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第1回 「S原さん、人身御供どうですか?」
Avid MC(MediaComposer)系ノンリニア...。それは、かつて全世界の映像編集界にノンリニアの洗礼を浴びせた鮮烈な編集ソフトウェアであった。しかし現在、爆発的なノンリニアの普及によって、その栄光ある編集ソフトウェアも、一昔前自らが放逐したVHSオフライン編集機並みの、ありふれた存在になってしまった...。
本ブログは、こうした状況のなか、リストラの危機を目前にしたMC系ノンリニア(しか使えない)中年オジエディターが、一念発起、四苦八苦・七転八倒しながらも、一発逆転を夢見ながらAvid DS使い(DSマスター?)への棘(いばら)の道を彷徨い続ける物語である...
(編集部:A部)
某月某日 ごあいさつ
こんにちは、みなさん。私はAvidのノンリニアを使って生業っている、MCエディターのS原です。中年です。上の編集部が書いた紹介文にあるとおり、これから、私が"Avid DS"を使えるようになるまで、「苦悩と歓喜(!)の日々」を赤裸々に綴っていくことになってしまいました。...でもDSは手強いので、連載は「苦悩と格闘」になるのか、「苦悩と葛藤」になるのか、「苦悩と挫折」になるのか...行く先には暗雲が立ち込めています。みなさん、よろしくお願いします。
某月某日 Avid DSとは?
ところで、Avid DSとは、合成(コンポジット)系ノンリニア編集ソフトウェアです。Avid DSの機能や特長は、AvidのWebサイトに詳しいのですが、そこに書いてある事を簡単にまとめると、
- 解像度フリーである(SD、HD、2k、4kに楽々対応か?)
- 非圧縮10ビット/8ビット、HD RGB4:4:4対応(とにかく高画質らしい)
- CMや映画、番組タイトルなどの合成(コンポジット)が得意(縦軸系ノンリニア)
ということになります。
Avid DS。合成が得意な縦軸系ノンリニア。本ブログ執筆中にVer.10が発売されてしまった...しかも8Tバイトのストレージモデルで¥1000万を切るシステム価格が設定されている
某月某日 Avid DSとの出会い
私が初めてAvid DSを見たのは、前世紀のとある展示会のブースでした。Avid DSは、もともとSoftImageという、3D CG世界では有名なメーカーが開発したノンリニア編集ソフトウェアで、当時は"SoftImage | DS"と呼ばれていました(つまり、Avid MC系ノンリニアのライバルソフトだったわけです)。
展示会場では、ひとり異彩を放っていたDSのデモンストレーターによるカミソリのようなDSのデモがとても印象的で、私の心には、それ以来「DSとはテクニックが求められるマニアック(=クール)な合成用ノンリニア」として、心に強く刻み込まれたのでした。その後、SoftImageはMicrosoftに買収され、そしてさらにAvidによってMicrosoftから買収されたりと、会社の持ち主は転々とするもののDSそのものは着々と成長し、現在に至っています。
現在DS関連情報を検索すると、"Avid DSエディター募集"のように、指名募集している項目も目につきます。DS操作経験者は貴重な存在なんですね。
ちなみにAvid MC系ノンリニアで求人情報を探すと、検索結果の中に"Avidの使えるエディター"募集もありますが、同時に"Avidの使えるディレクター"募集も結構見つかります。「Avid MC系はもはやエディターの聖域ではない」という現実をひしひしと感じます。
そう言えば、最近、契約ディレクター募集で「Avid(かFCP)使える?」と聞かれることが多いんだとか。いやはや、Avid MCが使えるエディターっていうだけじゃ、もう、箸にも棒にも引っかからないような時代になってしまってるのかもしれません。
AvidのWebサイトのにある、プレスリリース"Avid DS Nitrisシステムでフィニッシングされる話題のプロジェクト"というリンクをクリックすると、Avid DSで完パケした作品が紹介されています。日本の話題も紹介してほしいですよね。でも、Avid DSの世界は間違いなくエディターの独壇場のようです。
