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NHK放送センターにて番組技術展開催

今年も、NHK放送センターにて「番組技術展」が開催された。同展示会は、撮影現場から出たアイディアをもとに開発された新たなシステムや機材を一堂に会し、日々の取り組みの成果をNHK職員に紹介することを目的として毎年開催され、今年で37回目を数える。一昨年からは一般公開も行われ、NHK職員、機材メーカー、マスコミ関係者だけでなく、一般客でもNHKの技術に触れ、また解説員を務めるNHK職員と直接コミュニケーションをとれる場となっている。

では、さっそく展示物を見ていきたい。ここでは、主立った製品/展示物を中心にピックアップしていく。

■パンタグラフレールカメラ

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パンタグラフレールカメラの展示。レール上をかなり速いスピードで移動していた
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垂直方向の動きをするためにパンダグラフ機構を採用。一見するとマジックハンドだ

パンタグラフレールカメラは、水平方向の動きに加え、垂直方向の動きも可能にするレールカメラシステムである。一番の特徴は、台車部にパンタグラフ機構を設けたことだ。

これまでも、水平方向に動くレールシステムは存在していたのだが、垂直方向にスムーズかつ素早い動作をさせることが難しかった。このパンタグラフ機構であれば、素早く、かつ安定した高さ変更が可能になる。どのような構造になっているかは、おもちゃのマジックハンドを思い浮かべてもらえれば、わかりやすいかもしれない。

この機構の問題点は、素早い垂直方向の動きを行った際、カメラが激しく揺れてしまうことである。同機材ではこの問題点を、カメラ雲台部に防振装置を設けることでカバー。素早い垂直移動をデモで披露していただいたが、画に多少の揺れは認められたものの、実使用上は問題ないと感じた。

同機材は、今年開催される北京オリンピックでの使用を目標に開発され、昨年の全日本体操選手権の跳馬撮影で、試験的に使用されている。今後は、4月に開催されるジャパンスイム2008で使用する予定だ。

■光学像回転アダプター

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光学像回転アダプターの展示。モニターを見ると画が斜めになっているのがわかる
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光学像回転アダプターはレンズとカメラの間に装着

光学像回転アダプターは、光学的に像を回転させることが可能な回転プリズムを内部にもたせたハイビジョン用レンズアダプターである。

これまで、画を回転させるような映像が欲しいとなったときに、(1)カメラ本体を回す、(2)収録後、ポスプロ作業で画を回転させる、の2つの手法がとられていた。しかし(1)ではケーブルの制約を受ける、軸がずれるという問題点があり、また(2)では16:9のアスペクト比が得られないという問題があった。

本機材では、回転するのがアダプター内のプリズムだけなので、ケーブルの制約は受けず、何回転でもさせることができる。またスピードや回転する方向も、プリズムをコントロールするだけなので自由自在だ。16:9のアスペクト比も保持できるので、上記の問題はすべて解決したことになる。

ただ構造上、画は確実に暗くなる。解説員に尋ねると、1絞り以上暗くなってしまうとのことだ。また、現在はプリズムの軸が若干ずれているとの情報もいただいた。たしかに、そのような映像表現が必要かは別として、4、5回転連続して見ていると、若干の違和感がある。ただ、現在はまだ開発を進めている段階であり、この問題はいずれ解消されると予想できる。周辺落ちもしているそうだが、正直、確認することはできなかった。

使用実績としては、昨年の紅白歌合戦で使用。また、今後も各テレビ番組で試験的に使用していくとしている。

■小規模スタジオ用新型LEDスポットライト

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小規模スタジオ用新型LEDスポットライトの展示
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1m時1400 lx以上、3m時600 lx以上の中心照度をもつ

現在、スタジオ照明にはHMIやタングステンライトを初めとした光源が使用されている。しかしこれらは、消費電力や発生する熱、二酸化炭素の発生量などが問題となっていた。これを受けNHKは、東芝ライテック共同で、LEDを光源とした小規模スタジオ用新型LEDスポットライトを開発した。

光源にLEDを使用することで、以下のメリットが生まれる。

  • 電源の確保が容易(家庭用AC100Vからでも点灯可能)
  • 熱をあまり出さないため、スタジオ内の温度が上がらない
  • 長寿命なので電球の交換がいらない
  • 二酸化炭素の発生量が少ない
  • 小電力なので、電気料金が節約できる

