NHK放送技術研究所は去る5月22〜25日、「技研公開2008」を開催した。本イベントは、次世代の新しい放送技術に焦点をあて、最新の研究成果をわかりやすく展示することを目的としており、今年で62回目を数える。今年のテーマは「技術のチカラがテレビを変える」。
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| 5月22〜25日、世田谷区にあるNHK放送技術研究所で技研公開2008が開催された |
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| 昨年にも増して来場者の数は多く、取材も困難なほど混雑していた |
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昨年同様、NHK放送技術研究所の1Fと地下1Fの2フロアーという広いスペースで行われたのだが、今年は昨年にも増して来場者の数が多く、特にスーパーハイビジョン関連の展示では展示ブースに黒山の人だかりができ、取材が困難なほどであった。また、今年は撮影および伝送だけでなく、デジタル放送で実現する視聴者サービスの展示も多く、2011年のデジタル放送への完全移行に向けて、実際に行われるサービスが具体化してきていると感じる。
本イベントでは43の展示ブースが設けられていたが、ここでは、主にスーパーハイビジョン関連、および撮影システムに関してピックアップしていく。
スーパーハイビジョンカメラの研究成果
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| 展示された3300万画素3板式カラーカメラ。なお、撮像素子の開発に合わせて、超高解像度レンズも開発された |
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| デモでは、4k×2kのモニターに7680×4320の映像をリサイズおよび切り取って表示。解像感をアピールしていた |
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NHK放送技術研究所ではスーパーハイビジョン(7680×4320)の開発が行われているが、今回、スーパーハイビジョンでの撮影が可能な3300万画素3板式カラーカメラが展示された。昨年も、3300万画素を撮影可能なCMOSの開発として、ほぼ同様の展示がされていたのだが、当時のCMOSではカラー映像が得られず、画面はモノクロであった。カラー化された3300万画素の映像は素晴らしく、迫力はモノクロ映像とは比較にならない。
展示では、4k×2kの液晶ディスプレーに、7680×4320の映像をリサイズして全画面表示させたものと、1カ所を4k×2kにトリミングして表示させた2種類の映像を披露していた。
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| 新しい単板方式の撮像素子を搭載したカラーカメラ。現在は約1500画素の解像度をもつ |
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| 単板方式の技術展示。この単板方式は3枚の撮像ディバイスを重ねることで、単板にできるというもの |
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しかしスーパーハイビジョンカメラは構造上、どうしても巨大化してしまう。その問題点の打開策として、新しい単板方式を採用した撮像素子の技術展示がされていた。
技術展示されていた単板方式とは、BGRの順番で撮像ディバイスを重ね、プリズムなしで3枚の撮像ディバイスを使うというもの。それぞれの撮像ディバスの間には透明な回路が設けられ、前のディバイスが反応した色だけを読み出し、そのほかの色は後ろのディバイスにスルーする。この方式ならば、実質撮像素子は1枚でいいことになるので、カメラの小型化に貢献できるということだ。現段階では約1500画素ほどしかもっていないそうだが、将来的にはスーパーハイビジョンカメラに組み込み、カメラの小型化を図りたいとしている。
高度スタジオ番組制作技術
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| 「高度スタジオ制作技術」の展示では簡易的なスタジオをつくりデモを行った。左上のモニターを見ると、奇麗にクロマキー合成されているのがわかる |
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| 協調撮影ロボット。ほかのカメラの状況に合わせて、自動的に撮影アングルを決定し、動作する |
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「高度スタジオ制作技術」の展示として、簡易的なスタジオをつくり、協調撮影ロボットと高度リアルタイム映像合成の解説をしていた。
協調撮影ロボットとは、スタジオ内の出演者の状況、セットの状況、ほかのカメラの撮影内容から、自動的にアングルを決定し、撮影場所の移動およびカメラの操作を行うロボットカメラである。
もう1つの高度リアルタイム映像合成とは、背景にIR(赤外線)マットを利用するクロマキー合成システムである。IRマットは、赤外線をそのまま反射させる特性をもっており、赤外線光を発射するリングライトが取り付けられたカメラで撮影すると、IRマットの部分だけが反射し、前面の被写体は拡散するので、シルエットが抜き出せ、クロマキー合成に利用することが可能になる。色ではなく、反射した赤外線でクロマキーを行うので、青や緑など、被写体の色の制限がなくなるほか、暗い照明下においても、簡単にクロマキー合成を行える。
展示では、カメラマン1人による3カメのクロマキー撮影を実施。実際にカメラマンが操作するカメラは1台だけなのだが、そのカメラのアングルに合わせて2台の協調撮影ロボットが、それぞれズームアップしたりワイドアングルになったりと、自然な3カメ撮影を披露。クロマキー合成も、若干抜き過ぎな部分があったものの、実使用上問題ないと感じられた。
ミリ波モバイルカメラ
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| ミリ波モバイルカメラの展示。なお、カメラも中に専用のエンコーダーを搭載した特別モデル |
