書き速度の問題は解消できるのかもしれません。ただそうした場合、今度は演算能力の不足が問題になってくるでしょう。

 余談になりますが、この表にある処理時間を測定するにあたって、当初はストップウォッチで計っていました。しかしながら、他の作業をしている間に見逃してしまったりして、うまくいきませんでした。そこで、ファイルの作成時刻と変更時刻の差から算出することにしました。しかし、Mac OSXのFinderでは、時分までしかわかりません。ファイルの情報については、「ターミナル」を使って以下のようなコマンドを打ち込んでやると秒単位まで表示することができます。
更新日時を表示する:ls -lT ファイル名
アクセス日時を表示する:ls -luT ファイル名
作成日時を表示する:ls -lUT ファイル名
ファイルの属性をまとめて表示する(項目名付き):stat -s ファイル名

■再生・編集
 作成したProresをDaVinci Resolveのタイムラインに置いて再生しました。また、QuickTime Playerでも再生してみました。

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 Mac miniでDaVinci Resolveを編集作業に使用する場合は、解像度は2K、フレームレートは24または29.97というのが実用的なところのようです。

・EPIC DRAGON R3D
 知人のご厚意でRED EPIC DRAGONで撮影されたデータを借りることができたので、こちらも試してみました。

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 2K DCIのプロジェクトでは、デコード品質1/8にすると最大で6fpsとなりましたが、4K UHDのプロジェクトでデコード品質をFullにしてしまうと再生は0fps、まさにコマ送り状態でした。

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■出力
・H.264
 タイムラインにApple Prores HQ422を置き、 H.264で出力します。ビットレートは80 Mbpsに設定しました。出力したファイルはいずれもQuickTime Playerでスムーズに再生できました。

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・DCI 2K(JPEG2000)
 Lite版ではDCI 4Kは選択できないので、2Kのみ試しました。

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まとめ

 Mac miniにインストールしたDaVinci Resolve Lite 11は今までのところでは安定しています。8K DPXのような無茶をさせた時にはメモリー不足の警告が出ましたが、フリーズしたりシステム全体が不安定になったりすることはありませんでした。

 4Kには力不足ですが2KやHDは難なく扱えました。動作音も非常に静かです。HDMIでテレビに接続すれば、安価にオフライン編集環境を実現できるでしょう。

 編集ではなく、ファイルを扱うということであれば、Thunderbolt2ポートが2つ搭載されていることから、収録素材のコピー・バックアップ用途として大いに活躍できると思います。


馬場一幸

About 馬場一幸

1981年生まれ。大阪府池田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻を修了後、博士課程に進学。2010年退学。現在、同研究科助教。玉川大学非常勤講師。

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