このメリットからもわかるように、NHKでは「エコ」を一つのテーマとしてこの機材の開発を進めてきた。現在では、テレビ番組「スタジオパークからこんにちは」で試験的に使用されており、光量や色味はまったく問題ないとしている。今後は、NHKスタジオパーク内のスタジオで、HMIに代わる照明器具として導入を目指していくとのことだ。

■アンブレラマイク

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アンブレラマイクの展示。材料には市販のこうもり傘を使用

こちらは、市販のこうもり傘を利用したアンブレラマイクである。構造は非常に簡単で、市販のこうもり傘の先にマイクを取り付け、サラウンド収録をするというものだ。マイクアレーには、NHKの下山 幸一 氏が開発した「Shimoyama-Array」が採用されている。

同機材は、材料にこうもり傘、また先に取り付けるマイクも、安価で手に入る小型マイクを使用していることから、製作費が格安に抑えられることも特徴の1つとなっているが、なによりも従来のサラウンドアレーに比べて圧倒的なサラウンド感を得られることが最大の特徴だとしている。

展示ブースには簡易的なサラウンド空間が用意され、アンブレラマイクで録られたサラウンド音声、従来のサラウンドマイクアレーで録られたサラウンド音声を比較するデモを披露していたのだが、アンブレラマイクで録られたサラウンドのほうが、圧倒的にサラウンド感が強い。特に、サラウンド空間の中央からはずれたときにその違いは顕著に現れた。

この「空間の中央からはずれたときのサラウンド感」が一つのコンセプトになっているようで、「サラウンドは中央にいる人だけで楽しむものではなく、みんなで楽しむもの。それを、一般家庭にも普及させていきたい」と、中心となって開発を進めた下山 氏は語る。このマイクはすでに撮影現場でも活躍しており、今後もサラウンド収音の際には積極的に使用していくようだ。

■特別展示

・月周回衛星「かぐや」搭載ハイビジョンカメラ

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「かぐや」からの映像を映し出す巨大スクリーン
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実際に「かぐや」に搭載されているカメラと同じモデルのものを展示

特別展示として、月周回衛星「かぐや」に搭載されているハイビジョンカメラとまったく同じモデルのカメラが展示された。また、正面に取り付けられた巨大スクリーンに、実際にカメラから映像を投影していた。

このカメラの製作に携わった山崎 順一 氏にお話を伺ったところ、「映像の美しさなどよりもまず、無事に画が出てホッとした」という。現在でも週に1度、カメラから送られてくる映像を確認しているそうで、これは1年間続けていくそうだ。

また、スクリーンに投影された映像は、特に諸外国の来場者の注目を集めており、「この映像がCGでないなんて信じられない!」と感動の声を聞くことができた。

なお、この【月周回衛星「かぐや」搭載ハイビジョンカメラ】については、本誌2008年1月号にて詳細が解説されているので、そちらを参照いただきたい。

・「アインシュタインの眼」特殊撮影の世界

人の目では見ることができないものを、特殊機材を用いることで見えるようにし、新たな映像の世界を提供しているテレビ番組、「アインシュタインの眼」の展示として、番組で使用されたセットをブース内につくり、デモ展示を行っていた。

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「モーションマルチモーフィングシステム」。20台のHDVカメラを円形に展示

中華料理の達人がつくる「黄金チャーハン」が、いかにしてつくられるのかを撮影した「モーションマルチモーフィングシステム」の展示では、実際に撮影と同じ20台のHDVカメラを円形状に並べ、中心の椅子に座った来場者を撮影。全方向の同時撮影がこのシステムで可能だという解説をしていた。

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水風船の割れる瞬間をとらえるハイスピードカメラのデモ展示

水風船が割れる瞬間をとらえた「ハイスピードカメラ」の展示では、番組で放送された内容、セットとまったく同じものをブース内でデモ。見学していた来場者は「こんな映像は初めて見た」と声を漏らしていた。

これは毎年の番組技術展にいえることだが、出展される機材は撮影現場の斬新なアイディアが詰まったものがほとんどで、取材をしていても正直、楽しい。また、昨年までは、「前年から、どれだけ開発が進んだか」という展示が多く、真新しい展示は少ないという印象だったのだが、今年の同展示会は初めて見る機材が大半のブースを占めていた。来年はいったいどんな「斬新なアイディア」を見ることができるのか。いまから楽しみである。

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