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| 後ろに取り付けられた送信機。天井に設置された受信機へ150Mbps以上の高レートで映像を伝送する |
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ミリ波モバイルカメラは、カメラ後部に映像送信機を取り付け、スタジオの天井に取り付けられた4台の受信アンテナで受信し、復調して収録するというもの。カメラから出るケーブルをいっさい排除できるので、ケーブルによる制約がなくなり、映像表現の幅を広げられるとしている。
使用されているカメラは、一見すると普通のカメラなのだが、内部に専用のMPEG2エンコーダーが組み込まれており、MPEG2で圧縮された映像を専用ケーブルで送信機に送り、送信機から受信機に伝送する。ビットレートは150Mbps以上という高画質を実現している。また、実際に受信するのは4台の受信機だが、天井に設置されている受信機は5台以上であり、その中から受信状態の良いものを自動的に4台選別して受信するので、映像の途切れなどの心配もまったくないそうだ。実際、スタジオを動き回るデモを見せていただいたが、映像の途切れは見られなかった。
なお、伝送できるのは映像のみであり、音声およびTCの伝送は、いまのところはできないようである。現在の実使用例はないそうだが、今後はバッテリー面など、実際の運用に向けて開発を進めていくとしている。
音声分野での新ディバイス
新ディバイスを使用した音声機器として、超高帯域マイクロホンとエラストマー素材の薄型スピーカーが展示された。
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| 100kHzまでカバーする超高域マイクロホン。単一指向性をもつモデルとしては世界初 |
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| デモでは、周波数の高い音までカバーできていることを波形表示でアピールした |
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超高帯域マイクロホンは、約100kHzまでの周波数をカバーする単一指向性マイクロホンである。単一指向性マイクとして100kHzまでカバーするのは、本機材が世界初となる。
現在の放送で使用される周波数は20kHzなため、放送だけを目的とするならば必要ないのだが、アーカイブ、もしくは2次利用(SACDおよび次世代DVDへの利用)を考え、なるべく高音質で素材を残したいという需要が集まり、今回の製作に至ったようである。2005年から開発が始まった本機材であるが、今後は現場でのテストを重ね、実用モデルの開発を進めていくとしている。
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| エラストマー素材を使用したスピーカーのデモ展示。なお、青いのは導電塗料が塗られているため |
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| エラストマーはゴムとプラスチックの中間の性質をもつ素材で、加工がしやすく、また安価というメリットをもつ |
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ゴムとプラスチックの中間の性質をもつ素材にエラストマーというものがあるのだが、今回、このエラストマーを用いた薄型のスピーカーが展示された。
このエラストマーの両端に電極を設け、電気が流れるとエラストマーが伸縮および振動し、音を再生する。メリットとしては加工が非常に簡単なだけでなく、靴底の素材にも使われるような汎用のものであるため、安価に調達が可能なことだ。現在では大きな音が再生できないなど、改良の余地はまだまだあるが、今後はさらなる小型/薄型化を行い、将来的にはスーパーハイビジョン用22.2chの家庭用への応用することを目指している。
超高速度カメラなど、番組技術展の展示内容もお披露目
今年2月10〜13日に開催されたNHK番組技術展で展示されていた機材が、技研公開2008でも展示されていた。展示されていたのは、超高速度カメラ、多視点映像生成システム(ぐるっとビジョン)、細型多関節マニュピレーター、肩載せ型カメラ防振装置。
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| 超高速度カメラの展示は、番組技術展と同じで、水風船が割れる瞬間のデモを行った |
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| おなじみとなった「ぐるっとビジョン」。すでに多くの実績をもつ |
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| 細型多関節マニュピレーター。先端に175 lxのLEDリングライトをもち、暗所でも問題なく使用可能 |
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| ENGカメラマンの注目を集めた肩載せ型カメラ防振装置。現在は約3kgで、さらなる軽量化を目指す |
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超高速度カメラの展示では、NHK番組技術展で行われたものと同じように、水風船が割れるようすをデモ。ただ、こちらではカメラ内部に2つの撮像素子を積み、従来と比べて記録時間が2倍になっているなど、具体的な内部設計のお話も伺うことができた。
すでにおなじみとなった「ぐるっとビジョン」。12台のHDVカメラを使った本システムは知名度も高く、実績も多い。これまではロボコンや体操競技で使われてきたが、今後はサッカーなど、さまざまなスポーツ分野で使っていくほか、データ放送での応用も考えているようである。
細型多関節マニュピレーターは、狭い空間をくぐり抜けて撮影するシステム。展示では、地中にいる生物の撮影を例としてデモを行っていた。このような撮影のとき、一番のポイントは感度である。デモを行っていた場所は環境光もあり、暗所撮影の実際は見ることができなかったが、前面に取り付けられた125 lxのLEDリングライトもあるため、問題なく使用できるとしている。
肩載せ型カメラ防振装置は人気で、特にENGカメラマンの注目を集めていた。現状では約3kgという重さがネックになっているようだが、将来的には2kg以内まで軽量化することを目標にしているようである。