4K漂流記〜東京藝大における事例・第2回


サーバー容量とネットワーク速度について

 前回の後半で述べた通り、今回の整備ではサーバーの容量とネットワークの速度を重視しました。ちょうど先日、ベンチマークを走らせた機会がありましたので、その際のスクリーンショットです(図1〜2)。

 ストレージは3TバイトのHDDを12台搭載したラックが4台あり、それぞれのラックでRAID 5を構成しています。ラック3つを共有領域、1つをiSCSIに当てています(写真1)。

 F65RAWの圧縮設定にはSQとLiteがあります。両者を比較すると、カタログ記載※1のビットレートではSQが2.5Gbps、Liteは1.5Gbpsで、約1.7倍の差がありますが、通常は視覚上の差はありませんので、ほとんどの場合でLiteを利用するのが合理的です(表1)。

  NFS共有領域に保存されたF65RAWは、InfiniBandのネットワークを通して、ワークステーションのDaVinci Resolveで再生できます。ローカルのストレージにコピーしたり、他のコーデックに変換しなくてもよいので、そのための待ち時間が必要なくなります。ただ、サーバーとワークステーションとを接続するInfiniBand FDR 4Xは規格としては56Gbpsですが、サーバーの応答を待つため、実際にはこの帯域を使い切ることはできていません。そのため、DaVinci Resolveの設定を解像度4K DCI(4096×2160)、デコード品質をFull Res-Resolveとした場合、SQの素材では再生速度は不安定です。Liteを用いたり、解像度やデコード品質を下げる等すれば24fpsでの再生が可能です(写真2〜4)。

 なお、編集室に持ち込んだ撮影素材をSRMemoryからサーバーの共有領域にコピーする作業は、わざわざワークステーションを使わなくてもノートPCなどのウェブブラウザーから簡単に操作できます(写真5)。素材データがネットワークを通った後の再生は、ワークステーション側の処理能力に依存します。DaVinci Resolveの計算能力はGPUで強化できるので、ワークステーションには複数のGPUを搭載しました(写真6)。

 設備導入の検討をしている段階では、理屈では大丈夫でも実際に運用してみると大事になりはしないか、実は少々心配していました。しばらく試してみた限りでは特に詰まるところもなく、想像していたよりも手軽に扱うことができているというのが、現在のところの感想です。小型のカメラで撮影してSDカードで運用することとの違いは、本当にサイズの大小だけくらいに感じます。

 ワークステーションと運用については、また改めて後の回で触れたいと思います。DaVinci Resolveは6月には次のバージョン11が公開される予定ということですから、もし間に合えば新バージョンでご紹介できればと思います。

撮影機材(F65RS)

 ところで、撮影機材(F65RS)のほうはというと、別段工夫もなく品物そのままです。そこで、代わりというとなんですが、納品時の様子をご紹介しておきます。平成25年9月26日に横浜の馬車道校舎に届きました(写真7〜8)。

 物品が納品された際には、「ちゃんと◯◯が納品されました」という証拠写真を撮影することになっています。これは残念ながら研究費の不正が後を絶たないためです。以下は「証拠写真」の一部です。品物が判別できればよいので、特に飾って撮らなければならないということはありません。ただ、この時は折角だからと、それらしく並べてみることにしました。本当はもっとしっかり撮影してあげたいところですが、点数が多いため、1つに時間をかけていられません(写真9〜11)。

 ビューファインダーは丁度出た新型で、それに対応するため、後日、F65RS本体の基盤交換をしました(写真12)。

※1 SRMASTER総合カタログ 2012年11月(84950208) ソニー株式会社、ソニービジネスソリューション株式会社

第3回につづく


馬場一幸

About 馬場一幸

1981年生まれ。大阪府池田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻を修了後、博士課程に進学。2010年退学。現在、同研究科助教。玉川大学非常勤講師。

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