某月某日 本ブログのきっかけ
そんな状況のなか、この連載は、編集部のA部 氏のこんな一言から始まりました。
「S原さん、人身御供どうですか?」
「えっ...」
話は少しさかのぼります。
この春、私の周辺は2つの出来事によって、ざわざわと慌ただしくなりました。
1つは、Avidから流れた衝撃的なニュース。これまで何十万円もしていたAvid MediaComposerが、なんと¥29万8000に大幅値下げ、同XpressProからはなんと¥6万でアップグレードできるという、クラクラするような内容のニュースでした。
そしてもう1つは、私のいる会社の方針切り替えです。
私のいる会社(地方のテレビ系制作会社です)は、今年度から、昨今の時流に乗って、ディレクターが自分のデスクで番組やらなにやらを「ほぼ完パケ」状態まで仕上げられるよう、制作オフィスのディレクター席に置かれた全パソコンをAvidノンリニア編集ソフトがインストールされたiMacに置き換えてしまったのです。
いやはや、大変な時代になってしまいました。
Avid MC系しか使えない自分にとって、この時代はすごくやばいんです。
私は、AvidのMC系ノンリニア編集ソフトウェアを単に「パソコンが趣味」という理由だけでサワリ始めたクチです。おまけに、テレビとはまったく縁もゆかりもない業界からテレビ業界に飛び込んで以来、ずっとAvid MC一本でやってきましたから、カメラは振れない、音は録れない、演出はできない...と、私はまったくツブシが効かない状態です。だからディレクターが1人でHDの完パケ編集なんて始めたら、私は会社にいる場所がなくなってしまう...。
ものすごくやばい...
そんな私の危機感を敏感に感じとった編集部のA部 氏から、
「S原さんのようにAvid MC系ノンリニアしか触れなくてリストラに合い、お弁当屋さんへ転職するも年下の店長と折り合いが会わずに店を飛び出し、その後は職を転々とする...っていう不幸な中年エディターさんて、案外多いんじゃないかなって思うんですよ。
なので、そんな人たちを応援するっていうか、将来がない中年エディターの人たち向けに、お弁当屋さん以外の再雇用の道を、こう"ぱぁーっ"と開かせることが必要だと思うんですよね。
で、S原さんが、日頃の恩返しに、AvidのMC系ノンリニアからもう一つのAvidの合成系ノンリニアのAvid DSへ、メインの編集ソフトウェアをスイッチして、もの覚えが悪くなった中年オジがもがき苦しむ様をみんなに見せてあげるのは、社会的にとても意義があるんじゃないかな~」
「S原さん人身御供よくないですか?」
「えっ...」
そんなやり取りがきっかけで連載が始まったわけです。だから、この連載のテーマは、「Avid MC系エディターが手っ取り早く、最短でAvid DSを操作できるようになること」になります。
でも、連載を始めるにあたって、実は重大な問題が1つあります。
DSって、どんなソフトでしょう...。実のところ、私は機能や使い方をほとんど知りません。
「DSは多重人格だから」
と、私の若い友人H田君は教えてくれました。
「中年のような、直感的に理解できないっていうか、あれこれ理屈つけないと納得できないヒトだと、DSは苦しいかも」
とも、言い放ちました。
「モノ忘れが進行していると、致命的っぽい」
と、断言しました。
私は不安です...。
某月某日 ぼやき
このブログは、筆者がDSのことをなにも知らないまま始まります。本当にどうなるんでしょう...。
某月某日 DSへのとっかかり
先行して手渡されたDSの日本語マニュアルです。厚さにめげました
「じゃ、諸々手続き進めますんで、ソフトがそちらに到着するまで、コレ読んで勉強してくださいね」
A部氏から分厚いDSの三部作マニュアルが手渡されました。現行バージョンからちょっと古いのですが、日本語マニュアルです。
それにしてもぶ厚いですね。これを読まなきゃならないのか...と思うと憂鬱になり、数ページ読んで...いまのところ脱落しています。
マニュアルのことはともかく、AvidのWebサイトに書かかれているAvid DSの紹介文章の中に、こんな記述がありました。
これは一体どういうことでしょう?
結論から先に書くと、どうもDSはMC系で編集したシーケンスを、「そのまま」取り込める機能があるみたいですね。これは、まさにMC系ノンリニアから"手っ取り早く"DSに乗り換えようとしている、私向けの大変便利なツールに見えます。でも互換性・読み込んだシーケンスの再現性は、どのくらい実現しているのでしょうか。
某月某日 Avid DSv7.6 Training Edition
実はDSには、"Avid DS Training Edition"というものがあります。これは名前のとおり、練習用DSです。いろいろな制限があるものの、本物のDSと同じように動作します。Training EditionはAvid DSのダウンロードサイトから、自由にダウンロードできるようになっています。執筆時現在は、DSのバージョンがv10に上がったばかりなので、準備中になっていますが、おそらく掲載時には再開しているでしょう。今回は以前ダウンロードしていたAvid DSv7.6 Training Editionを使用したいと思います。備えあれば憂いなしです。
Avid DSv7.6 Training Editionのデスクトップ
Avid DSv7.6 Training Editionは、この原稿を書いているMacBook Pro(Windows XP+BootCamp)にインストールしてみました。MC系と比べて、アナーキーというか、神経質というか、迂闊に触るとすぐにキレそうなデスクトップです。なにがなんだか全然わかりませんが、私はこのデスクトップが好きです。
Avid DS Training Editionのダウンロードページに記載されている制限事項を意訳すると、
- ライセンス不要(起動にドングルやライセンス必要なし)
- テープやファイルへの出力なし(アウトプットツールは消去)
- OMF、EDL、AAFエクスポート機能なし
- インデクシング機能なし(すいません...どういう機能か判りません)
- トレーニングステーション間でのみアーカイブメディアの共有可能
- アーカイブ機能に制限(メディアデータは含まれない、プロジェクトデータのみ)
- リモートプロセシング(こちらも、どういう機能かわかりません)機能不可
- トレーニングステーションでは、キャプチャーや作成したメディアに製品版DSと別のフォーマットを使用
- トレーニングステーションが作成したシーケンス、クリップ、設定は製品版DSと異なるフォーマットを使用
と書かれているようです。練習用ソフトウェアとしては標準的な制限といえるでしょう。
そこで、本物のDSの貸し出し申請を待っている間、Avid DS Training Editionでコンフォームの真偽を確かめて見ることにしましょう。もしWebサイトの紹介文章が本当なら、私にとって本当に便利なツールとなる可能性が高いです。
S原 氏の抱える危機感に付け込んで、着地点もわからぬまま見切り発車した本ブログ。隔週掲載の予定でしたが、今回はプロローグに終始してしまったので、来週も急遽掲載します。
コンフォームという機能を利用すれば"手っ取り早く"DSに乗り換えられるのでは...とS原 氏は考えたようですが、果たして、そんなに都合の良いものが本当にあるのでしょうか?
(編集部:A部)
▼バックナンバー
- 第1回 S原さん、人身御供どうですか?
- 第2回 コンフォーミングは希望の光?
- 第3回 快刀乱麻! プラチナDSマエストロ登場!!
- 第4回 次の一手はキーボードカスタマイズ!
- 第5回 いまさらですが...インターフェースの紹介
- 第6回 ピクチャーインピクチャーを攻略
- 第7回 3Dマットキーエフェクトの変換
- 第8回 エフェクトとコンテナの基本
- 第9回 エフェクトツリーに挑戦
- 第10回 ピクチャー イン ピクチャーのまとめ
- 第11回 DSのカラコレ=Symphonyのカラコレ?
- 第12回 DSカラコレの使い心地は?
- 第13回 アニメーションエディタでキーフレームの微調整
- 第14回 編集環境のカスタマイズ
- 第15回 キーイング合成で実践デビュー?!
- 第16回 DSのキーイング・その1~Blue-Green Keyer
- 第17回 DSのキーイング・その2~マルチキーイング合成
- 第18回 マスク合成
- 第19回 実機を試用~編集セッティングの持ち出し
- 第20回 実機を試用~SymphonyでのシーケンスをDSに持ち込む
- 第21回 実機を試用~SymphonyのシーケンスをDSに持ち込む・その2/ VTRプリント
- 第22回 卒業試験!! 問題1:ピクチャー・イン・ピクチャーの中絵に対してカラーコレクションを行う
- 第23回 卒業試験!! 問題2:DS内でテロップを作成、シーケンスに編集する






